医師の転職マニュアル

キャリアアップを図りたい、ゆとりのある働き方をしたいなど、転職を希望する理由は医師によってさまざま。転職できないということはまずないが、満足度の高い転職を実現させるには、どんなキャリアを築きたいか、転職によって何を実現したいかなど、自身の希望を明らかにし、必要なことを十分に確認し、決断するなど、戦略的に動く必要がある。転職活動でおさえておきたい基礎知識とポイントを網羅したので、保存版として活用いただきたい。

記事中の転職実態データ(出典記載のないもの全て):「医師に関する調査」(楽天リサーチ実施/2016年3月/総回答者500人・常勤転職経験者196人のデータ)

転職活動の段取りを念頭におき、
効率的に満足度の高い転職をめざす

すべきことや順序を想定し
着実に進めていく

転職というと、転職先を探して面接とイメージしがちだが、実際には下図のような手順を踏むのが一般的。段取りをおさえておくことで、多忙な日々のなか、効率よく、合理的に転職活動を進めることができる。

まずは自身がこの先、どのように医師として働きたいか、どんな医師になりたいかといったキャリアプランを描く。それに沿って転職の目的や勤務形態、報酬などの条件を明確にする。

方針が固まったら、いつ入職したいか、そのために現職にいつ退職意向を伝えるかなど、おおまかにスケジュールを立てる。転職先を探すにあたっては、人材紹介会社の利用、知人からの紹介などの方法を、自分に合わせて選択。転職先の情報について情報を収集し検討する。

条件に合う施設があれば施設の見学や面接をし、納得できる転職ができそうかを確認。医師、施設、双方の希望が整えば入職を決める。現職の退職もきちんと手続きしたい。

まずはこうしたプロセスを念頭においておこう。

転職活動の手順
転職活動の手順
  • STEP1

キャリアプランを考える

長期のビジョンを立てた後
中期、短期を考える

医師の3人に1人が転職経験があるが(下図)、納得できる転職のためにまず行いたいのが、キャリアプランを考えることである。その際、大切なのは、「収入を増やしたい」など当面の目的の前に、「どんな医師になりたいか」「どう働きたいか」など長期的なビジョンを持つことだ。

弊社で医師の転職を支援しているキャリアアドバイザー(以下、CA)は、「医師のキャリアは大きく、専門重視か、生活も重視するかで道が違います。専門重視なら医局で技術を高めることを考慮する、生活も重視するなら予防医学や健診なども選択肢に入れる、など。まずは長期視点で自分が大事にしたいことを、仕事だけでなく生活や家族まで含めて考えてみてください」と話す。

中期、短期のキャリアも、そこから考えていくのが望ましい。たとえば、将来開業したいなら、必要な症例経験や、経営知識のレベルを考え、中期、短期の転職プランを考える、という具合だ。ちなみに開業は、キャリアを決める1つのポイントなので、早期に考えておくといい。

もし、ビジョンを立てられない場合は、「『今、何ができるか』から考えて、自分のスキルを棚卸し、そこからやりたいことや方向性を定めるという方法も有効」だという。

また、勤務医としてのキャリアを考える場合は、「どんな施設なら長く働けるか」という視点でみるのもいい。スキルアップしたい、出世したい、育児と両立しながら続けたいなど、自身のライフサイクルに応じたキャリア形成が図れるかを考え、キャリアプランに落とし込んでいく。

初めての転職年齢は30代後半が一番多いが(下図)、売り手市場なのも30代後半~40代前半だと知っておきたい。50代以上の医師なら、何歳まで働き、どのようなゴールをめざすかをイメージするなど、年齢に応じたキャリアプランを考えたい。

注意点

業界の変化を考慮する

高齢化や医療改革などにより、医師ニーズも変化していく。先人の「経験を重ねるごとに好条件で転職を重ねられる」といったキャリアパスが通用しなくなる可能性もあることを念頭におきたい。体制変化に伴う科目需要や人材ニーズの変化も想定しながらキャリアプランを描こう。

また現職に不満でも、他と比較すると実は恵まれた環境にあったり、交渉などによって環境改善できるケースもある。現職に留まる選択肢もあることを心に留めておきたい。

これまでに転職活動をされたことがありますか?
これまでに転職活動をされたことがありますか?
最初の転職活動は何歳ぐらいの時でしたか?
最初の転職活動は何歳ぐらいの時でしたか?
Check Point!
目先だけでなく長期的なキャリアプランを描く
キャリアプランが描けない場合は、「今何ができるか」から考える
専門性重視かライフプラン重視か。大事にしたいことを考える
開業意向があるかどうかを考慮して考える
自分が長く働けそうなのはどんなところか、考えてみる
  • STEP2

