医療界の最前線情報をキャッチアップ「第30回日本医学会総会2019中部」レポート

“医学と医療の深化と広がり〜健康長寿社会の実現をめざして〜”をメインテーマに掲げた『第30回 日本医学会総会 2019 中部』(会頭:齋藤英彦氏)が、2019年4月27〜29日の3日間、名古屋を舞台に開催された。第30回という節目を迎えた本総会においては、90を超えるセッションが準備され、最新医学・医療の知見を共有するだけでなく、医学・医療を取り巻く重要課題について多面的な議論が展開された。注目演題の一部をレポートする。

  • 全体概要

専門領域を超え、立場を超えて
広い視野と多角的な視点で
『医学・医療の未来』を考える

日本医学会総会は、132の分科会を擁する日本医学会が日本医師会の協力のもと4年に一度開催する、明治35年の初回開催から連綿と続く国内最大規模の医学系学術集会だ。その記念すべき30回目の開催に際し、少子高齢化、グローバル化、医療技術の著しい発展など昨今の社会情勢を背景として『健康社会宣言2019中部』が示され、“未来の医療につながる基礎・臨床医学研究の推進”“多様な社会構成に対応できる医療環境の整備”“多様化する医療人の育成、配置、労働環境の整備”“国境の垣根を越えた医療の推進”の4つの柱を掲げて、健康長寿社会の実現に向けた努力を行なうとの決意表明がなされた。学術プログラムの内容もそれに則り、“柱1:医学と医療の新展開”“柱2:社会とともに生きる医療”“柱3:医療人の教育と生き方”“柱4:グローバル化する日本の医療”の4つの柱で構成された。具体的には、柱1では人工知能(AI)やICTによるビッグデータ解析や遠隔医療、ゲノム解析や難病治療・予防、遺伝子治療などのプレシジョン・メディシン、再生医療などが、柱2では少子超高齢社会における医療のあり方、保険や医療制度、地域医療や在宅医療提供体制、新薬やロボット、医療機器の進歩がもたらす新時代の医療など、柱3では専門医制度や研修・教育体制、医師の働き方改革など、柱4ではグローバルな視点で捉えたわが国の臨床研究や医療制度、人材育成支援等がテーマとして採り上げられ、広汎かつ多面的な視点で議論が行なわれた。また、天野浩氏、本庶佑氏、山中伸弥氏らノーベル賞受賞者も演者に名を連ね、3日間の来場者数は約3万人に達した。演題のなかから領域や専門を超えてキャリアに役立つ情報をお届けする。

