VOL.46

世界トップレベルのクリニックで
日進月歩で技術が進む不妊治療を学び、
患者を救う。

医療法人 浅田レディースクリニック 婦人科 
近藤 麻奈美
氏(33歳)

長野県出身

2008年
名古屋市立大医学部卒
JA愛知厚生連海南病院 初期研修
2010年
同院産婦人科
2013年
医療法人 浅田レディースクリニック

女性の社会進出に伴い、晩婚化、晩産化が進んでいる。不妊治療のニーズが高まり、同時に、治療技術は日進月歩で進んでいる。生殖医療は、これから大きな可能性を秘めた領域と言える。近藤麻奈美氏は、卒後5年目の頃、総合病院の産婦人科から、不妊治療専門のクリニックに転職した。日々、最先端の技術を学びながら、患者を救っている。

リクルートドクターズキャリア2月号掲載

BEFORE 転職前

1人の患者の笑顔が
クリニックのレベルの高さを物語っていた

不妊治療のニーズは急激に高まっている

「産婦人科の中でも、“自分はこれ”という専門性を身に着けたかったんです」

浅田レディースクリニック(愛知県)の近藤麻奈美氏は、大きな目を輝かせて語る。

同クリニックは、不妊治療専門だ。2004年4月の開院以来、先進的な技術と実績の高さが評判で、全国から大勢の患者が訪れる。名古屋駅すぐと、JR勝川駅すぐの2拠点があり、近藤氏は曜日によってどちらかに勤務している。

近藤氏は、08年に名古屋市立大学医学部を卒業後、地域の中核病院であるJA愛知厚生連海南病院で初期研修を履修。その後、同院産婦人科で経験を積んできた。

卒後5年目を迎えた頃、次のステップを模索した。周囲を見渡せば大学に戻る医師が多い。だが、「研究よりも、臨床の現場にいたい。多くの患者と接している方が自分には向いていると思いました」と語る。

では、臨床家としてのサブスペシャリティはどうするか?

産婦人科医療は、大きく3つの専門領域に分けられる。周産期領域、婦人科腫瘍領域、生殖・内分泌領域(以下、生殖医療)だ。周産期と婦人科腫瘍は長い歴史があるのに対し、生殖医療は比較的新しい。同じ産婦人科医の仲間も、多くは周産期か婦人科腫瘍を専攻していた。

そうした中、近藤氏が生殖医療を選んだのは、目の前の患者と、社会的な状況の変化を見つめていたからだ。

「海南病院でさまざまな症例を診る中、不妊の患者も担当することがありました。患者が妊娠した時のうれしさ、医療としての奥深さを感じました。また、不妊治療を望む患者は急激に増え、生殖医療技術はどんどん進歩しています。いまだ解明されていないことも多く、将来的にもっと発展する可能性が高い領域です。今からしっかり学びたいと思いました」

近藤氏は、転職先を探そうとネットで検索したり、知人のつてで東京のクリニックの面接を受けたりした。患者の増加に伴い、不妊治療を標榜するクリニックは大幅に増加している。各クリニックが自院の特長や得意分野について主張している状況は、生殖医療への感心をさらにかき立てた。

そんな時、ふと1人の患者のことを思い出す。海南病院の産婦人科にかかっていた女性だ。「通常であれば妊娠は困難だろうと思われる病気をいくつか抱えている方で、浅田レディースクリニックを受診すると話していました。その後、すぐに妊娠し、出産のために笑顔で戻ってこられました。その時の幸せそうな表情から、クリニックのレベルの高さを感じました」

若手医師でも多くを学び活躍できる環境

見学と面接のため、同クリニックを訪れると、驚きを通り越して感動を覚える。院長の浅田義正氏は、不妊治療を通じて患者の幸せを実現したい思いが強く、新しいことへのチャレンジにアグレッシブだ。専門的な生殖医療の経験がなかった近藤氏に対し、浅田氏は「ここで一から学んだらいい」と優しく声をかけた。「当初、クリニックには一定程度、キャリアを積んでから就職するイメージがありました。でも、ここでは若手でも多くのことを学び、活躍できます。院長のもとで経験を積みたいと思いました」

