泌尿器科と腎不全外科を専門としていた私は、若手の頃から透析患者にかかわることが多くありました。中でも末期腎不全に至った高齢者と接するうち、「がんでない分野にも緩和ケアが必要なのでは?」という問題意識が起こってきました。そこで、日本における緩和ケアの草分け的存在であった医療法人東札幌病院で研修を受け、さらにニューヨークカルバリー病院で緩和ケアの最先端を学びました。帰国後はすぐ当院に入職し、人工透析科および緩和ケア科の医師として診療に当たっています。
腎不全領域でもがん領域でも、もう回復は見込めない状態に至ってしまった患者をケアする役割はとても重要です。しかし、特に透析患者の緩和ケアについては、いまだ広く知られているとは言いがたい状況ですね。これから関心が高まってくることを期待しています。
末期になればなるほど、神経障害や糖尿病性の痛みが生じるうえ、呼吸困難や精神関連症状が出ることもあります。漠然と透析を続ければいいというのではなく、苦痛症状を取り除くことを重視し、場合によっては透析を見合わせることもあります。透析を中止すれば1~2週間で患者さんが亡くなるケースが多いため、いかに安らかに看取るかという点に焦点が絞られます。ご家族の精神的ケアも含めて、QOLを重視した全人的な対応が求められる仕事です。