転職目的と条件を明確にする

考えを整理して
優先順位をつける

キャリアプランを描いたら、より具体的に、転職目的と条件を明確にしておきたい。

あるCAは、「負担の軽減を希望していたのに、報酬が高い施設を選んでしまうなど、途中で希望がずれてしまうことも少なくありません」と指摘する。転職の目的がぶれると満足度の高い転職からは遠ざかるので、しっかりと考えをまとめておきたい。

転職活動をはじめた動機で最も多いのは「収入を上げるため」で、次いで家庭の事情、スキルアップ、忙しさの緩和、人間関係など(下図)。

収入アップは、大学の医局から民間施設への転職では実現しやすいが、民間から民間では必ずしも可能とは限らない。医師仲間の話などから漠然ともっと高収入が望めると思っても、どうすれば上がるのか(手術件数や当直を増やすなど)は考えておらず、現実的ではないケースもある。人材紹介会社などを利用し、相場を知ることも必要だろう。

転職目的をより詳細に考えることも重要だ。

たとえば「現職が忙しすぎて、もっとゆったり働きたい」という場合、具体的には何に忙しく、どんな働き方がしたいのかを考える。外来のコマ数が多いのか、患者数が多いのか。拘束時間が長いのか、勤務時間内の忙しさが苦痛なのか、診療以外の業務が負担なのかなど、具体的に整理することで、どんな施設を探すべきかがみえてくる。

人間関係については、上司なのか、コメディカルとの連携が悪いのかなど、誰とうまくいかないのかも重要なポイント。スタッフの多くが同じように感じているのであれば、施設側が問題を認識して改善を図る可能性もあるし、自身だけが不満を持っているなら、自身の考え方を変えることで解消される可能性もゼロではない。人間関係は外部から完全に把握するのが困難であり、人間関係だけにフォーカスすると転職は成功しにくいので、慎重に考えたい。

収入、勤務形態など、すべて希望どおりになる100点満点の転職は難しい。条件について、譲れない「MUST」と、できれば叶えたい「WANT」とに整理し、優先順位をつけ、80点をめざすといい。

転職の際にはほぼ確実に現職から慰留を受け、勤務形態の見直しや昇進を打診される例もある。翻意するようならせっかくの転職活動が無駄になりかねないので、強く慰留されても転職を貫く意思があるかどうか、自問しておきたい。

注意点

客観的分析と家族の意向確認を

自身では人間関係や収入などから転職を考えたつもりでも、実は別の動機が隠れていることもある。潜在的な問題に焦点をあてないと適切な施設選びができないので、CAや転職を経験した仲間の医師などと話すことで客観的に自身をみつめ、転職目的や条件をもう一度考えてみたい。

家族の意向も重要で、内定が出ても家族の反対で断念するケースも。通勤時間、勤務体系、肩書など、家族の意向も確認し理解を得ておこう。

直近の転職活動の動機は何でしたか?(複数回答)
直近の転職活動の動機は何でしたか?
Check Point!
MUSTとWANTを整理し、絶対譲れないポイントを明確にする
目的は「人間関係の不満解消」以外で考える
相場を知り、相場に見合った条件を設定する
第三者からの客観的な評価、アドバイスも参考にする
行動する前に家族の同意を得ておく
転職でしか解決しないのか(現職で改善する道があるか)考える
現職から強く慰留されても転職を貫くかを考える
  • STEP3

スケジュールを立てる

入職希望の1年前から
計画的に活動すると安心

最も多い4月入職を想定したスケジュールのイメージは下図のとおり。4月から3か月程度かけて情報収集し、転職市場や自身の価値を客観的に把握。次の3か月で候補となる施設をピックアップして見学や面接、9~10月に入職先を決定、退職交渉を行う。1年程度の活動を見込み、早め、早めの対応を心がけよう。医局所属の場合は特に、医局のルールを確認し、逆算して動く必要がある。

4月入職の場合のスケジュール目安
4月入職の場合のスケジュール目安
転職活動の情報収集を開始された時期はいつ頃でしたか?
転職活動の情報収集を開始された時期
Check Point!
確実に希望を叶えるためには1年くらいみておく
医局所属の場合は特に、医局ルールに則り、逆算して動く
情報収集に3か月、転職先の絞り込みと見学・面接に3か月みると安心
全て早め早めの対応を心がける
  • STEP4

