がん医療の地域連携 どうあるべきか?

がん対策基本法施行から10年が経ち、がん医療提供体制はどう整備されたのか。がん情報の収集・発信をしながらがん医療の変遷をみてきた国立がん研究センターがん対策情報センター長、都道府県がん診療連携拠点病院として地域医療の均てん化に尽力する四国がんセンター院長、がんとともに生きる人々を病棟・外来、在宅で支え続ける緩和ケア医の語るがん医療の「いま」から、地域連携のあり方を探る。

  • 総論

指定要件の強化で拠点病院のさらなる質の向上と
がん医療過疎地の解消を目指す新たな診療体制へ

国立研究開発法人
国立がん研究センター
がん対策情報センター
センター長
若尾 文彦
1986年横浜市立大学医学部卒、国立がんセンター病院・放射線診断部レジデント、医員を経て、98年より医長。2006年、がん対策情報センター開設にあたり、センター長補佐、情報提供・診療支援グループ長を併任。10年同センター長、11年がん情報提供研究部長、12年3月より現職(16年よりたばこ政策支援部部長併任)。「がん情報サービス」や「がん患者必携」等を通じ、信頼性が高くわかりやすいがん情報の発信・普及に取り組む。日本臨床知識学会・理事。

若尾 文彦 写真

拠点病院の機能強化と連携で
がん診療の空白地帯をなくす

平成18年6月のがん対策基本法の成立、翌年4月の施行から10年が経ち、がん対策推進基本計画もまもなく第3期が策定される。平成14年に始まった拠点病院の整備も平成26年1月に要件が改められ、新たながん診療提供体制が示されている。

「都道府県と二次医療圏にそれぞれ一つずつの拠点病院の設置が想定されていましたが、350の医療圏のうち108が拠点病院の空白地域でした」と国立がん研究センターがん対策情報センター長の若尾文彦氏は見直し前を振り返る。

そこで、拠点病院の機能や活動内容を「見える化」し、空白地域にも相談支援や緩和ケアを届けるために、拠点病院とグループを組み、連携協力のもとがん診療を行う『地域がん診療病院』を新設。特定のがんに関して高い診療実績があり、拠点病院並みの機能を有する病院を『特定領域がん診療連携拠点病院』とする新たな枠組みも作った。一方、拠点病院の指定要件を強化し、指定後のチェック体制として地域拠点病院にはPDCAサイクルの確保、都道府県拠点病院には当該地域の拠点病院や地域がん診療病院の機能や診療実績等の把握・評価、改善をはかる役割を求めた(図表1)。

拠点病院の指定要件については、診療従事者の配置規定を厳しくし、キャンサーボードの実施や治療提供体制の強化をはかった。緩和ケアチームには専門資格を持つ看護師の配置を義務付け、診断時からの「苦痛のスクリーニング」の実施を徹底させることに。相談支援室には、必ず「がん相談支援センター」という名称を掲げ、その存在と機能を主治医等から患者家族に周知する体制を整えることとした。

「2年かけて段階的に移行し、平成28年4月にはすべて新指針に基づく指定に変わっています」(若尾氏)

平成18年の都道府県拠点の指定を境に拠点病院の数は伸びてきたが、26年の見直しで空白の医療圏も減少傾向に。29年4月に新たに指定された施設を加えると、拠点病院は400、地域がん診療病院は34を数える(図表2)。

いまだ大きな課題の残る
体制整備と地域との連携

がん医療をめぐるさまざまな施策は現場にどのように反映されてきたのか。若尾氏は、拠点病院から提出された現況報告書と患者体験調査をもとに作成された「がん対策推進基本計画・中間評価報告書(平成27年6月)」を指標の一つに挙げる。

