病理診断科の年収事情

病理診断科は、採取した検体を調べて疾患の有無や病型などを診断(病理診断)することで適切な治療につなげる役割を果たす診療科です。手術中に速やかに腫瘍などの組織型を知るための迅速病理診断や、亡くなった方の死因などを調べるための病理解剖も病理医が担っています。患者さんと直に接することがほとんどない、基礎と臨床をつなぐ役回りだといえます。近年、病理診断科はIT化の波を大きく受けており、病理医不足を補うための遠隔病理診断が広まったり、病理診断を支援するAIの導入が進んだりしています。臨床に出ない病理医はワークライフバランスを確保しやすい反面、年収水準が上がりにくいといわれていますが、実際のところはどうなのでしょうか?

病理診断科で働く医師の年収事情を紹介

年代毎の年収事情――幅広い年収帯にばらけている

全体的に「1,500万円以上~2,000万円未満」をピークとして、幅広い年収帯にばらけている傾向です。30代・40代では「1,000万円未満」という回答もみられます。データ上は必ずしも明らかではありませんが、病理診断は経験が物を言う部分も大きく、病理医として年齢を重ねるほど報酬面で評価されやすいことは間違いないでしょう。

地域別の年収事情(常勤)――「1,500万円以上~2,000万円未満」は関東に集中

「1,500万円以上~2,000万円未満」の層は関東に集中しており、その他のエリアでは「1,000万円未満」から「1,000万円以上~1,500万円未満」までにとどまっています。病理医は人数が少ないため、地方を視野に入れればより高年収が狙えるかと思いきや、データ上はそうなってはいません。むしろ、病院数が多い都市部での需要が高いようです。

医療施設毎の年収事情(常勤)――種類や規模による年収水準の差はなし

全体的に「1,500万円以上~2,000万円未満」をピークとして、幅広い年収帯にばらけています。施設の種類や規模による年収水準の差はみられません。医師の年収水準としてはさほど高いとはいえないような状況であり、ワークライフバランス、社会貢献性、使命感など、年収とは別のところにも価値を見出してキャリア選択する方が多いのかもしれません。

性別毎の年収事情(常勤)――男性の年収水準は平均並みか

男性の場合、「1,000万円以上~1,500万円未満」の割合が29%、「1,500万円以上~2,000万円未満」の割合が57%となっており、他の診療科に比べて低すぎるとまではいえない程度の年収水準です。一方、女性の場合は、「1,000万円未満」と「1,000万円以上~1,500万円未満」が50%ずつとなっています。

病理診断科で働く医師の希望年収(常勤)

病理診断科で働く医師の希望年収は、「1,000万円以上~1,500万円未満」が最も多く(54%)、次いで「1,500万円以上~2,000万円未満」(30%)、「1,000万円未満」(14%)の順となっています。
年収1,000万円台の前半を希望する割合が最も多いということで、控えめな回答状況だといえるでしょう。普段は縁の下の力持ち的存在として、あまり脚光を浴びることが多くはない病理医ですが、正確な診断なくして適切な治療は行えません。病理医の人材不足が懸念される中、ぜひとも待遇面の向上を図る機運が盛り上がってほしいものです。


※自社調べ

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