大学病院や地方都市の基幹病院で働いていた頃は毎日が忙しく、週末も学会や勉強会のために外出していて家にいる時間がほとんどありませんでした。技術を磨いたり、知識を得たりする環境としては申し分ありませんでしたが、40歳を過ぎて体力的にも不安を感じはじめ、このまま仕事一色でいいのだろうか?退職したら自分には何が残るのだろうか?と考えるようになったのです。ちょうど子どもが進路を決める時期で家庭ときちんと向き合いたいという思いもあり、私生活とのバランスを取りながら働ける職場に、と当院への転職を決めました。
腎不全、腎炎・ネフローゼ症候群、高血圧や糖尿病による腎障害など、腎臓に関するすべての疾患を対象とした専門外来と入院患者さんの診療に加え、透析患者さんの管理が私の仕事です。今や成人の8人に1人が慢性腎臓病を患っていると言われていますが、そのわりに専門医は少なく、圧倒的に手が足りていない状況。3年前、私が転職してきたときには京都南部に腎臓内科の専門医がいませんでした。現在、当院の透析センターには100名以上の患者さんが通われているので、一人で管理するのは大変。シャント手術は同グループの病院や地域の病院の先生方にお願いし、院内のリハビリ施設で他科の先生に経過をみてもらうなど、周りと連携を取って一人で負担を抱えないように心がけています。専門医としてのジレンマはありますが、患者さんをより良い方向へ導くためには役割分担も必要なのだとここへ来て学びました。