それによると、「納得のいく治療選択ができた患者」は8割を超えるが、「セカンドオピニオンの説明を受けた患者」は4割、「定期合同カンファレンスを実施している拠点病院」は5割弱、「転移・再発5大がん患者の化学療法を内科医が担当する拠点病院」は3割に満たない。「がん相談支援センターの利用者満足度」は8割強と高いが、利用者は患者全体の1割弱に過ぎない。地域連携において重要な役割を果たす部署に「専従・専任で配置されている人員数」は、100床当たりわずか1・4人だ。

「さらに、拠点病院が適切な連携を行なっているとする地域医療施設の割合は、紹介時は7割にのぼるのに対し、逆紹介時には6割に下がるという実態も明らかにされています」(若尾氏)

施設の役割を「見える化」し
受診の流れと連携を生み出す

地域の医療機関が「何ができるのかわからない」ことも、患者を拠点病院から地域に戻すタイミングを難しくしている理由の一つだ。

若尾氏は、情報公開の成功事例として琉球大学の取り組みに注目する。県内のすべての医療機関について、「どんな治療ができるか」「治療成績」「治療件数」などの情報を冊子やネット上※で公表しており、希望に合った病院が探せるため、受診の流れが自然と生まれているという。

地域医療構想に基づいて医療機関の機能分化が進み、連携の道筋が示せるようになれば、「治療の段階に応じて診療の場が変わること」に対する患者家族側の理解・納得も得やすくなるのかもしれない。

若尾氏は「治療後のフォローアップや緩和ケアを含む長期的な地域連携パスの構築とそれらの普及が、スムーズな連携を促すきっかけになれば」と期待する。

どの地域でもうまくいく連携の形は存在しない。地域のリソースを生かしつつ、顔の見える関係を構築することが求められるからだ。国立がん研究センターでは昨年度から、連携の調整役としての『地域緩和ケアコーディネーター』の養成を始めた。

「医師もキャリアを考える際、自院が地域で果たすべき役割を知り、やりたい医療に合致するかを見極めることが大切です」(若尾氏)

図表1 新たながん診療提供体制の概要
厚生労働省資料より
図表2 拠点病院数と拠点病院のない二次医療圏数の推移
「第5回がん診療提供体制のあり方に関する検討会」資料2
(平成28年/厚生労働省健康局がん・疾病対策課作成)
※平成29年データは加筆

※おきなわ がん情報ネット「みるん・しるん」 https://mirunshirun.jp/

  • 拠点病院からみた連携

多職種連携により、疲弊なき地域連携を構築
均てん化の次は圧倒的に質の高いがん医療を追求

独立行政法人国立病院機構
四国がんセンター
院長
谷水 正人
1982年岡山大学医学部卒、同大第1内科(現消化器・肝臓内科学講座)入局。岡山済生会総合病院、公立雲南総合病院、岡山大学病院を経て、95年より四国がんセンター勤務、2009年に副院長に就任し、17年4月より現職。08年より厚生労働省科学研究費補助金がん臨床研究事業「5大がんの地域連携クリティカルパスモデル開発研究」班の研究代表者を務めた。編著に『パスでできる! がん診療の地域連携と患者サポート』(医学書院)ほか。

谷水 正人 写真

拠点病院を中心に、県全体に
あまねくがん医療を届ける

愛媛県にはがん診療連携拠点病院が7か所、がん診療連携推進病院(準拠点病院)が8か所指定されている。四国がんセンター院長の谷水正人氏は、「がん患者の約85%を7つの拠点病院が診療し、連携推進病院や地元の病院、診療所が地域の受け皿となる位置づけ」と説明する。

愛媛県の人口は140万人弱。県域は東予・中予・南予の3つに分けられ、拠点病院は人口の約半数が集中する中予地域に4つ、3分の1が暮らす東予地域に2つ、南予地域に1つと住民の数に応じてバランスよく配置されている。

実際、院内がん登録数(平成26年)をみると、数においては四国がんセンターが突出しているものの、いずれの拠点病院も各地域のがん医療をしっかりと担っている様子がみてとれる(図表1)。

