漢方薬を使いたいと思っても、伝統医学的診断法に戸惑いを感じる人は少なくない。静仁会静内病院院長・井齋偉矢氏が提唱する「サイエンス漢方処方」は、現代医学の枠組みの中で漢方薬の効果を科学的に捉えることで、西洋薬と変わらぬ感覚で漢方薬を使いこなそうというもの。西洋薬と漢方薬の使い分けや併用によって、急性期疾患をより迅速かつ効果的に治療する方法をお伝えする。

西洋薬と漢方薬の違いを知り
上手に使い分けて
急性期疾患を迅速に治す

西洋薬が苦手とする部分を漢方薬は補って余りある

漢方薬を処方する際に、四診と呼ばれる診察方法や虚実・寒熱など独自の診断法「証」になじめず、断念した経験はないだろうか。

井齋氏は、「中国の伝統医学を起源とする漢方治療の歴史をひも解くと、観念的な東洋思想や『証』は漢方薬の処方を論理的に説明するために後付けされたものであることがわかります。漢方薬の適応をあらわす『証』は、視診や問診などの現代医学の診察より得られた『病態を含む診断名』に通ずるため、臨床医であれば問題なく処方できるはずです」と明言する。「サイエンス漢方処方」とは、薬理学やEBMに慣れ親しんだ西洋医が、「気軽に」「納得して」「効果的かつ安全に」漢方薬を処方できるようにと考案された新たな概念だ。

そもそも、「西洋薬は急性期、漢方薬は慢性期に用いる薬、との認識は大きな誤り」だという。漢方薬がおおむね現在のような形になったのは1800年程前だが、当時、漢方薬が対象としていたのは急性疾患。「この事実は漢方治療の原典にあたる『傷寒論』にも明記されています」(井齋氏)。ただ、漢方薬と西洋薬とでは創薬のコンセプトが異なるため、効き方には大きな違いがある。

西洋薬に含まれる成分は多くの場合単一で、抗菌薬や抗がん剤に代表されるように、からだに害を及ぼすものを攻撃して退治する作用を持つ。

「標的が明確で、やるべきことが単純明快であればあるほど高い効果を示すので、降圧薬や抗血栓薬のように、動脈の詰まりを防いだり詰まりを通す、などは西洋薬の独壇場です」。それゆえ、毒性と背中合わせであることは避けられない。このような西洋薬の特徴を踏まえれば、「どうもすっきり治らない」「風邪は治ったが、おなかの調子が悪くなった」のも理解できる。攻撃性と速効性に優れる西洋薬だが、その結果起こる炎症への考慮は足りないのが現状だからだ。とはいえ、強力に炎症を抑える西洋薬(副腎皮質ホルモンやNSAIDs)を用いれば、今度は免疫力を著しく低下させてしまう。

一方、複数の生薬の組み合わせから成る漢方薬は、各成分はごく少量だが、すべてが一定の方向に作用して相乗効果をもたらす。と同時に、一成分の暴走を抑えることで、副作用も軽減・相殺できる。井齋氏は漢方薬を「疾患や症状の原因を攻撃するのではなく、人間のからだを健全に動かすシステム(おもに免疫機構)を正常化するよう刺激を与えることで、低下した機能を『持ち上げる』手助けをしている」と説明する。

漢方薬の多くは炎症を抑え、からだに備わる免疫力の強化にはたらく。つまり、抗菌薬など攻撃型の西洋薬を用いる場合にも、漢方薬を併用することによって、炎症反応の速やかな鎮静化が期待できるのだ。

多彩な作用で急性期に役立つ漢方薬BEST5

井齋 偉矢
医療法人静仁会 静仁会静内病院 院長、総合診療科
1975年北海道大学医学部卒業、同大第1外科入局、札幌南一条病院外科、JA北海道厚生連鵡川厚生病院外科、新冠町国民健康保険病院外科(漢方外来開設)を経て、2007年より現職。12年に『サイエンス漢方処方研究会』を設立し理事長を務める。日本東洋医学会認定専門医・指導医、日本外科学会専門医。