  • 注目のセッション1 ロボット技術で輝く近未来手術

ロボット支援手術における
3D拡大術野や精緻な動きが
「不可能」を「可能」に変える

前立腺・腎臓がんに続き、18年に新たに呼吸器、消化器、循環器、泌尿器、婦人科領域12術式が保険適用となったロボット支援手術の現況と展望が語られた。

演題1では渡邊剛氏(ニューハート・ワタナベ国際病院)が、05年12月〜19年4月に経験したロボットを用いた僧帽弁形成術354例の成績を報告。「正中切開や小切開心臓手術(MICS)と比べ、人工心肺時間はやや長いが、出血量や合併症が少なく、社会復帰も早まる」と述べた。同院では冠動脈バイパス術や心房中隔欠損閉鎖など600例を超えるロボット手術を施行しており、「保険収載後は年170例に達する勢い」だという。「ラーニングカーブはMICSと同等の200例程度だが、今後は指導者のもとで経験を積むことで短縮可能」と期待する。演題2では井坂恵一氏(東京医科大学 産婦人科)が、人間の腕と同じ7自由度を有し、繊細な動きが可能なロボット手術との違いを「腹腔鏡手術は肘までギプスをはめている感じで開腹手術は菜箸を持って動かしている感覚」と表現。09年3月〜16年3月の同科の子宮体がん手術(ロボット29、開腹49)の成績は、執刀時間はロボットの方がやや長いが、出血量は10分の1、入院日数は5分の1、合併症の割合も半分で、骨盤底の深部での操作を要する婦人科領域でのロボット手術の有用性が際立つ。「5年生存率も同等で、ラーニングカーブは20〜40例と腹腔鏡手術より短い」という。演題3は中村廣繁氏(鳥取大学医学部 胸部外科学分野)。胸部外科のロボット支援手術(RATS)は学会主導でガイドラインや症例レジストリ制度の整備、プロクター認定制度の運用等が進められており、同大も10年のRATS導入から肺と縦隔147例を経験。リンパ節郭清や高リスク肺がんなどの複雑な手術で圧倒的に有利で、「胸腔鏡下手術との比較で合併症や在院日数を減らす効果があり、5年生存、無再発生存ともに同等の成績を認めている」という。蛍光造影を可視化するカメラの活用でより精緻な区域切除を実現し、20年度の保険適用を目指すほか、寛解率52・4%、改善率85・7%という重症筋無力症21例の成績をもとに、同疾患での拡大承認を目指す。演題4の演者・能城浩和氏(佐賀大学 一般・消化器外科)は国立大で最初にロボット支援手術を導入した経験を踏まえ、「食道がんにおいては胸腔鏡下と比べて出血量も合併症も少なく、反回神経麻痺の疑いは半減する」と述べた。胃がんでも、「重い術後合併症を腹腔鏡下の4割弱に抑え、特に縫合不全や膵液瘻など局所制御に優れる」と臨床試験の結果を示した。肝胆膵領域でもロボット支援手術は極めて有用だという。演題5では白木良一氏(藤田医科大学 泌尿器科)が、前立腺全摘の75%〜80%がロボット手術に代わっている米国の例を挙げ、開腹に比べて術後補助療法が少なく、予後の改善も期待できるとの報告を示し、「他の術式より低侵襲で出血量も少なく、尿禁制や性機能の回復も良好」と述べた。腎部分切除術についても、「腹腔鏡下手術と比べて有意に阻血時間が短縮でき(41分→19分)、慢性腎臓病への進展を減らすことで生存期間の延長が期待できる」という。

●セッションプログラム
座長:藤澤正人氏(神戸大学大学院医学研究科 腎泌尿器科学)
宇山一朗氏(藤田医科大学 総合消化器外科)
  • 注目のセッション2 医師の働き方改革について

医療安全や自身の健康を第一に
それぞれの立場と視点で
やりがいとキャリアを考える

演題1では植山直人氏(全国医師ユニオン)が、“ずさんな労務管理、当直業務の過酷さ、医療安全や自身の健康に不安を抱えている実態”が浮き彫りとなった、全国医師ユニオン実施の勤務医労働実態調査の結果を紹介。「医師の労働条件改善や医療安全策の徹底、業務削減や他職種へのタスクシフトなど可能な改革は速やかに実行し、中長期的には医師の増員や偏在解消にも努めるべき」と語った。演題2では松本尚氏(日本医科大学 救急医学)が、「大学病院の救急医には診療、教育、研究の3つの業務が課せられているが、そのなかには対外活動も含まれる。これらは労働と認識される一方、社会貢献活動や自己研鑽の性格を持つものもある。活動の縮小につながることのないよう、個人の裁量で管理可能な制度設計が求められる」との考えを示した。そして「タスクシフトや救急医療ニーズの抑制に期待することなく、積極的に地域の救急医療を維持する方策を考えていく必要がある」と述べた。演題3の演者は自身も子育てをしながら働き方改革に取り組んできた木戸道子氏(日本赤十字社医療センター 第一産婦人科)。「女性の一番の辞職理由は育児。雇用側は勤務軽減だけに注力せずに、医師としての活躍を後押しする策を考えるべき。女性自身も自分の可能性を狭めずに、家庭内でのワークシェア、ルンバなどの家事代行、外注など成長軸を伸ばせるソリューションを探りたい」との考えを示し、「多様な働き方を用意し、チームの総力を挙げていくことが大切」と結んだ。演題4の中嶋義文氏(三井記念病院 精神科)は、働き方改革で追加的健康確保措置として、面接指導や就業上の措置が義務付けられたことを受け、「医療機関の産業医は独立性・中立性を保ちながら、積極的にリーダーシップを発揮したい」と述べた。演題5では阿部計大氏(東京大学大学院医学系研究科 公衆衛生学)が、「継続的に若手医師を取り巻く課題の議論や調査、提言の場を設け、若手医師の意見を医療政策に反映させることが大事」としたうえで、「施設単位ではなく、医師個人の勤務実態調査を定期的に行ない、働き方改革の達成状況を検証する必要がある」との考えを述べた。最後の総合討論では、『自己研鑽』に関して松本氏から「若い人の研鑽の時間を制限せずに、自己裁量を尊重してほしい」との意見が出された。『柔軟な働き方』については木戸氏が、「ライフステージごとに働き方は違って当然。短時間労働を都合よく利用するのではなく、本人のキャリアを長い目で見て、基幹業務をきちんとこなせるよう育てることが重要であり、それこそが将来リーダーになれる人材へとつながると思う」と締めくくった。