応募方法を選ぶ

入職後のことまで考え
納得の転職ができる方法を

応募方法には「同僚や知人からの紹介」「人材紹介会社」、自身による「直接応募」の3つがあり、それぞれ下表のようなメリット・デメリットがある。同僚・知人の紹介では、人材紹介会社を利用していない施設に入職できるなどの利点がある反面、しがらみがあって断りにくい、辞めにくいなどの悩みも。条件なども確認不足になりやすい。人材紹介会社は実績や情報の充実度から選ぼう。

応募方法別のメリット・デメリット
同僚・知人 安心感がある
紹介会社が仲介できない施設がある
× 条件交渉がしづらい。断りづらい
× 入職後、不満が言いにくい。辞めづらい
人材紹介会社 手間や条件交渉を請け負ってもらえる
自分が気づかないアドバイスをもらえる
× 紹介できる施設が会社ごとに若干違う
× 会社・担当者と相性が合う・合わないがある
直接応募 他のルートで応募できない施設がある
自分の自由意志で活動できる
× 情報収集や、やり取り等の手間がかかる
× 条件交渉がしづらい
実際に入職に至ったのはどの手段を通じてですか?(複数回答)
実際に入職に至ったのはどの手段を通じてですか?
Check Point!
それぞれのメリット、デメリットを理解したうえで選ぶ
転職するためだけでなく、転職後のことまで考えて選ぶ
入職後の「こんなはずでは」を防ぐために、事前確認を十分に行う
  • STEP5

転職先情報を収集し見極める

どんな条件の施設か、基本情報は求人票で確認できる。が、希望が本当に叶えられる転職先なのかをしっかり見極めるために、その先まで確認すべきポイントをおさえておこう。

勤務内容

求人票の内容だけでなく
実態はどうかまで把握する

勤務内容、勤務日数・時間、当直などについては、残業や休日出勤の頻度など、実態がどうかまでを確認したい。たとえば、当直なしという条件で入職したものの、自分以外は全員が当直を担っていて立場がない、といったケースもある。実態や、他の医師の状況を知っておかないと、「当直も残業も断りにくい」といったことになりかねない。

給与・待遇・福利厚生

給与は中身を正確に確認
諸手当や福利厚生にも注目

給与については1200~2000万円などと一定の幅で記載されていることが多い。自分には上限の金額が適用されると考えがちだが、経験やスキル、勤務日数などに応じて決められることを理解しておきたい。

週5勤務から週4勤務に減らしたうえで収入は維持、といった成功事例もあるが、「通勤が不便、医師不足で非常に忙しい、など理由があります。報酬は忙しさやストレスに比例する、と考えてください」(CA)

実質的な収入は諸手当によっても左右される。学会参加について費用が補助されるか、出勤や有休扱いになるかなどを確認したい。

健康保険、年金保険など、社会保険は完備されているのが普通だが、まれに雇用保険非加入の施設もある。しっかりとチェックを。

転職先の情報については、人材紹介会社のほか、同僚や知人、医局から収集したという医師も多い(下図)。情報があいまいだったり、口約束だけで不確実だったりするケースもあるので、慎重さが求められる。とくに給与や諸手当については、もっと情報収集すればよかったという声も多い(下図)ので、くれぐれも気をつけたい。

体制

どんな働き方ができるか
人員や実績を詳細確認する

人員体制は、どんな働き方ができるかを左右する重要なポイントだ。

自身がどのような立場になるかを知るためにも、担当科の医師の人数、キャリアなどを確認したい。大勢を占める学閥があると、手術の手技や治療方法にも影響し、これまで築いたスキルが活かしきれない、といった課題に直面することもある。また担当科に医局とのつながりがないと、医師不足に陥りやすく、仕事に追われる可能性もある。

症例数も重要だが、症例を積んでいた医師がすでに退職している、手術件数は多いが執刀医は部長医師のみなど、自身が入職しても症例が積めるかどうかは不透明な場合もある。ホームページで公開されている手術件数も、情報が更新されておらず、データが古い例も少なくない。求人票や公開情報だけでは分からないことについては、人材紹介会社に確認を依頼するのが現実的だ。

部長や副院長として入職するケースでも、すでに複数の部長や副院長がいて、特別な権限はないという例も。逆に言えば、交渉次第で肩書を得やすい可能性がある、ということでもある。学会での論文発表や子どもの進学などで肩書が必要な際は、相談してみるのも手だ。

経営・方針

経営の方向性から
将来像をイメージする

病床や科目などの体制変更があると、描いたキャリアプランが実現しにくくなるので、予定がないかしっかり確認しておきたい。民間施設の場合は、院長の専門科目が施設の方向性に影響することも多い。