井齋 偉矢氏

「免疫・循環・水・熱」を間接制御
漢方薬を科学的に捉えることで
自在に活用する

身体機能制御システムを正常化する漢方薬

漢方薬は、以下の4つを柱として、人体の制御システムに刺激を与えることにより、その正常化をはかっているというのが「サイエンス漢方処方」の考え方だ。井齋氏はその詳細を以下のように説明する。

一つ目は「免疫」。免疫システムは、外敵を見つければ攻撃し、その結果炎症を起こすが、過剰防衛になる前に終息に向かうようプログラムされている。漢方薬はこの一連のしくみが正常に機能し、炎症が収まるようはたらきかける。二つ目は「循環」で、漢方薬はもっぱら末梢の担当だ。心臓から送り出された血液が全身を巡って心臓に戻る過程で、おもに毛細血管の筋肉を弛緩させる物質を発生させることで、循環促進をはかる。三つ目は「水の調整」。細胞内への水の取りくみ口であるアクアポリンを閉じたり、開放したりすることで細胞内の水分量を調節する。そして、四つ目が「からだの熱」だ。深部体温が37度に保たれることで、からだのさまざまな機能が正常にはたらくが、その熱は、褐色脂肪細胞が作り出すものと考えられている。「骨格筋の小刻みな収縮による発熱よりはるかに効率のよい、この『非震え熱産生』を活性化するホルモンの産生を、ある種の漢方薬が増やすと考えられます」(井齋氏)。

急性期疾患では、からだのはたらきを円滑に進める4つのしくみに異常が生じるため、攻撃型の西洋薬だけでは治癒に導けない場合も。そんなときに漢方薬が力を発揮する。

なお、漢方薬は、食前または食間に1日3回服用するのが基本だが、井齋氏は「急性期の症状が強いときには、通常の数倍量を服用する」ことを、効果的に使うポイントとして挙げる。具体的には、最初の1~2回は2~3倍量、重症ならば5倍量が望ましい。日本の漢方薬の処方用量は中国の3分の1から5分の1なので、増量によって副作用が増強される心配はないのだという。

おもな急性期疾患に有用な漢方薬の活用法を紹介する。

明日から使える症状別・急性期の漢方処方18

  • 感冒①には
    桂麻各半湯

    【病態】
    炎症の程度は軽度から中等度、水のような薄い鼻汁、熱っぽい感じがする(熱感)、あから顔、皮膚のかゆみなどをともなうことがある
    【処方例】
    桂麻各半湯1回1包(1.5g)1日3回×3日分
    【経過】
    1日以内に効果があらわれる
    【解説】
    桂麻各半湯は、水様性鼻汁を主症状とする初期から、熱感をともなう軽い風邪や、インフルエンザなどの重症の風邪からの回復期にも使える。普段、ある程度元気な人の常備薬としても人気がある。非常に使用範囲が広い。*エキス剤が手に入らないときには、桂枝湯1包(2.5g)と麻黄湯1包(2.5g)を混ぜて分3にする
  • 感冒②には
    麻黄附子細辛湯

    【病態】
    炎症の程度は軽度から中等度、免疫能低下、とにかく冷えて冷えてという状態。みるからに虚弱でない人においては、脈をとって「細くて沈んだ脈」であることを確認するとよい。中高年のアレルギーにも使える
    【処方例】
    麻黄附子細辛湯1包(2.5g)または2カプセル 1日3回×4日分
    【経過】
    まず身体が急速に温まり、次いで諸症状が軽快していく
    【解説】
    麻黄附子細辛湯は、深部体温の上昇により免疫能を回復させるため、もともと平熱の低い人に有効。手強い冷え症には唯一の選択肢。中高年以前のアレルギー性鼻炎には小青竜湯だが、中高年になると麻黄附子細辛湯の方が効
  • 感冒③には
    麻黄湯

