VOL.106

都心に近い中規模の病院で
地域に高度な医療を提供
自分の成長も実感する毎日

新松戸中央総合病院
外科 竹内 瑞葵氏(30歳)

埼玉県出身

2013年
埼玉医科大学医学部 卒業
板橋中央総合病院 入職(初期臨床研修)
2015年
太田記念病院 外科 入職
2016年
新松戸中央総合病院 外科 入職

初期臨床研修を終えた竹内瑞葵氏は、最初の目標を専門医取得におき、400床規模の病院に入職。しかしそこは自分の志向とうまくマッチせず、新松戸中央総合病院に転職した。その後、多くの症例を担当して経験を積み、専門医も取得した竹内氏は、「今後は後輩を育てられる実力を磨きたい」と語る。医師になって10年足らずで大きく成長した竹内氏の軌跡を追った。

リクルートドクターズキャリア2月号掲載

BEFORE 転職前

病院実習で患者の死に接し
自らの手で命を救いたいと
外科医になる覚悟を決めた

出身大学のしがらみがない
病院で初期研修を受ける

新松戸中央総合病院(千葉県)に数年前に転職し、外科医としての成長を実感しているという竹内瑞葵氏は、医学部5年生の病院実習が自らの起点と振り返る。

「両親の勧めをきっかけに医師を目指しましたが、入学後しばらくは本当にこの進路でよかったのか迷っていました。勉強が手につかず、ギリギリで単位を取った科目もあったほど。しかし、病院実習で若い患者さんが亡くなる様子など厳しい現実に直面し、こうした人を自らの手で救う外科医になりたいと覚悟が決まりました。あとはテレビドラマの主人公だった外科医が格好よかったから、といった理由もありますね(笑)」

卒業後の初期臨床研修は、事前の見学で出身大学のしがらみもなく医師が活躍し、研修医への指導も丁寧に行っていると感じた都内の総合病院を選択した。

「内科系と外科系の診療科をバランスよく回ったのですが、最初は採血で患者さんの前に行くだけでも緊張していました。しかし指導担当の医師が、中心静脈カテーテルの入れ方や動脈採血のコツなども詳しく教えてくれ、現場で戸惑うことも次第に減りました」

一時は小児外科も考え、小児科でも研修を受けた竹内氏だが、対象となる年齢が幅広い外科志望に落ち着いたという。

初期研修の病院とは
異なるタイプの病院に入職

2年目は外科を中心に経験を積んだほか、自ら希望して同じグループの新松戸中央総合病院や春日部の病院などで、それぞれ1カ月ほど研修を受けたと話す。

「同じグループとはいえ、病院によって特色や得意な術式は違うことを知り、自分の視野を広げる機会になりました。院長の松尾亮太先生は同じ消化器外科の先達で、大変刺激を受けましたし、頼れる先輩としてその後も連絡を取り続けることになりました」

こうして初期研修を終えた竹内氏は、研修を受けた病院グループでそのまま働くことも検討したが、立地や設立母体が異なる病院も一度は見ておきたいと考え、改めて勤務先を探したという。

「研修後は日本外科学会外科専門医取得が目標だったので、その条件が整っていることが前提。そして周囲に病院が少なければ患者さんが集まり、多くの症例を診られるだろうと期待して選びました」

当直やオンコール時の
緊張が心身の負担に

入職した病院は400床規模で、その地域では三次救急までカバーするただ一つの基幹病院。初期研修時の病院が非常に忙しく、多くの症例を経験していたおかげで、新たな職場でもある程度の初期対応はこなせたと竹内氏。

しかし当直での三次救急の対応やオンコール時など、精神的にハードなことも多かったと語る。

「それまで当直は二次救急までしか経験がなく、急患のファーストタッチの際など、どこまでを自分で診て、どこからを先輩の医師に任せたらいいかの見極めに苦労しました。加えてオンコールの当番では張り詰めた気持ちを緩められず、何をやっていても携帯電話が気になって大変でしたね」

着実に経験を積めてはいたが、心身の疲れは否定できず、また専門医取得にもかなり時間がかかりそうに思えた竹内氏は、いったん環境を変えたいと思い、初期研修後も連絡を取っていた松尾氏に転職の相談をしたという。