設備面の充実にも目を見張るものがある。全症例完全個別スペース培養を採用し、その培養室は患者が見学ルームから見ることができる。空調や照明も培養環境に優しいものを整備。患者の不安感を排除し、治療効果を徹底的に高める姿勢が伝わる。「クリニックでありながら高度な生殖医療を提供し、常に最先端の技術を取り入れながら、情報を発信しています。患者数も多く、大学のように研究や学会発表もできる環境でした」

近藤氏は、産婦人科を専攻した時のことを振り返る。「医療の中でも、産婦人科だけは『おめでとう』と言える科であることに惹かれたのです」

不妊に悩む大勢の患者を救い、「おめでとう」の言葉をかけるために――。13年5月に転職。新たな一歩を踏み出した。

AFTER 転職後

患者が無事に妊娠すると夫婦はもとより、
家族、親戚も喜んでくれる

徹底したチーム医療と効率的な診療体系

浅田レディースクリニックは、院長の浅田氏が長年培ったムダのないオペレーションが行き届いている。1日の来院患者数は約100人。2~3診体制で診ている。採卵、受精卵の移植は月曜から土曜までの毎日約10件ずつで、すべて滞りなく行われる。チーム医療が徹底しているのだ。「患者が最良の治療を安心して受けられるように、スタッフ間で密な連携がとられていることに感銘を受けました。医師が治療方針を決定した後、看護師やコーディネーターが丁寧に説明を行い、不安があればじっくり話を聞きます。また、手術時には、いつも胚培養士(エンブリオロジスト)が横にいて、卵子や受精卵の取り扱いをサポートしてくれます」

医師は、手術や問診、内診などにより集中できる。「もともと手術が好きだったので、やりがいが大きいですね。採卵は年間約3300件、移植は年間約4000件実施されます」と近藤氏は言う。

また、不妊治療の患者が、ネットなどの大量の情報の中から正しい知識を得ることは難しい。そのため同院では、初診受診前説明会やホームページ上でのEラーニングを実施している。「年齢が上がるにつれて妊娠しにくくなることなど、卵子や妊娠、不妊治療について正しい情報を院長が丁寧に説明し、きちんと知識を身につけた人が来院しています。患者は納得しながら治療を受けられるため、明るく一生懸命な人が目立ちます」

先輩医師に相談しやすく、オンオフが明確な職場

生殖医療を提供している喜びを感じるのは、やはり患者が妊娠した時だ。「ご夫婦はもちろん、家族や親戚にも喜んでもらえます。患者から出産報告の手紙をもらうと、治療が報われたことを実感します」

近藤氏は、院内で一番若い医師だが、ほかの医師の年齢層は30~50代と幅広い。気後れすることなく、普段から相談しやすい雰囲気がある。また、毎月1回、医師同士のミーティングが開催される。「新たな治療技術などに関する情報交換や院長からの指導、その他、難治症例に関する意見交換などが行われます。例えば、難治療患者への対応などについて、経験豊富なほかの医師からアドバイスをもらったり、自分が意見を述べたりしています」

院内全体が、1人でも多くの患者がよい結果を出すために切磋琢磨しているのだ。このように、職員のモチベーションが高い背景には、院長の浅田氏の姿勢が関係している。浅田氏は、優れた技術や診療方法でエビデンスがあれば、新しいものでも積極的に取り入れる。「自分の意見を採用してもらったこともあります。転職して1年半ほどですが、その間にも診療が変化していくのを感じます」と、近藤氏は言う。

同時に、治療に関する倫理面も重んじている。「生殖医療は、妊娠がゴールではありません。出産、育児と続き、幸せな家庭を作ることが目的です。患者本人だけでなく、生まれてくる赤ちゃんの目線で考えることを大切にしています」

女性医師としてキャリアを構築する上で、働きやすさも重要なポイントだ。近藤氏は週5日勤務。定時は、曜日によって8時半または9時~17時または19時である。「当直や夜間の呼び出しがなく、休日もしっかり取れます。オンオフが明確で、自分の時間も増えました」