    【病態】
    重度、免疫能やや低下、高熱・無汗・悪寒・頭痛・関節痛という典型的な重い風邪の第一選択。元気な小児のインフルエンザ。乳児の鼻閉では上記の症状がなくても使える
    【処方例】
    麻黄湯1包(2.5g)頓服3回分→実際には2~4時間毎に発汗するまで服用する
    【経過】
    responderでは、服用後1時間以内に多量の発汗がみられ、解熱するとともに諸症状が軽快する
    【解説】
    麻黄湯は発汗を促し、初期免疫能を迅速に回復させる *ただし、烈しい悪寒と全身の痛みをともなう場合には、越婢加朮湯1包(2.5g)1日3回を併用する←これは成人とぐったりした小児のインフルエンザの第一選択である
  • 片頭痛には
    呉茱萸湯

    【病態】
    三叉神経痛に始まり、頭蓋内の血管に炎症が起こることで、血管が急激に拡張して、拍動性の激しい頭痛をきたす。羞明は多くみられる併発症状であり、その他にめまいや吐き気をともなうこともある
    【処方例】
    呉茱萸湯2包(5.0g)を頓服→一度に通常の2倍量飲むことがポイント
    【経過】
    服用後15~30分で軽快する
    【解説】
    トリプタン系薬剤は発作が本格化してからでは有効率が低い *トリプタン系薬剤も呉茱萸湯も、月経の初日の前後2日以内に起こる月経片頭痛やそれ以外の時期にも起こる月経関連片頭痛には無効なので、その場合、川芎茶調散2包(5.0g)を頓服すると30〜60分で軽快する
  • 市中(感染性)肺炎には
    小柴胡湯

    【病態】
    起炎菌が肺で増殖することによって、肺で激しい急性の炎症が起こる。咳嗽や呼吸困難などの肺炎の愁訴は、起炎菌そのものではなく、付随する炎症によるものである
    【処方例】
    小柴胡湯2包(5.0g)1日6回×7日分
    【経過】
    炎症がある程度治まったら、柴胡桂枝湯1包(2.5g)を1日3回、7日間服用。通常1週間以内に軽快する
    【解説】
    抗菌薬の治療と並行して漢方薬を服用。 抗菌薬で細菌は制御できても、すでに起こっている炎症には介入できない。小柴胡湯は、肝・上部消化管、肺・気管支、脳・髄膜の炎症を迅速に鎮静化する(殊に呼吸器の高度な炎症に著効)
  • 咳嗽には
    竹筎温胆湯/滋陰降火湯

    【病態】
    ①痰のからんだ咳をともなう肺・気管支の炎症 ②乾いた咳をともなう肺・気管支の炎症
    【処方例】
    ①竹筎温胆湯1包(2.5g)②滋陰降火湯1包(2.5g)①②とも1日3回×7日分→症状が強い際は飲み始めに2~3倍量を服用
    【経過】
    responderは1服飲んだらそれなりの応答がある。普通は1週間以内に軽快する
    【解説】
    滋陰降火湯は、漢方薬の中でもっとも効率よく乾燥状態を潤す応答を引き出す。竹筎温胆湯は湿性咳嗽の第一選択薬である。多くの症例が抗菌薬との併用になるが、肺・気管支の炎症を急速に鎮静化することによって、咳や痰を抑える
  • 花粉症、アレルギー性鼻炎には
    小青竜湯

    【病態】
    軽度~中等度の花粉症や若い人のアレルギー性鼻炎
    【処方例】
    小青竜湯1包(3.0g)または6錠1日3回
    【経過】
    効果の発現は迅速である
    【解説】
    アレルギー性鼻炎にはモーニングアタックといって、起床時の症状が最悪であるという性質がある。そのため、1服目は起床してすぐに服用する。効果の持続時間が短いので、2服目は効果が切れかかってきたら、間を置かずにすかさず飲む必要がある。なかなか咳嗽が止まらないときに、アレルギー性気管支炎の可能性を考えて投与すると1服で止まることがある
  • 口腔粘膜炎には
    半夏瀉心湯