「何度か相談した後で、最終的に新松戸中央総合病院にお世話になろうと決めました。もちろん初期研修を受けた病院に戻る選択肢もあったのですが、新松戸は中規模病院ながら成長の様子が外部からでも分かり、そうした環境なら自分も伸びていけそうと感じたことが決め手になりました」

今になれば、以前の病院で画像診断や点滴の扱い、診察のやり方などで指摘された理由も理解できるが、当時はそこまで気が回らず、院内に相談できる相手も見つけられなかったと竹内氏。

勤めていた病院に退職希望を伝え、必要な手続きを終えて、2016年4月に新松戸中央総合病院の外科に転職。通勤に便利なよう転居し、仕事でもプライベートでも新生活が始まった。

AFTER 転職後

目標だった外科専門医も取得
今後は後輩を指導できるよう
実力をさらに磨きたい

充実した指導体制で
資格を取得し実力も向上

竹内氏は同院に入職した2016年4月1日を忘れないと話す。

「何しろ、入職した日から当直で驚きました。同じグループの病院で初期研修を受け、新松戸でも短期間ながら研修していたので大丈夫と思われたのでしょう。2回目の当直では大動脈解離の患者さんを担当。私の入職と同時期に心臓血管外科が開設されていたので、すぐに専門の医師の協力が得られ、適切な治療ができました」

また、外科というと体育会系のイメージだったが、同院の外科はそうした感じはなくフランクな雰囲気も特徴だと竹内氏。

「医師同士、あるいは医師と看護師の関係も良好です。私の場合、症例も最初は鼠径ヘルニアなど比較的軽めの手術から担当させてもらい、段階を踏んで育てるという考え方が伝わりました」

だからといって育て方が甘いのではなく、例えば院長の松尾氏は専門医などの資格取得、論文執筆、学会発表を推奨し、病院全体で常識のようになっているそうだ。

「こうした後押しのおかげで私も勉強する習慣ができ、それで得た新たな知識が普段の手術や診療に生かされています。昨日できなかったことが、今日はできるなど、成長が日々実感できるのです」

最初の目標だった日本外科学会外科専門医のほか、日本消化器病学会消化器病専門医も取得。次の目標として、日本消化器外科学会消化器外科専門医取得に向けた準備を進めているという。

互いにフォローし合う
チーム力で仕事がしやすい

竹内氏の専門は消化器外科で、胃や大腸の開腹手術のほか、現在は腹腔鏡による胆のうの切除などにも習熟し、手術を最後まで担当できるようになってきたという。加えて乳腺外科の手術の応援など活躍分野も広げている。

「お世辞かもしれませんが、先日は松尾院長に『うまくなった』とほめられました(笑)。また自分が担当した患者さんに院内で会ったとき、『先生!』と元気に声をかけてくれるのもうれしいですね。当院で診療を始めてまだ数年ですが、患者さんをずっと診ていく地域医療にも魅力を感じています」

手術が日に何件も続くことがあるなど忙しい毎日を送る竹内氏だが、同院は看護師をはじめスタッフが協力的で、先輩医師もフォローしてくれるため、安心して仕事ができると感じている。

「相手が仕事をしやすいようにサポートし合うなど、チームとして働いていることを実感します」

今後の目標の一つとして、いずれ自分に後輩ができたとき、緊急手術などでサポートができるよう実力を磨きたいと竹内氏。

「私が当院で先輩にお世話になったように、私も次世代を育てる存在になりたいと思っています」

趣味のドライブは
リフレッシュの時間に

以前に在籍していた病院では、趣味のドライブを楽しむ心の余裕もなかったという竹内氏だが、現在は日曜日の午後や夜は都心部などに車でよく出かけると笑う。

「これといった目的地はなく、運転を楽しむだけですが、車に乗っていると病院のことを忘れるので、気持ちもリフレッシュできます」

忙しくてもメリハリがあり、資格取得や技術向上を目指す人に勧めたい病院だと竹内氏はいう。

「都心に近い利便性、300床程度の大きすぎない規模感、学閥のない自由さ、手術件数の多さなど、若手だけでなく中堅の医師にも成長できる環境だと思います。そうなると医師の厚みが増し、私たちも新たな術式を学ぶ機会が増えますから。専門医取得もサポートしてくれますし、転職して本当によかったと思っています」