●セッションプログラム
座長:泉 良平氏(富山市立富山市民病院 外科/富山県医師会)
望月 泉氏(岩手県医師会参与/八幡市病院事業管理者)
資料● 医師の時間外労働規制についての考え方
出典:厚生労働省「第20回 医師の働き方改革に関する検討会」資料2(平成31年3月13日)より
  • 注目のセッション3 がん・難病の予防療法はどこまで可能か?

遺伝病の解明が進めば、
人類はがんや難病を克服できるのか?
動き始めた『先制医療』の未来

がんや難病の発症リスクを予想できるようになり、「先制医療」が現実味を帯びてきている。

演題1では新井正美氏(順天堂大学医学部附属順天堂医院 ゲノム診療センター)が遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)を解説。乳がんの生涯発症リスクはBRCA1変異陽性者で72%、BRCA2変異陽性者で69%、卵巣がんは同44%、同17%とされており、対策には計画的な検診(サーベイランス)、リスク低減卵管卵巣摘出術(RRSO)やリスク軽減乳房切除術(RRM)、化学療法(タモキシフェンなど)がある。日本人の乳がん患者におけるBRCA変異陽性者は4〜5%、卵巣がんでは15%程度だが、未発症者でも年間2・9%が乳がんを発症するといわれる。そのため現在、乳がん・卵巣がんいずれの診療ガイドラインでもRRSOが強く推奨されているが、実際に受けているのは変異陽性の3割強、平均年齢49・5才と海外に比べて遅い。一方、「RRMについては施行後も年0・9%の乳がん発症が報告されており、注意が必要」だという。演題2は赤木究氏(埼玉県立がんセンター 腫瘍診断・予防科)が登壇。大腸がんの20〜30%に家族歴がみられるが、ゲノム解析に基づく遺伝性のがんは8〜10%。もっとも多いのがリンチ症候群で、家族性大腸ポリポーシス(FAP)がそれに続く。FAPに対するリスク低減手術は標準治療であり重要な予防法。基本的には大腸全摘が選択されるが、社会的背景やAPC遺伝子変異部位により術式が考慮される方向にある。リンチ症候群の原因遺伝子は4つ。どこに変異があるかによってリスクは異なる。標準的なサーベイランスは、1〜2年に一度の大腸内視鏡(20歳〜)、上部消化管内視鏡(30歳〜)、半年〜1年に一度の経腟超音波・子宮内膜組織診(30歳〜)など。定期的な内視鏡検査により大腸がんの発症を3分の1程度に減らせるという。演題3では岩坪威氏(東京大学大学院医学系研究科 神経病理学分野)がアルツハイマー病(AD)の疾患修飾(根治)療法に言及。神経原線維変化の原因となるアミロイドベータとタウを標的とした治療薬の治験が進行しているが、効果不十分で中止となったものも少なくない。そこで現在、前臨床期ADを治療ターゲットとした研究が進む。「画期的なバイオマーカーはアミロイドPETスキャン」で、前臨床期ADに抗Aβ抗体を予防投与する治験が始まり、同大も参加している。また、生活習慣リスクへの介入研究も盛んで、健常者を対象としたランダム化比較試験で、食事・運動指導、認知トレーニング、血管リスクの管理を行なった群は対照群に比べ認知機能スコアに改善がみられたという結果もある。演題4は服部信孝氏(順天堂大学医学部 脳神経内科学)。パーキンソン病(PD)は症候群であり、病態に基づく治療が求められるが、孤発性3タイプ、遺伝性は23に分類されており、炎症、ミトコンドリア、リソソーム、プリオンなど複数の因子の関わりが示唆されている。代表的な原因遺伝子は3つあり、レボドパ、脳深部刺激療法、アルツハイマー病と同様の治療など効果的な治療法は異なる。服部氏らは、前臨床期の重要なバイオマーカーであるレム睡眠行動異常症に着目し、カフェインを治療ターゲットとした医師主導治験を検討中だという。

