私が在宅診療に携わることになったきっかけは、母の闘病を在宅で支えたことでした。つらい時間ではありましたが、住み慣れた自宅だからこその幸せもたくさん感じることができました。正直、それまであまり認識していなかった分野でしたが、その良さを実感してから、医師としても興味がわいてきたのです。
当クリニックでは、2012年に名古屋の拠点で非常勤として働き始めましたが、すぐに常勤となり、翌年に埼玉の拠点を開業する際は院長を任されることになりました。開業に当たってはいろいろと不慣れなこともあったのですが、スタッフの支えもあり、診療に集中できる環境を確保できました。
在宅医療で診る患者には、神経難病やがん、慢性呼吸不全、精神疾患など、慢性疾患を中心として様々な病を抱えた方がいらっしゃいます。そのため、人工呼吸器管理やカニューレ交換、在宅酸素療法、緩和ケアなど、必要となる処置は多岐にわたります。実際の訪問を大まかに分けると、居宅に伺うケースと施設に伺うケースでは、やや施設の方が多いですね。診療時間は最低10分で、長くなると1時間ほど話を聞くことも。1日の訪問数は平均10件、最大30件程度ですが、緊急時は個別に対応しています。
2015年には埼玉の拠点が医療法人となったため、理事長としてスタッフや設備の充実を図ることも重要な仕事となりました。しかし、キャリアを積んで立場が変わっても、より多くの患者を笑顔にするために行動し続けることに変わりはありません。