今後の課題は?さらに求められる役割は?令和を進む かかりつけ医のあり方

超高齢社会で増加が見込まれる、複数疾患を併せ持ち、さまざまな障害や不調を抱える人々にとって身近な存在であり、地域包括ケアシステムの中心的な役割を果たす“かかりつけ医”。現代社会において、また今後一層高齢化が進展するなかで“かかりつけ医”に求められることとは何か。さまざまな立場や環境で、日々その課題に向き合っておられる方々に、これからの時代に必要とされる“かかりつけ医のあり方”について聞いた。

  • 総論

全人的で継続的な診療を基本にし、
身近で、最新知識を持ち、専門家への
橋渡しが適切にできることが理想

公益社団法人 日本医師会
常任理事
釜萢 敏
1978年日本医科大学卒、同大付属第一病院小児科入局。80年国立東静病院小児科、81年日本医科大学付属第一病院小児科勤務を経て、84年日本医科大学大学院修了。88年に小泉小児科医院(高崎市)を開業し、現在に至る。97年高崎市医師会理事、2001年高崎市医師会副会長、05年高崎市医師会会長、11年群馬県医師会参与、14年6月より現職(地域医療、医療関係職種、感染症危機管理対策・予防接種担当)。18年11月藍綬褒章受章。

釜萢 敏氏 写真

“最新知識に裏付けられた
信頼を得る”ために学びを継続

2020年度の診療報酬改定では、前回に引き続き、「患者・国民にとって身近であって、安心・安全で質の高い医療の実現」に向けて、さらなる“かかりつけ医機能に係る評価の充実”が図られる(図表1)。

かかりつけ医については、13年8月に日本医師会と四病院団体協議会の合同提言『医療提供体制のあり方』のなかで、“なんでも相談できて、最新の医療情報を熟知し、必要に応じて専門家を紹介できる”ことや“地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する”医師と定義されている(図表2)。

日本医師会常任理事の釜萢敏氏は、「年齢を重ねるとさまざまな不調があらわれ、複数の疾患を併せ持つ人も増えてくる。それらの相談窓口となり、本人のみならず家族や周辺事情も踏まえて患者さんを全人的に捉え、継続的にかかわることのできる“かかりつけ医”の存在は、高齢社会が進むなか、地域医療のなかで今後さらに重要性が増してくるでしょう」と語る。

日本医師会では16年4月より、地域住民から信頼される「かかりつけ医機能」(図表3)のあるべき姿を評価し、その能力の維持・向上を目的とした『日医かかりつけ医機能研修制度』を開始しており、毎年約1万人が受講している。

研修は3つのステップから成る。

まず、「基本研修」として日医の生涯教育制度に則り、規定の単位・コードを取得して『日医生涯教育認定証』を受ける。次なる「応用研修」では、日本医師会や都道府県・郡市区医師会等が実施する研修を受講して、既定の単位を取得する。このうち、年度ごとに内容の替わる日本医師会中央研修では、たとえば認知症への対応やフレイル予防、感染対策、在宅医療・緩和医療など、時代に合った“是非身につけたい”テーマが採り上げられている。さらに「実地研修」では、学校医や休日・夜間診療への従事、市民向けの講演活動など、社会的な保健・医療活動の実践が求められる。以上の要件を満たすと、修了証書または認定証が授与されるしくみだ(図表4)。

これらの研修を通して、かかりつけ医は、少子高齢社会で必須とされる知識や技術を身につけ、診療報酬上の評価に値するだけの質を維持し、かつ住民の期待に応えて地域医療に貢献することを目指す。日本医師会は今後も本制度を発展・継続させることで、かかりつけ医の質向上に取り組んでいく構えだ。

医師充足という近未来に向け
必要とされる医師像を目指す

かかりつけ医に求められるのは、「“これが必要だろう”と自身の考えを押し付けるのではなく、相手が“何を求めているのか”をしっかりと見極める姿勢」だと釜萢氏はいう。また、「高齢者は人が変わるとストレスに感じるため、できるだけ長期的に診療を担当できる体制が望ましい」とも考えている。