    【病態】
    抗がん剤や頭頸部への放射線照射によって生じた、経口摂取が困難なまでに高度な口腔粘膜炎
    【処方例】
    半夏瀉心湯1包(2.5g)1日3回×7日分→50ミリリットルの水を加え、レンジで温めて溶かし、一口含んで5秒間口腔内に行き渡らせてから飲み込む(含み飲み)
    【経過】
    平均5~6日で改善する
    【解説】
    半夏瀉心湯は粘膜保護ならびに抗炎症作用を有するため、急性胃腸炎や消化管機能異常などにも有効である。西洋医学的な対処法は含嗽薬と鎮痛薬しかないが、いずれもほとんど効果がないに等しい
  • パニック発作には
    苓桂朮甘湯+甘麦大棗湯

    【病態】
    漢方においても、奔豚気病(子豚が胸腹部を走り回る感覚)といって、現代医学でパニック症にあたる病態の認識はあった
    【処方例】
    苓桂朮甘湯+甘麦大棗湯各1包(2.5g)屯服または1日3回×14日分
    【経過】
    頓服の場合は、服用後1時間くらいで症状が緩和される
    【解説】
    本来は苓桂甘棗湯を用いるのだが、医療用エキス剤がない(一般用については小太郎漢方製薬が発売している)ため、苓桂朮甘湯と甘麦大棗湯を合わせることで、苓桂甘棗湯に近い処方(近似処方)を作る
  • 脳梗塞(急性期)には
    小柴胡湯+五苓散

    【病態】
    脳梗塞を発症すると炎症と脳浮腫は必発
    【処方例】
    小柴胡湯+五苓散各2包(5.0g)1日6回×7日分→実際には4時間毎に服用し、7日間で飲み切る
    【経過】
    1週間以内に炎症が治まり、脳浮腫が改善する
    【解説】
    血栓溶解療法や抗凝固療法により血栓には対応できるが、併発する炎症や浮腫の鎮静化はそれぞれ小柴胡湯と五苓散が得意とするところ。小柴胡湯は、肝胆道系・呼吸器系のほかに脳という臓器特異性があり、それらの部位の炎症を速やかに消退させる。五苓散は、脳細胞に発現する水の出入口であるアクアポリン4を、脳浮腫時には閉じることにより、浮腫を速やかに消退させ
  • 術後せん妄には
    抑肝散

    【病態】
    手術の1~3日後に錯覚や幻覚を訴えたり、錯乱状態になったりする症候で、認知機能の低下した高齢者に起こりやすい
    【処方例】
    抑肝散2包(5.0g)×10回分→20ミリリットルの水に溶いて、経口摂取または胃管注入する
    【経過】
    多くの症例では、鎮痛だけで鎮静を必要としない
    【解説】
    術前1週間前からの予防的投与が効果的だが、術後から投与を開始しても効果は迅速に発現する。抑肝散は気持ちの昂りを抑える効果が期待できるため、認知症の周辺症状(BPSD)の改善にも有用である。セロトニンの分泌を亢進させ、グルタミン酸を抑制するのが作用機序であ
  • 過敏性腸症候群(下痢型)には
    半夏瀉心湯

    【病態】
    腸管に器質的変化はないが、腸の運動機能障害により、下痢型では、容易にトイレに行けない状況になると突然、便意を催す
    【処方例】
    半夏瀉心湯1包(2.5g) 1日3回×14日分
    【経過】
    服用開始から2~3日で普通便になり、1~2週間もすれば症状が消失する
    【解説】
    半夏瀉心湯は、第一義的には急性胃腸炎や炎症性腸疾患など、消化管に烈しい炎症がある症例にも有効であるが、器質的変化のない、腸管の心身症的な症状を示す患者さんも応答する。responderは、「人生が変わった」という感想を持つほど、顕著な効果があらわれる
  • 急性ウイルス性胃腸炎には(ノロウイルスなど)
    桂枝人参湯

    【病態】
    激しい水様性下痢と腹痛、嘔気・嘔吐、消化器症状にともなう軽度の頭痛
    【処方例】
    桂枝人参湯1包(2.5g)×5回分→初回2包(5.0g)、以降は2時間毎に1包(2.5g)ずつ、症状が治まるまで服用を継続する
    【経過】
    多くの場合、初回服用後12時間以内に 症状が消失する
    【解説】
    腸管の激しい炎症に対する抗炎症効果と腸管への多量の水分シフトの抑制により下痢を鎮静化し、併発する頭痛や発熱も抑える。*ノロウイルスなどのエンテロウイルス感染症では、もともとの体質や腸管機能に関係なく、出現する症状は同じなので、使用する漢方薬も同じでよい
  • 打撲傷には
    通導散