●セッションプログラム
座長:直江知樹氏(国立病院機構名古屋医療センター (血液内科))
森 啓氏(長岡崇徳大学、大阪市立大学大学院医学研究科
脳血管内治療・頭蓋底外科病態学寄附講座)
  • 注目のセッション4 遺伝子治療の到達点と今後の展開

治療法のなかった難治性疾患に
光をあてる『遺伝子治療』
安全性と有効性をとことん追求

国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター
理事
武田伸一

武田伸一氏 写真

演題1では武田伸一氏(国立精神・神経医療研究センター)が導入として、「生体に直接あるいは細胞に遺伝子を導入し、その遺伝子がたんぱく質を合成することを介して病態を修正するのが本来の遺伝子治療だが、核酸医薬のように直接生体に効くもの、さらにゲノムの遺伝情報を改変するゲノム編集も広義の遺伝子治療と捉えることができる」と全体像を説明(資料1)。続く本編では、小児で一番多いタイプで、国内の患者数が約4000人の希少疾患であるデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)に対する遺伝子治療について解説した。これは単一遺伝子病の代表で、DMD遺伝子(79のエクソンで構成)の変異により、ジストロフィンの発現を完全に欠く疾患だ。武田氏らは、モルフォリノという人工核酸を使ってエクソン・スキップする安全性の高い核酸医薬品をデザイン。疾患モデルマウスの検証を経て、疾患モデル動物である筋ジストロフィー犬に5週間投与した。結果、ジストロフィンの発現が回復し、とぼとぼ歩き、疲れやすくてすぐに立ち止まっていた犬が、元気に走る姿が確認できている(資料2)。臨床試験に先立ち、DMD患者ではエクソン45から55に遺伝子変異が集積していることを突き止めるとともに、スキップに有効なエクソンを同定し、2番目に多い頻度(約10%)のエクソン53に着目した。人の細胞を用いて最適な配列を選定すると、核酸医薬品を開発し、特許申請に至った。一方、09年から患者登録システムを開始し、「筋ジストロフィー臨床試験ネットワーク」を組織し、臨床試験体制を整えた。早期探索相試験では、10人の患者を対象とした12週投与で、大きな有害事象もなく、有効性と安全性を確認。次に日米で用量設定試験を実施。40㎎/㎏または80㎎/㎏、24週の投与で、筋生検を行ないジストロフィンの発現をみたところ、とくに80㎎/㎏投与群において、ジストロフィンが正常な人の5%前後発現しており、有意差が得られた。この結果をもって近々薬事申請を行ない、先駆け審査指定制度を利用して早期承認を目指す。