とはいえ、患者・家族が抱える問題のすべてを医師一人で解決することは不可能に近い。

「そのための多職種連携であり、チームの力を総動員することで“最良”を探っていく必要があります。医師は自身の想いや信念を大切にしながらも、まずは周りが意見やアイディアを出しやすい雰囲気を作ること。それらにきちんと耳を傾け、意見を調整して、実行に移す能力が求められています」(釜萢氏)

高齢化の進展で、かかりつけ医の負担が増すことは必至だ。釜萢氏は、「医師の健康を損なう働き方はあってはならない」としたうえで、「負担軽減の取り組みが医療提供体制に及ぼす影響を慎重に見極めながら進めていくべき」との考えを示している。

「医師の需給を考えるうえでの大きな目安が“22年以降の医学部定員”の決定です。実は、必要医師数の算定基準となる36年よりも前に需給が拮抗することが予測されています。医師数充足という近未来を見通すと、“必要とされる医師像”に適応できないと困難な時代が訪れると言わざるを得ません。患者さんの期待に応えるために医師は全力で努力をし、医療の提供のために尽くさなければならないと考えています」(釜萢氏)

図表1● 令和2年度診療報酬改定におけるかかりつけ医評価の充実
出典:厚生労働省「令和2年度診療報酬改定の概要」(令和2年3月5日版)より
図表2● かかりつけ医の定義

「かかりつけ医」とは、なんでも相談できる上、最新の医療情報を熟知して、必要なときには専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師。

出典:「医療提供体制のあり方」日本医師会・四病院団体協議会合同提言(平成25年8月8日)より抜粋
図表3● かかりつけ医の機能
  • 患者中心の医療の実践
  • 継続性を重視した医療の実践
  • チーム医療、多職種連携の実践
  • 社会的な保健・医療・介護・福祉活動の実践
  • 地域の特性に応じた医療の実践
  • 在宅医療の実践
出典:日本医師会提供資料より抜粋
図表4● 日医かかりつけ医研修制度

【目的】 今後のさらなる少子高齢社会を見据え、地域住民から信頼される「かかりつけ医機能」のあるべき姿を評価し、その能力を維持・向上するための研修を実施する。

【実施主体】 本研修制度の実施を希望する都道府県医師会   平成28年4月1日より実施

【研修内容】

出典:日本医師会提供資料より抜粋
  • 地域密着のクリニックより

多職種連携と総合診療医によるチーム医療が、
〝病院から安心して送り出せる〟地域医療を支える

医療法人 明医研
理事長
中根晴幸
1972年慶應義塾大学医学部卒、同大研修医を経て、フランス共和国政府給費留学生としてINSERM国立研究所に留学。帰国後、81年浦和(現さいたま)市立病院内科医長、慶應義塾大学医学部客員講師等を経て、90年より浦和市立病院の病診連携事業に従事し、92年よりさくらそう病棟(地域医療支援病棟)管理医師を務める。95年医療法人明医研を設立し、ハーモニークリニック院長に就任。2000年にはデュエット内科クリニックを開設し、現在に至る。

中根晴幸氏 写真

多職種地域連携を核に、
外来と訪問診療を一体的に提供

明医研は、埼玉県さいたま市南部でハーモニークリニックとデュエット内科クリニックの2つの診療所と3つの訪問看護ステーション、ヘルパーステーション、定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業所を展開する医療法人である。理事長の中根晴幸氏が、浦和(現さいたま)市立病院で地域医療支援病棟の開設・管理に従事していた際に、“病院から安心して送り出せる”在宅医療の受け皿の必要性を痛感し、自らその一翼を担おうと、1995年に24時間対応の訪問看護ステーションを併設する診療所を開いたのが始まりだ。