同僚医師の中には、育児のために週2日勤務にしている例もある。また、事務長が「何か困ったことはないか」と定期的に声をかける。クリニック全体で医師を大切にしているのだ。

近藤氏は、ワークライフバランスを保ちながら、全身で生殖医療の技術を吸収している。

WELCOME

転職先の病院からのメッセージ
まっとうな不妊治療の専門医を育てたい

生殖医療専門医制度の研修施設に認定

院長の浅田義正氏が浅田レディースクリニック(現浅田レディース勝川クリニック)を立ち上げて、約10年が過ぎた。その間、10年には浅田レディース名古屋駅前クリニックを立ち上げ、翌11年に日本生殖医学会生殖医療専門医制度の研修施設として認定された。生殖医療に携わる若手医師の育成に、力を入れている。

浅田氏は、1年半前に入職した近藤氏について、こう語る。「生殖医療を勉強したいという強い意志を持っているため、入職後はみるみる知識・技術を習得していきました。私の志を次世代に引き継いでくれる期待の人材です」

とはいえ、生殖医療はまだ新しい領域だ。若い産婦人科医の中で生殖医療を極めようと志す医師は決して多くはない。「最先端の技術に触れる機会が非常に少なく、情報量も十分ではありません。まっとうな生殖医療を行っている現場を見る機会もほとんどありませんから、知らなければ興味を持ってもらうこともできません」

若手医師が生殖医療を学ぶアカデミーを開講

そこで浅田氏は14年に「ドクターアカデミー浅田塾」を開講した。特に若手医師に対し、高度生殖医療の基礎から最新技術までを伝授するためだ。浅田レディース名古屋駅前クリニックでの講義と、一部ネット配信も行っている。「まっとうな不妊治療を志す医師を育てていきたい」と考えている。

浅田氏によると、日本の生殖医療が持つポテンシャルは大きい。「卵子の凍結技術は世界でもトップクラス。先進的な治療に用いる器具や薬品は、日本製のものが多い。当院の設備や技術は、世界のトップレベルと自負しています。私が積み上げてきた経験と知識、さらに志を引き継ぐ医師の入職を期待しています」

新しい領域で腕を磨き、患者の願いをかなえること。そこに意義を感じ、向上心のある医師なら、きっと満足する環境だ。

浅田 義正氏

浅田 義正
医療法人 医療法人 浅田レディースクリニック 院長
1982年名古屋大学医学部卒業。同大学産婦人科助手などを経て、93年米国最初の体外受精専門施設に留学。主に顕微授精(ICSI)の基礎的研究に携わる。95年、名古屋大学医学部附属病院分院にてICSIによる治療を開始。98年ナカジマクリニック・不妊センターを開設。2004年浅田レディースクリニック(現浅田レディース勝川クリニック)を開院。10年には浅田レディース名古屋駅前クリニックを開院した。11年、日本生殖医学会生殖医療専門医制度の研修施設として認定。

医療法人 浅田レディースクリニック

体外受精・顕微授精などの高度生殖医療を中心とした不妊治療を専門に行うクリニック。JR勝川駅すぐと、名古屋駅すぐの2拠点を持っている。「不妊治療を通じての幸福の実現」を目標に、スタッフ全員が患者の幸せを分かちあえるクリニックとして運営している。そのため、一般不妊から高度生殖医療まで対応可能なラボ(胚培養室)を充実させた。治療の質を高めるために、全症例完全個別スペース培養を導入している。その他、空調や照明なども、卵子や受精卵に優しい設備を整えている。14年に開講した「ドクターアカデミー浅田塾」は、生殖医療の基本から最新技術までを学ぶ場だ。若手医師を中心に、本気で生殖医療に携わりたい医師が受講している。

医療法人 浅田レディースクリニック

正式名称 医療法人 浅田レディースクリニック
所在地 (名古屋駅前)愛知県名古屋市中村区名駅4-6-17 名古屋ビルディング3F
(勝川)愛知県春日井市松新町1-4 ルネック5F
設立年月日 2004年4月
診療科目 婦人科(生殖医療・不妊治療)
病床数 なし
常勤医師数 10名
非常勤医師数 8名
外来患者数 105人(1日平均)
入院患者数 なし