研修医期間を終えてから2年ほど、呼吸器外科の医師として大学病院や市中病院で働きました。外科なので、手術や化学療法、放射線療法といった集学的治療を主に行っていたのですが、終末期の患者さんと接する中で「疾患をかかえながら、普段どのように過ごされているのだろう?」と、生活背景を少しずつ意識するようになったのです。そこで興味を抱いたのが、在宅医療。おひさま会が在宅医療に力を入れていて兵庫県を中心に拠点を増やしていると聞き、山口理事長に連絡を取って現場を見学したのち、転職を決めました。
医療設備が整っていない場所での診療になりますので、医師個人の力を駆使し、視診や触診、聴診などから療養の方向性を導き出すのが我々の任務。治療にも制限があって病院同等にはできませんが、レントゲンやエコーなどの検査、在宅酸素療法や点滴といった処置や緩和ケアも行います。多岐にわたる患者さんを担当しているので、当初は薬を覚えるのも大変でしたね。それでも、地域の薬剤師さんがバックアップしてくださるので心強く、各科専門医の先生方ともこまめに連携を取ることで専門的な知識も徐々に身に着けていきました。