足りないものを補う治療から
病気の原因を断つ治療へ

演題2は小野寺雅史氏(国立成育医療研究センター研究所 成育遺伝研究部)。小児科領域では遺伝性疾患、しかも劣性遺伝が多いため、これまで足りないものを補う治療が中心だった。ただこの治療法の欠点は、繰り返し治療が必要なこと。これに対して1回の治療で治そうというのが遺伝子治療の考え方だ。方法は二つ。一つは体内遺伝子治療で、もう一つは体外遺伝子治療。後者は患者の細胞を採取し、試験管内でおもにウイルスベクターを用いて正しい遺伝子を入れ、体内に戻す方法だ。使用するウイルスの種類も大きく分けて二つ。HIVに近いレンチウイルスと比較的毒性の少ないアデノ随伴ウイルス。さらに遺伝子付加ではなく、間違った遺伝子を正しい遺伝子に修正するという考えのゲノム編集も登場している。演題3は村松慎一氏(自治医科大学 神経内科)で、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターについて解説。AAVは非病原性ウイルスであり、一回導入すると生涯遺伝子を発現することが明らかにされている。現在200種類以上の治療用ベクターが開発されており、血液脳関門を通るベクターは、静脈注射で脳に到達させることができる。パーキンソン病、網膜色素変性症、血友病、脊髄性筋萎縮症などに対するAAVベクターを使用した臨床試験で好成績が得られており、遺伝子治療の急速な発展に貢献している。演題4では影山愼一氏(三重大学大学院医学系研究科 遺伝子・免疫細胞治療学)ががん治療に言及。最終的に腫瘍を殺すのはエフェクター細胞でその中心がT細胞、とくにCD8のT細胞。これらを輸注して治療に用いようというのがT細胞療法で、体外で人為的に腫瘍特異的なT細胞を培養して戻す方法が遺伝子改変T細胞療法だ。これにはCAR(キメラ抗原受容体)-T細胞療法とTCR(T細胞受容体)-T細胞療法の二種類あり、いずれも臨床的な効果が証明されている。なかでもCD19B細胞表面抗原に対するCARは、急性リンパ性白血病(ALL)の90%で有効性が示されており、日本でも3月に薬事承認、5月中旬に薬価収載となっている。ただし、サイトカイン放出症候群や中枢神経毒性に注意が必要だ。一方、TCR-Tは腫瘍抗原、細胞内抗原のペプチドを認識できるため応用範囲の広さが期待されており、現在のところ、メラノーマや滑膜肉腫での有効性が確認されている。

●セッションプログラム
座長:武田伸一氏(所属上記)
珠玖 洋氏(三重大学大学院医学系研究科
遺伝子・免疫細胞治療学、個別化がん免疫治療学)
資料1● 遺伝子治療、核酸医薬、ゲノム編集とは?
資料2● モルフォリノを用いたエクソン・スキッピングの有効性
資料1・2出典)武田氏提供資料
  • TOPICS

最新医療・介護テクノロジーが紹介された
学術「テーマ展示」

会場の一角に設けられた「学術テーマ展示」では、基本構想の4つの柱に沿った研究発表およびそれらを具現化した製品紹介が行なわれた。

学術テーマ1「ICT/IoT技術で創る医学と医療の新展開:スマートホスピタル」では“医療現場の見える化と効率化”と題し、『スマート治療室:SCOT』を紹介。治療室用インターフェイス『OPeLiNK』を基盤に、これまで単独動作だった機器・設備をネットワーク化して情報を統合・活用することで、治療精度や安全性の向上をめざす。日本医療研究開発機構(AMED)の支援で5大学11企業が共同開発しており、すでに一部の大学病院で導入している。学術テーマ2「絶え間のないチーム医療:最適な生活機能の獲得に向けて」では“機能訓練の新たなる局面:ロボットリハビリ”と題し、装着型リハビリロボット「FREE Walk」の実機とリハビリ映像を展示。本製品は両側の股・膝関節にモーターを取り付けた外骨格型歩行支援ロボットで、脊髄損傷患者をはじめとした下肢不自由者の「立つ」「歩く」「座る」をサポートする。研究・開発はフリーバイオニックス社だ。

また、医療現場のニーズと企業シーズをつなぐ「メディカルメッセ」のブースでは、愛知県の中小企業8社による「新世代ロボット研究会」が株式会社VRテクノセンターと共同開発した介護施設用自動循環見守りロボット『アイミーマ』が目を引いた。このシンプルかつキュートなロボットは、指示経路に沿って自動巡回し、人を感知して知らせることで、介護従事者の負担軽減をはかる。赤外線カメラと大容量バッテリーを搭載しており、9時間程度の連続稼働が可能だという。

画像・データ・動作状態が統合された『OPeLiNK EYE』が治療の意思決定を支援
映像機能装備で、スマホなどの端末から画像を見ながら会話ができる
『FREE Walk』の優れた操作性と安全性は装着者にも介護者にもやさしい