その後20数年にわたり「いかに地域のニーズに応えるか」を模索し続け、多職種地域連携を核に外来と訪問診療を一体的に提供する体制を整えていった(図表5)。

「徐々に優秀な若手が集まってくれて、いま、互いに良い効果を与えあってくれている。誠にありがたいことです」と中根氏のコメントはあくまでも謙虚。

在宅の入口である外来を重視して、
総合診療医がチームで診る

“総合診療医によるチーム診療”が同院の特徴の一つ。6名の常勤医を軸にチームが組まれ、2つのクリニックの外来診療と訪問診療を担う。

ハーモニークリニック副院長の中井秀一氏は、“どんな人も、どんな状況でも診ていく”という昔ながらの町医者を目指してきた。大学病院に所属していた際に同院でチーム診療を経験し、「連携が良く質の高い在宅医療を提供しており、法人の運営理念でもある“WARM(温かく)&RELIABLE(信頼に足る)”医療を実践できる場だと実感した」という。大学病院の総合診療医として活躍していた同法人の医局長・松林洋志氏も、「地域医療の最前線では、各科の専門医が揃っている大学病院とは違って、総合診療医としての知識や技術を幅広く活かすことができる」 という。また、デュエット内科クリニック院長の大和康彦氏は家庭医・総合診療医を志し、卒業と同時に長野の著名な研修病院に赴き、外来や在宅医療の研鑽を積んできた。

「外来にもしっかり力を入れている点が当院の魅力の一つです。在宅医療だけでなく、医学教育や研修で培ってきた外来診療の力もフルに発揮できます」(大和氏)

医療の高度化、入院の短期化に対応すべく、同院では高度な治療に対応できる技術と設備を備える。そのため、他から紹介を受けて訪問診療からかかわるケースも増えている。

「ハーモニークリニックは在宅患者の約2割ががんの患者さんで、数年前と比べて緩和ケアが増えている」(中井氏)といい、同院副院長の市川聡子氏も「最近は病院での抗がん剤治療と併診しながら対応するケースが増え、より早期から関わることができるようになり、患者さんの希望を叶えるお手伝いが可能になってきている」のを感じている。一方、武蔵浦和にあるデュエット内科クリニックはいわゆる“埼玉都民”が多い。大和氏は「入院の短期化で細かな退院調整が困難になるなか、当法人が紹介先として選ばれる理由の一つは、良くも悪くも退院後の調整を“丸投げできる”力を持った多職種連携体制があるから」(図表6)とみる。

チーム診療については、「長野では24時間すべてを一人で背負う苦労も経験したので、明医研はライフワークバランスの実現に良い環境。しかし何より、自分に足りないもの、学ぶべきことを先輩や同僚、後輩から教えてもらえることが、多科でなく内科だけでチームを組む最大のメリット」(大和氏)と捉えている。また、“身体や健康に関して一番に相談に乗れる存在になる”“住み慣れた家で家族に囲まれた療養を支える”という、医師としてやりたかったことを叶えている市川氏。「家庭の事情で仕事のペースを落とさざるを得ないときもキャリアを中断せずに続けられた」とチーム診療のメリットを語る。同法人ではチーム医療を円滑に進めるために、インターネットを介した合同カンファレンスをはじめ、万全なカンファレンス体制を敷いている(図表7、写真)。

ナラティブと共感――
人として信頼される医師を志す

明医研では医学生や研修医を積極的に受け入れているが、そこで伝えたいこととは何か。

「生まれてから亡くなるまで、人としての歩みに伴走するかかりつけ医に求められるのは、その方を“愛し、敬う”心だと思います。ただし、“やさしいヤブ医者”であってはいけません。常に医療のスキルを磨き続けていく必要があります」(市川氏)

「人間関係や生活環境などの“場”をしっかり見て、症状の原因を解き明かし、解決策を導きだすこともかかりつけ医の大事な役割の一つと考えています」(中井氏)

「訪問診療においては“医者一人では何もできない”という謙虚さを持ち、多職種の意見を引きだし、集約して実践するコンダクターとしての楽しさを感じて欲しいです。また、多趣味であれというのがモットーです。さまざまなことに興味を持って取り組むことが患者さんへの共感に繋がり、その姿勢が医師としてだけでなく、人としても認められるように感じています」(大和氏)