    【病態】
    皮下出血と腫れにともなう強い痛み
    【処方例】
    通導散1包(2.5g)1日3回×7日分*便秘があれば通導散のみで、便秘がなければ通導散を2日間服用後、桂枝茯苓丸を5日間服用
    【経過】
    2~3日で腫れも内出血もほとんど治る
    【解説】
    通導散は骨盤内及び皮下組織の微小循環障害を強力に改善する。鎮痛効果も高いので、非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)などの併用は不要である。このほかに「月経異常」「更年期障害」などにも効果がある。打撲傷は、炎症よりも局所の微小循環障害の要素が大きいので、通導散が最善の選択である
  • 急性筋・筋膜痛症(ぎっくり腰)には
    芍薬甘草湯

    【病態】
    腰部の筋肉と筋膜が、突然痙攣性に収縮するので、激痛をきたす
    【処方例】
    芍薬甘草湯1包(2.5g)×10回分→2時間毎に1包(2.5g)ずつ、痛みが軽減するまで服用する→歩行可能になったら服用間隔を徐々に延ばし、完治したら服用を終了する
    【経過】
    鍼灸の併用も有効であり、ほとんどの症例で翌日には歩行可能になる
    【解説】
    骨格筋でも平滑筋でも、筋肉や筋膜が痙攣性に収縮して、強烈な痛みをともなう病態には、すべからく短時間で効果をあらわす。月経痛、尿管結石、胃痙攣などにも有効。ぎっくり腰では平均5〜6分で治り、治った後も筋肉痛を引きずらない
  • 筋肉痛(急性筋炎)には
    麻杏薏甘湯

    【病態】
    筋肉というシステムに急性炎症が生じた状態
    【処方例】
    麻杏薏甘湯1包(2.5g)1日3回、14日分→慢性化したら薏苡仁湯に処方を変更
    【経過】
    服用を開始して2~3日で軽快する
    【解説】
    麻杏薏甘湯は、部位特異性はなく、筋肉系というシステム特異性である。『急性の』筋肉系(筋肉、筋膜、靭帯、腱)の痛みに著効し、システム特異的な抗炎症作用を発揮する。痛みがかなり強いときには、芍薬甘草湯を併用するとよい。寒冷や湿気で疼痛が増強する症例においては、有効率が高いとされている
  • 嵌頓痔核には
    芍薬甘草湯→桂枝茯苓丸

    【病態】
    肛門外に脱出した内痔核が肛門括約筋の締め付けにより、うっ血→浮腫→血栓形成に至り、着座や排便もできないほどの激しい疼痛をきたす痔核の急性発作
    【処方例】
    ①芍薬甘草湯2包(5.0g)②還納後、桂枝茯苓丸1包(2.5g)を1日3回×7日間→①は水に溶いて電子レンジで20秒間温め、ガーゼに浸して患部に15分間温湿布する
    【経過】
    ①の処置によって、飛び出した痔核を肛門内に戻せるようになり、激烈な痛みから解放される
    【解説】
    ①により肛門括約筋の緊張を解いて、還納を促し、②により肛門周辺の微小循環障害の改善をはかり、消炎効果をもたらす
  • 尿管結石には
    芍薬甘草湯→猪苓湯

    【病態】
    尿管内で動き回る小さな結石が尿管の痙攣を誘発して、七転八倒する激痛をきたす
    【処方例】
    ①芍薬甘草湯1包(2.0g)を1日5回→②猪苓湯1包(2.0g)を1日3回*芍薬甘草湯は通常より増量するのがポイント
    【解説】
    ①で尿管の痙攣を鎮め、②で石を洗い流す。芍薬甘草湯には尿管壁の平滑筋の痙攣を迅速に鎮める効果がある。猪苓湯は、一般的には軽症の膀胱炎に用い、細菌の洗い流し効果を発揮する。この洗い流し効果が、結石についても洗い流すようにはたらく