こうした状況を成り立たせている背景の一つは、愛媛県では、拠点病院と連携推進病院、緩和ケア病棟のある施設、関係団体の代表者などが参加する『がん診療連携協議会』がきちんと機能していることだろう。協議会では6つの専門部会(がん地域連携・緩和ケア・がん相談支援・がん登録・がん集学的治療・がん看護)を設け、定期的に会合を持つことで情報を共有し、顔の見える連携をはかっている(図表2)。

連携パスを軸に、きめ細かな
フォローで医療の質を保持

なかでも『がん地域連携専門部会』は、臓器別のがん地域連携パスを整備・公開し、それらを実践することによって標準治療を普及させ、施設間格差を是正し、県全体のがん診療の質の底上げに取り組み、一定の成果を上げている。

協議会のウェブサイト※では、連携パス(共同開発)、連携協定医療機関リスト、連携の実績が公開されており、だれもがアクセスできる。とくに連携パスは拠点病院と地域の医療機関が治療経過を共有するだけでなく、患者自身が治療や検査の流れを俯瞰するのに役立つ。

「ただし、多くはパス通りには進みません。しかもこれまで自院で完結していた医療の質を落とすことなく地域と連携するためには、パスをもとに、よりきめ細かで緊密なやり取りが求められます」(谷水氏)

同部会は四国がんセンター内に連携パス事務局を置き、かかりつけ医等から紹介を受けた時点で退院後の診療の進め方について調整を開始する。入院の際には、事務局に配置された専従職員が実際に連携先を訪問し、担当医の専門などを勘案しながら、留意点や依頼内容の詳細を詰めていく。退院後も引き続き、定期的に受診しているか、検査は重複していないかなどをチェックし、もしも検査値の異常などが見つかれば、連携室から連絡を受けた医師事務作業補助者が主治医に報告して、「早めの受診」などの指示・対応を行っていく(図表3)。

丁寧に情報共有を行おうとすればそれだけ作業も増える。しかし、試行錯誤を重ねるなかで「診療情報提供書の作成など、手順のうちの94%は医師の指示・承認のもと、医師事務作業補助者や診療情報管理士が代行できる」ことがわかり、主治医の負担を重くさせることなく、遅滞のない、質を保った連携がはかれるようになったという。

とはいえ、連携システムの構築は投資が必要な部分でもあり、二の足を踏む病院も少なくない。

「我々も平成20年から準備を始め、ようやく軌道に乗るまでに4年ほどかかりました」(谷水氏)

連携のしくみができて終わり、ではもちろんない。愛媛県の取り組みはすでに、「用意されたがん医療というプラットホームをどう運営し、発展させるか」に向いている。

その取り組みの一つが、「拠点病院相互訪問調査」だ。調査を担当する2つの病院の代表者が調査対象となる拠点病院を訪れ、評価表に沿って指定要件の履行状況や実績を視察し、その結果をもとに取り組むべき課題や改善策について意見交換する。

「現場の声を聴き、問題を顕在化させることで、実際に改善に結びついています」(谷水氏)

地域包括ケアシステムの中で
圧倒的に質の高いがん医療を

全国的にみると愛媛県はがん医療の均てん化に成功したといえるが、どうやら万々歳とはいかないようだ。

「各拠点病院が自信をつけ、地域の中心的な役割を担い始めたことは喜ばしいですが、今まで四国がんセンターに集中していた患者が各地に分散し、当院の経営が厳しくなってきました」と谷水氏も戸惑いを隠せない。

これまで都道府県拠点病院として、がん医療の均てん化に邁進してきた四国がんセンター。だが、谷水氏の視線は次なる目標をしっかり捉える。

「我々が常に目指してきたのは、〈圧倒的に質の高いがん医療の実現〉です。当院は新しい分子標的薬等によるプレシジョンメディシン(個別化医療)の中四国のセンターとして、現在システムを構築中です。さらに、多様化する患者ニーズに対応すべく、地域コミュニティの再生やソーシャル・キャピタルとしての役割も果たしたいと考えています」(谷水氏)

