おひさま会やまぐちクリニックを開業したのは、在宅医療が厚生労働省によって認められ、制度化された2006年。私はそれまで救急医療の医師として働いていたのですが、救命した人たちは何かしら障がいが残った状態で生活を続けなければならないケースが多く、そういった患者さんの退院後を支えたい、という気持ちで在宅療養支援診療所を立ち上げました。在宅医療は、患者さんの疾患によって区切られるものではありません。患者さんの体の問題点を挙げて整理し、その人の生活にとって何が大切かを考えながら優先順位をつけ、その中で最も効果があって患者さんの負担にならない治療を選んで実行する。在宅医療では必ずしも“治す”ことはできませんが、実はこの流れは救急医療と同じ。さらに、専門医と連携を取って知識を補いながら患者さんにできることをコーディネートするという部分も同じで、救急医療と在宅医療は両極端なようでとても似ているのです。だからこそ、疾患や重軽症に関わらず、在宅医療の依頼があればすべて引き受けます。
さらに、患者さんへのサービスを良いものにするには、職員の労働環境や組織内の関係性はとても重要。医師の生活スタイルや要望に合わせて環境を作っていくのが私のスタイルです。テクニカルスキルを磨くだけでなく、組織で働くために必要な心得や経営についての知識など、ノンテクニカルな部分を勉強する機会を全職員に対して設けています。