グループの場合は異動の有無も把握。家族に関係する部分でもある。

経営状態について気になる場合は、財務諸表を入手して確認するという方法もあるが、ある程度の手間と知識が必要なので、人材紹介会社に相談するのが現実的だろう。

育児支援については、保育所の有無、病児保育の可否のほか、医師の育児休暇や時短勤務の実績を確認。それによって、仕事と育児の両立への理解度がみえてくる。

注意点

都合よく解釈せず冷静にみる

求人票は定量的な情報であり、記載をそのまま受け取るのでは情報不足。定性的な情報を得る必要がある。自身の都合のいいように解釈すると入職後に後悔することになりかねないので、しっかり確認したい。

収入アップをめざした転職だから報酬についての情報しか見ないなど、偏った見方も危険である。なぜその報酬が提示されているのかを知るためにも、勤務内容や体制をしっかり把握したい。

複数の求人票を見て、比較検討することも重要。そうすることで、収入の相場などもみえてくる。

転職活動の情報収集で活用されたもの(人)をお答えください(複数回答)
転職活動の情報収集で活用されたもの(人)をお答えください(複数回答)
転職先候補の情報収集で、こうすればよかったと思う点は何ですか?
転職先候補の情報収集で、こうすればよかったと思う点は何ですか?
出典:「満足できる転職」アンケート(弊誌会員・ネット調査・2015年7月)
求人票見本
勤務内容
募集科目 消化器外科、整形外科、麻酔科
勤務内容 外来・病棟・手術等
勤務時間 8:30~17:00
勤務日数 週5日
当直 なし
給与・待遇・福利厚生
給与 年収1,200万円~2,000万円
※経験・スキルにより優遇
休日休暇 土・日・祝、年末年始休暇、夏季休暇
待遇 社保完備、学会補助あり、通勤手当
募集資格
卒後3年以上
施設概要
診療科目 内科、外科、消化器外科、整形外科 その他8科目
病床数 155床(一般90、回復期リハ40、療養25)
施設基準 日本医療機能評価機構認定病院
二次救急指定病院
施設住所 東京都港区新橋2-6-2
交通 JR新橋駅・営団地下鉄銀座線新橋駅より徒歩3分
応募・問合せ
担当者に直接ご連絡ください。病院見学も歓迎
Check Point!
勤務内容
勤務日数・休日・残業…勤務実態までを確認する
当直…「なし」の場合、他の医師の状況、全体の当直体制を確認する
給与・待遇・福利厚生
給与…「自分のキャリアならいくらか」を具体的に確認する
諸手当…学会補助は金額の他、補助範囲、参加日の扱いを確認する
福利厚生…雇用保険があるか確認する
体制
人員体制…自分の役職や立場に影響。人数、キャリア等を確認する
学閥…臨床のやり方にも影響。大勢を占める学閥があるか確認する
医局派遣…医局派遣の有無、体制、人員割合などを確認する
症例数・手術件数…過去実績だけでなく、現在の状況を確認する
経営・方針
今後の方向…病床や科目など体制変更の予定がないか確認する
院長の専門科目…病院の方向性に影響することが多いため確認する
グループ…グループ施設の場合、グループ間異動の状況や方針を確認する
安定性…気になる場合は、財務諸表を入手して確認する
育児支援…保育所有無、病児保育の可否、育児中の医師数を確認する
全体
最後にトータルで見て、どうかを判断する
  • STEP6

見学・面接する

自分本位に話さない
態度、服装にも要注意

施設を絞り込んだら、施設見学や面接に出向く。ここでは自身が描くキャリアプランを実現できるか、条件は希望に合うかなどを確認する。

面接の際、施設側は医師の経験やスキルのほか、コミュニケーション能力を重点的に見るのがここ数年の傾向となっている。患者や施設の職員とうまく関係が築けるかが重視され、「医師不足であっても、コミュニケーションに問題があると判断されると内定を出さない施設も増えています」と、CA。とくに自身の経歴などについて話し続けるなど、自分本位の態度が問題視されるという。質問の意図を汲んで的確に答えるよう、心がけたい。CAと事前に打ち合わせるのもいい。

面接は自身をアピールする場であると同時に、病院の話を聞く場でもある。あらかじめ知りたいことを整理しておきたい。

施設の方針、方向性、院長の考え方は面接の席で話を聞く。さらにCAは、「担当科の医師に会ったり、院内の要所要所を見学することをお勧めします」と話す。担当科の医師と話せば、入職した場合にどんな働き方ができるか具体的にイメージしやすいし、同僚となる医師との相性についても感触が得られる。手術室でオペの機材を確認したり、スタッフステーションで看護師長と話したりして、施設の雰囲気をつかみたい。