四国がんセンターは西日本で圧倒的な治療成績を誇るが、「治す」ことだけに熱心なわけではない。平成25年6月に開設した患者・家族総合支援センター「暖だん」もこうした谷水氏の考えを具現化する取り組みの一つだ。患者・家族、医療・介護・福祉に携わる人を支援する場として、がんカフェやがんサロン、各種セミナーの開催、チャイルドケアプログラムの提供などの活動を展開している。

「今、もっとも力を入れているのががん患者の就労支援です。相談事業や地域に出向いての講演会、イベントも開いています。また、企業と共同で就職支援研修にも取り組んでいます」(谷水氏)

産業医大と開発中の研修プログラムは完成の暁には全国に提供する。

「暖だん」の運営は年間約5千万円かかる。谷水氏の切実なる願いは「世の中から必要とされることにお金が投資される社会に日本という国が成熟すること」だ。

「これからは医師も専門性を高めると同時に、自分が社会から何を求められ、どんな役割を果たすべきかをみようとするもう一つの目を持って欲しいと思います」(谷水氏)

図表1 愛媛県のがん診療連携拠点病院の状況
谷水氏提供資料
図表2 愛媛県がん診療連絡協議会の体制
谷水氏提供資料
図表3 がん地域連携の体制
谷水氏提供資料
図表4 患者・家族支援の中心となるセンター

※愛媛県がん診療連携協議会「がん地域連携専門部会」
http://www.shikoku-cc.go.jp/conference/subcommittee/region/

  • 地域の病院からみた連携

がん治療と並行して関わる緩和ケアの実現により
拠点病院と在宅医療の間をシームレスにつなぐ

公益財団法人
ライフ・エクステンション研究所
付属 永寿総合病院
緩和ケア科副部長 病棟長
がん診療支援・緩和ケアセンター長
廣橋 猛
2005年東海大学医学部卒。東京大学医学部附属病院と三井記念病院で初期研修後、三井記念病院内科シニアレジデント、亀田総合病院疼痛・緩和ケア科/在宅医療部、三井記念病院緩和ケア科勤務を経て、14年2月より現職。日本在宅医療学会評議員、日本内科学会認定内科医。病棟と在宅で緩和医療を実践する傍ら、がん医療や終末期医療、在宅ケアの現状や課題を日経メディカル Online「二刀流の緩和ケア医」に連載中。

廣橋 猛 写真

がん治療と緩和ケアの併診で
希望する療養の場を選択する

JR上野駅から徒歩圏内にある永寿総合病院は、20余りの診療科と400病床を有する急性期中核病院だが、緩和ケア外来と病棟がきちんと機能する、都内では希少な施設だ。

がん診療支援・緩和ケアセンター長の廣橋猛氏は、「がんセンターや大学病院など、最先端のがん治療のできる施設が林立する地域で我々に期待されるのは、どちらかといえばがん治療をしながらの生活をどう支えるかです。治療に伴うつらさをしっかり和らげながら、少しずつ将来のことを一緒に考えていく――それを幅広い意味での緩和ケアと捉え、実践しています」と、部署名に込めた役割を説明する。

緩和ケアといえば「治療を終えてからでないと受け入れない」という話をしばしば耳にする。「治療をやめる決断はとても大変なこと。そうした縛りが緩和ケアに対する誤解も生みます。しかも、その時点から相談を始めたのでは、時間が限られてしまって、望ましいケアができなくなるおそれがあります」と廣橋氏は問題点を指摘する。

厚生労働省の調べでは、がん患者の約4分の3が拠点病院等以外の場所で最期を迎えている(図表1)。しかしこれには、在院日数の縛りから、最後の最後に納得いかない場所に移って亡くなるケースも多分に含まれる。廣橋氏は「早い段階で患者さんとの間に、進行・再発がん治療の目的は根治ではなく延命という共通認識があれば避けられる事態」と捉える。実際、早めに将来を考え、準備することを勧めるがん治療医も増えてきているという。