そんな大和氏は中根氏を「かかりつけ医に重要な“ナラティブに基づく医療”を体現し、伝える稀有な存在。まだまだ学ぶべきところが多い」と評する。中根氏の技と人柄が、かかりつけ医としての質向上の源にあることは間違いなさそうだ。

図表5● クリニック機能の特徴
図表6● 在宅医療の体制とカバーエリア
図表7● チーム医療を実践するためのカンファレンス体制
リアルタイムなテレビ会議
明医研の2つのクリニック・3つの訪問看護ステーションが参加
法人全体の症例について情報を把握・議論することが可能
多職種参加によるカンファレンス
医師・外来看護師・訪問看護師・薬剤師(協力薬局)等が参加
医療チームによる活発なディスカッションを実施
各専門分野のベテラン医師からのコンサルト
多数の非常勤医師・神経内科等ベテラン医師からのコンサルト体制
医療チームとして患者・家族の希望を尊重した多面的な治療方針を検討
図表5〜7出典:明医研提供資料
法人3拠点をインターネットでつなぎ、多職種カンファレンスを頻回に実施
写真提供/医療法人 明医研
中根氏(中央)ほかハーモニークリニック副院長・中井秀一氏(前列右)、同副院長・市川聡子氏(前列左)、デュエット内科クリニック院長・大和康彦氏(後列左)、医療法人明医研医局長・松林洋志氏(後列右)
  • 地域密着の病院より

外来・入院・訪問診療の一体的運営が安心と信頼を生み、
〝必要な時に、必要な人へ、必要なだけ〟を実現

医療法人社団福寿会 赤羽岩渕病院
院長
熊川寿郎
1982年昭和大学医学部卒。東京大学医科学研究所付属病院 内科、血液内科、日本医科大学付属病院 救命救急センター勤務を経て、86年米国テキサス州立大学医学部内科 血液腫瘍科に留学。88年東京都老人医療センター 血液科、96年同免疫輸血科医長を歴任。2003年筑波大学大学院にてMBA取得。04年国立保健医療科学院経営科学部 主任研究官、06年同部長、11年同院医療・福祉サービス研究部部長、18年1月赤羽岩渕病院在宅診療部長、19年2月より現職。

熊川寿郎氏 写真

地域包括ケア病床の運用を
ポストからサブアキュートへ

赤羽岩渕病院が立地する東京・赤羽は大規模団地の建て替えが進み、若い世代の流入によって人口は増加傾向にある。しかしその一方で、北区は東京都のなかでもとくに高齢化の進む地域で、高齢世帯や独居高齢者数の伸びも著しい。

医療提供体制に関しては、大学の医学部附属病院を含め、規模の大きな急性期病院がいくつもあって、古くから続く中小病院や診療所も数多く残るエリア。加えて昨今、赤羽駅周辺では交通至便な地の利を生かし、東京や埼玉を診療圏に持つクリニックの新規開業が相次いでいる。

院長の熊川寿郎氏は、「当院はそのなかで、おもに“訪問診療を必要とする人たち”を対象に、入院機能や高度な検査機器など病院の持つ資源を最大限に生かしながら、地域医療における役割を模索し、実践してきた」と語る。同院は2010年6月に、“必要な時に、必要な人へ、必要なだけトータルにサービスを提供していく”との理念を掲げる医療法人社団福寿会の施設として再スタートを切った。

50ある病床のうち46が地域包括ケア病床で、大学病院など急性期病院からの紹介(ポストアキュート)のほか、同院の訪問患者や地域の診療所の患者の利用(サブアキュート)を積極的に受け入れており、まさに国の施策を先取りする形で病床の運用を進めてきた。

一方、訪問診療は14年11月から開始され、18年1月に熊川氏が在宅診療部長として赴任。半径16キロ圏内のすべてを訪問可能エリアに設定し、まずは、地域のケアマネージャーや地域包括支援センター、高齢者施設や病院の地域連携室を通じて、存在を知ってもらう活動を展開した。すると、入院機能を持つ病院が行なう訪問診療に対する安心感に加え、家族や施設職員をパートナーと捉えて“徹底した患者中心主義”を貫く姿勢が評価されてその後は口コミで広がっていき、在宅診療部が担当する患者の数は2年余りで3倍以上に増えた(図表8)。「現在、入院患者の約7割が急性期病院からの紹介ですが、訪問診療の数が1500程度に達すれば、4〜5割がサブアキュートとなる見込みであり、それを当面の目標にしています」(熊川氏)