ジーンズやヒール靴は避け、男性はジャケット着用など、清潔感のある、常識的な服装で臨もう。

Check Point!
質問に端的に答え、しゃべりすぎない
知りたいことを事前に整理しておき、端的に聞く
病院の全体方針・方向性、院長の考えはこの場で確認する
院内見学では、入職後の仕事のイメージを把握できる人・場所を確認
常識的な服装に(ジーンズNG、男性:ジャケット着用、女性:ヒールNG)
  • STEP7

スムーズに退職する

退局、退職ルールを確認し
迷惑がかからない方法をとる

入職先に目途が立ったら、現職について退職の意向を伝える。

医局を出るには半年前までに申し出るという例が多いが、医局によってルールはさまざま。過去に先輩医師などが誰にいつ退局を申し出て、いつ許可が出て、実際にいつ辞めたかなどを確認し、助言を受けたい。3月に退局したいなら、はじめは1月退局を申し出て、譲歩するような形で3月に退局するなど、効果的な交渉術を考えておくのもいい。根回しができるようならしておこう。

民間施設では3か月前までの申し出で退職できる例が多いが、雇用契約書などで確認する。

猛烈な引き留めで転職をあきらめる医師も少なくない。狭い世界なので、強引に辞めるとその後の医師人生に支障をきたす可能性も。転職実現のために細心の注意を払いたい。

内定後、入職に至らなかった経験はありますか?その理由は?(複数回答)
内定後、入職に至らなかった経験はありますか?その理由は?
Check Point!
転職先の目星をつけてから、退職を申し出る
退職の申し出は半年前を目安とする
医局の場合は医局ルール、民間の場合は雇用契約書を順守する
先人の例も参考に、迷惑がかからないように配慮する
強い意志をもって臨む

もっと知りたい!医師の転職Q&A

Q.今後、求められる人材に変化はある?

A.回復期や総合診療のニーズが増える

今春、全都道府県で地域医療構想が策定された。下図は計画当初の2025年における必要病床数(推計)だが、いずれにしろ、高度急性期、急性期の病床が大幅に減り、回復期病床の大幅な増加が見込まれる。すでに不足しているが、将来的にも回復期で活躍できる医師のニーズ拡大が予想される。「サブスぺを磨く医師が増えているので、専門医の競争が激しくなりそうなほか、総合診療医が歓迎される傾向も強まるでしょう。今後の転職市場では、ニーズに応じて専門性を高めることがより重要になっていくと思われます」(CA)

Q.希望する求人がない場合、入職は無理?

A.可能。潜在的な需要を探りオリジナルの求人を作れる

求人の少ない診療科など、希望する求人が見つからないというケースもあるが、あきらめるのは早計。人材紹介会社に相談してみたい。

CAによると、「潜在的にニーズがあるものの医師が確保できずにあきらめているなど、施設が求人活動をしていないケースもあります。こちらから施設の需要を掘り起こし、求人を作ることは十分、可能です」

たとえば求人がゼロだった形成外科医について、3件の施設が興味を示し、好条件で入職した例もある。専門性が高いなど、アピールできるものがあれば、なおさらという。

Q.求人内容が希望と異なっている場合、交渉の余地はある?

A.施設に貢献できる医師なら待遇を有利にもできる

「交渉の余地はあります」と、CA。求人票にあるのは施設の希望であり、交渉によっては有利な条件を引き出すこともできるという。一例では、手術件数に応じて給与を加算する、新幹線通勤手当全額支給など。

ただし、希望を通すには施設側に「要求を受け入れても採用したい」と思わせる必要がある。自身がどれだけ貢献できるかも考えたい。

Q.人間関係がうまくいきそうか、事前に測る方法はない?

A.医師やスタッフと話し周辺からの情報も集める

担当科の上司や同僚医師との相性は非常に重要。面接の際に直接話す機会を設けてもらうといい。複数の医師がいる場合、見学時に何人かが揃ったところを訪ねれば、関係性も伺える。看護師などにそれとなく聞くのもいい。自身のつてで医師の評判を聞く方法もあるが、参考程度に。

2025年のあるべき病床数の推計結果
2025年のあるべき病床数の推計結果
*2014年7月時点(未報告・未集計病床数などがあり、現状の病床数(134.7万床)とは一致しない。)

出典:平成27年6月15日:内閣官房情報調査会資料より