開業医の事例紹介

開業医の年収事情

平成21年6月の厚生労働省の「医療実態経済報告」の資料によると、病院勤務医の年収が1,479万円なのに対して、法人を運営する開業医の年収は2,530万円と約1.7倍です。個人事業主の開業医も、収支差額では2,458万円と同水準です。しかし、収支差額には診療所の開業に関わる借入金の返済費用、診療所の改修や建替えに備えた積立などの経営資金が含まれます。病気などによる休業時の所得補償の費用、老後のための退職金の資金といった勤務医であれば、病院側が用意する費用も賄う必要があります。これらを考慮すると、個人事業主の開業医の実質的な収入は、病院勤務医と大差ない可能性もあるのです。

開業資金として必要となるのは、主に建物の建設費用あるいは内装工事費、医療機器の導入費用です。都市部では医療モールなどにテナントとして入居することで、毎月の賃料が運転資金として掛かるものの、初期投資費用は抑えられる方法もあります。一方、地方では賃貸物件が見つけにくく、建物の建築から行う場合も多く、開業資金が高額になりがちです。建物の建設では構造や規模にもよりますが、最低でも3,000万円程度は必要となります。テナントとして開業する場合でも、内装工事費に2,000万円程度要します。
また、医療機器に掛かる費用は、診療科目によって必要となる医療機器が異なるため、皮膚科では1,500万円程度ですが、内科で2,000万円、整形外科では3,000万円程度です。また、最新の医療機器を備えるか、最低限の設備からスタートするかといった考え方にもより異なります。 電子カルテの導入費用は、診療科目に関わらず共通で300万円ほどです。診療科目による違いは必要とされる画像診断装置の違いによるところが大きいです。
全部合わせると、例えば整形外科の場合、内装工事費と医療機器の導入費用を合わせると5,000万円にもなります。多くを金融機関からの借入によって賄っています。開業医となることのメリットは、うまく経営すれば、収入が上がる可能性があることや、定年にとらわれずに引退する年齢を自由に決めて働けることです。しかし、集患がうまくいかず、収入が安定しない場合、借入金返済や運転資金などで苦労する場合もあります。そのため、開業資金に加えて、経営が軌道に乗るまでの運営資金や生活費を準備しておくことも必要です。開業におけるリスクを抑えるためには、市場調査など充分なリサーチのもと、開業準備を進めていくことが大切です。

開業医に聞くメリット・デメリット

年収例1<40代・福岡県・精神科>

年代 年収
研修医時代 600万円未満
20代 600万円~800万円未満
40代 1,000万円~1,200万円未満
Q1.開業された際の年齢を教えてください
38歳
Q2.開業される前後で、年収に変化はありましたか?
減った
Q3.開業される前後で、年収はどれくらい変化しましたか?
1000万円~1500万円
Q4.開業される際にどれくらい借金をされましたか?
2000万円~5000万円
Q5.開業から現在に至るまでの年収の満足度
年収は半減したが、自分で働いた分の収入が入り明確なので、勤務医の時のような葛藤がない。
Q6.どのように年収を上げていく想定ですか?
患者さんに来てもらう、来てもらうことにこだわらず集患のチャンスがあれば収入に直接結びつかなくても挑戦する。

年収例2<40代・兵庫県・内科(専門科目含む)>

年代 年収
研修医時代 600万円未満
20代 1,000万円~1,200万円未満
40代 2,000万円以上
Q1.開業された際の年齢を教えてください
45歳
Q2.開業される前後で、年収に変化はありましたか?
減った
Q3.開業される前後で、年収はどれくらい変化しましたか?
500万円~1000万円
Q4.開業される際にどれくらい借金をされましたか?
5000万円~1億円
Q5.開業から現在に至るまでの年収の満足度
まだ開業丸1年で事業としての安定に達していない。あと1年くらいでまずまずになるのではないかと予想している。
Q6.どのように年収を上げていく想定ですか?
増患対策、治験参加

年収例3<50代・北海道・精神科>

年代 年収
研修医時代 800万円~1,000万円未満
20代 800万円~1,000万円未満
40代 2,000万円以上
50代 2,000万円以上
Q1.開業された際の年齢を教えてください
35歳
Q2.開業される前後で、年収に変化はありましたか?
増えた
Q3.開業される前後で、年収はどれくらい変化しましたか?
500万円~1000万円
Q4.開業される際にどれくらい借金をされましたか?
1億5000万円~2億円
Q5.開業から現在に至るまでの年収の満足度
年収は増えたが開業費用の借金返済で大変でしたが、返済後は満足で年収が変化しなくても満足度が違います。
Q6.どのように年収を上げていく想定ですか?
患者数が増加で

開業医の年収満足度は概ね高いと想定されます。年収額自体は開業後に下がるケースも多くみうけられますが、働き方とのバランスや精神的な部分での満足度が勝る場合が多いようです。
開業時点では資金調達のために借金をする形になりまますが、返済後ある程度の期間が経過すると安定し始め、それに応じて満足度も上がっていく傾向にあると想定されます。
将来的なキャリアプランは患者数の増加を上げる医師が多い結果となっています。