顔の見える関係と探索的医療が
安心と信頼へとつながる

同院では、常勤医7名と非常勤医師がシフトを組んで、外来・病棟・訪問診療を一体的に運営している。

システムの根底にあるのは“徹底した患者中心主義”だ。地域住民が何を望んでいるのか、現行の医療や医療制度への疑問や不満はどうしたら解消できるのか、高齢世帯や高齢独居者が抱える大きな不安感を和らげるにはどうしたらよいのか――などに配慮し、“必要に応じて納得のサービスを提供する”ことを第一に考える。そして、すべての医師と看護師が外来と訪問診療、病棟業務に携わることによって、患者・家族に、どの場面でも“見たことのあるスタッフがつねにそばにいる安心感、信頼感を与える”ことにもこだわる。

訪問診療は日勤、当直、夜間・休日問わず、医師と看護師が必ずペアで回る。ただし、熊川氏は「看護は医師の補助役ではなく、医療の質を一定に保つためのガバナンス機能」と捉えている。

さらに、理学所見の取り方を徹底し、典型的な症状があらわれにくい高齢者の病気の拾い上げにつなげる “探索的な医療”を実践。治療についてもエビデンス重視だ。

こうした診療姿勢がもたらすケアの質は、患者数が3倍以上に増えた現在も、平日夜の緊急コールの数が以前と変わらない点にあらわれている。

将来的には、城北地区を中心に訪問診療の拠点を5〜6カ所設置することで、1万〜1万5千人規模のネットワーク構築を目指す。

「診療システムの安定化と人材育成の面では一定の規模を保つことが望ましく、また、距離の離れた拠点を持つことは、新型コロナウイルス感染症のような非常事態のクライシスマネジメントとしても有効な策といえます」(熊川氏)

「高齢化のトップランナーである日本。地域医療ビジョンと地域包括ケアシステムを車の両輪として、医療と介護を一体的に運用すべく動いている国は他にはありません。高齢化は国際社会共通の関心事であり、わが国の動向は世界から注目されています(図表9)。地域医療にこそ、その実践があります。そこで我々は、地域包括ケア病床と訪問診療を一体運営する都市型モデルを構築しようと考えています。そして、その評価としてJCI認証までを視野に入れています」(熊川氏)

*JCI(Joint Commission International)の認定には現在8つのプログラム(病院、大学医療センター、外来診療、臨床検査、在宅ケア、長期ケア、医療搬送機関、プライマリーケアセンター)がある

医療・介護・社会的資源を
駆使して、患者・家族を支える

このまま高齢化が進めば、現行の医療保険・介護保険制度では支えきれない部分が増えてくる。

「かかりつけ医には医療・介護だけでなく、地域にあるさまざまな社会資源に精通し、それらを総動員して、患者・家族の安寧な生活を支える役割が求められてきます」(熊川氏)

そこで熊川氏が新たに提案するのが、“医療・介護の枠組みの外にある地域資源を拾い出してデータベース化し、それらを必要とする人が有効活用できるしくみ(地域社会処方箋モデル)をつくること”(図表10)。

「そのなかで、たとえばエビデンスのあるものについては、医師が処方箋を書いてそれへのアクセスを促すなどの方法が考えられます。かかりつけ医はどのような場面においても、医療面から患者さんと社会をつなぐスタンスを持ち続けなければならないと考えています」(熊川氏)

図表8● 赤羽岩渕病院の在宅診療部の患者数推移(平成30年1月〜令和2年2月)
図表9● 世界一の老年人口比率国である日本の医療・介護制度
図表10● 地域社会処方箋モデル
図表8〜10出典:熊川氏提供資料