腹腔鏡のトレーニングを行う竹内氏 画像

腹腔鏡のトレーニングを行う竹内氏

WELCOME

転職先の病院からのメッセージ
新たな専門性を地域医療に生かす

院内体制を刷新して
地域が求める専門性を強化

JR新松戸駅近くにあり、長く地域医療を支えてきた同院は、2013年に松尾亮太氏が院長に就任して新たな成長期を迎えた。

松尾氏の就任時に新病院がフルオープンし、これを機に院内体制や人間関係をよりフラットに変え、その後も消化器病センターや心臓血管センターの開設など、診療体制の拡充も図ってきたという。

「現在は心臓血管外科で年間330件以上の手術を行い、うち開心術は170件ほど。呼吸器外科の手術数も300件を超えました。消化器外科は胃がん、大腸がん、肝臓がん、膵臓がん、胆道がんなどに幅広く対応し、千葉県がん診療連携協力病院にも認定されています(2018年度実績)」

これに合わせて患者数も、医師やスタッフの人数も順調に増えているが、松尾氏は規模だけでなく質の向上も重要だと話す。

「幸い当院には専門医・指導医も多く、333床の病院ながら日本内科学会 専門研修基幹施設、日本外科学会 専門研修基幹施設にもなっています。専門医取得の教育プログラムも充実させており、竹内先生も当院で日本外科学会外科専門医を取得して、日本消化器外科学会消化器外科専門医も間もなく取得予定です」

こうした成長を促す場を数多く提供することで、竹内氏をはじめ若手医師が次世代を育ててくれることにも期待したいと松尾氏。

「当院は新松戸の地で40年も診療を行ってきました。現在は高度な医療をすぐに提供できる専門性も備えていますが、“地域から頼られるフレンドリーな存在”であり続けたいと思っています」

そうした思いを具現化する施策の一つが、外科医、精神科医、看護師、ソーシャルワーカーなどによる緩和ケアチームの発足。診断、治療、看取りまでトータルに支援できる体制づくりを進めている。

「診療科や職種によってアプローチはさまざまですが、私たちが目指すゴールは患者さんの幸せです。それを全員が意識し、今後も同じ方向にベクトルを合わせていく病院運営を進めたいと思います」

松尾 亮太氏

松尾 亮太
新松戸中央総合病院 院長
1994年筑波大学医学専門学群卒業後、東京女子医科大学消化器病センター入局。2007年筑波大学大学院人間総合科学研究科修了。龍ヶ崎済生会病院外科部長を経て2013年から現職。専門は消化器外科・肝胆膵外科・内視鏡外科。日本消化器外科学会消化器外科専門医・指導医、日本消化器病学会消化器病専門医・指導医、日本肝臓学会肝臓専門医・指導医、日本内視鏡外科学会技術認定医など。

新松戸中央総合病院

地域が必要とする医療の提供を目的に1979年に開設された同院は、幾度かの増改築を経て、2013年の新病院オープン時には333床(うちICU20床)の中規模病院となった。「高度な医療で愛し愛される病院」を基本理念とし、近年は救急外来部門(ER)の充実を図り、心筋梗塞や大動脈解離など生死に関わるような症例は夜間でも緊急手術に対応。また、消化器病センター、心臓血管外科センターをはじめ専門性の高い分野のセンター化を進めている。

新松戸中央総合病院

正式名称 医療法人財団 明理会
新松戸中央総合病院
所在地 千葉県松戸市新松戸1-380
開設年 1979年
診療科目 内科、呼吸器内科、消化器・肝臓内科、
循環器内科、血液内科、神経内科、感染症内科、
外科、心臓血管外科、乳腺外科、大腸肛門外科、
呼吸器外科、整形外科、脳神経外科、形成外科、
精神科、リウマチ科、小児科、皮膚科、泌尿器科、
眼科、耳鼻咽喉科、放射線科、病理診断科、
救急科、麻酔科、リハビリテーション科、小児外科、
腎臓高血圧内科、糖尿病・内分泌代謝内科
病床数 333床(一般333床)
常勤医師数 83人
非常勤医師数 98人
外来患者数 828.7人/日
入院患者数 289.0人/日
(2019年12月時点)