「ただし、それに応えられるよう、我々も受け入れ体制を整えていかなければなりません」(廣橋氏)

外来受診、入院、在宅療養を
自在に選べる環境を提供する

永寿総合病院は、平成26年12月から3年間、拠点病院等で初期治療を終えた患者の受け皿として「東京都がん地域医療連携モデル病院」事業を受託(図表2)。拠点病院と在宅医療をつなぐ「療養生活の中核」として、がん治療中でも相談できて、救急や緊急入院が受けられ、一般的な診療科があり、緩和ケア外来と緩和ケア病棟を備え、一般病棟では緩和ケアチームが稼働し、在宅とも密な連携のある体制が必要不可欠であることを実証した。

「最初は抗がん剤治療を行う病院と併診しながら、時々緩和ケア外来を受診してもらい、将来のことをゆっくり話し合っていきます。病状が進んで緩和ケアがメインになってからは、苦痛を和らげる治療はもちろんのこと、食事が十分に摂れないときは点滴を行うなど、その時々に必要な処置を外来で受けながら、がんの進行と付き合っていきます」(廣橋氏)

もう一つ大切にしていることがある。患者が希望する療養の場で過ごせるよう最大限の努力をすることだ。

診察室の棚にはAからDの4つのファイルが並ぶ。Aは即入院が必要な患者、Bは在宅医療を受けている患者、Cはがん治療は終えたが、元気で外来に通える患者、Dは他院でがん治療をしている患者だ。

「希望する療養の場は、患者さんの体調の変化や心理状態によって日々変わっていきます。それを叶えるための準備をし、いつでも入院できるという安心感を保証することが緩和ケアにとって大切なことだと考えています」(廣橋氏)

平成26年から3年間、緩和ケア外来初診患者の療養場所を追った図からもその姿勢が十分にくみ取れる(図表3)。

ただし、こうした体制は病院の理解や他科の協力なしでは実現しない。緊急入院や看取りも多いが、夜間はすべて当直医が対応し、緩和ケア病棟が満床の際は一般病棟に入院できる体制となっている。

「一般診療科の困りごとにも迅速に対応するなど、ウィンウィンの関係を心掛けています」(廣橋氏)

緩和ケア病棟(16床)と外来、一般病棟の緩和ケアチーム、外来・在宅合わせて常時200人を超える患者のフォローを、緩和ケア医3名、精神科医1名、看護師2名、ソーシャルワーカー(MSW)1名で行う。初診は予約制で現在1か月半待ちだが、早め早めの受診なので困ることはない。初診の外来はおおむね40分間と短めだが、MSWや看護師が事前に患者情報をまとめておくので、診療は効率的に進めることができる。

一方、在宅医療に関しては、各地区に気心の知れた在宅クリニックがあり、つねに人材交流しながら顔の見える密な連携を保っている。廣橋氏自身も週に2日は往診を受け持つ。

圧倒的に不足しているのが
療養生活の中核を担う施設

拠点病院と在宅をつなぐ「療養生活の中核」を担う施設は圧倒的に不足しており、がん医療連携の図式の中でもっとも脆弱な部分だ。「在宅医療好き」な廣橋氏だが、まずは中核の強化が急務と考え、覚悟を決めて取り組んでいる。

そんな廣橋氏がもっともやりがいを感じるのが「初診外来」だ。これまでどのような治療を受け、どういう人生を歩んできたか、これからどう過ごしたいのか――そこには毎回毎回新鮮な出会いがあるという。

緩和ケア医に求められるのは、全身管理のできる内科のスキル、症状緩和の知識と経験に加え、「できればがん治療、特に抗がん剤治療を経験しておいて欲しい」と廣橋氏はいう。

「治療の限界を知る経験があるとないとでは、緩和ケア医としての姿勢にも大きく影響します。そして何より、アドバンス・ケア・プランニングのスキルは極めて重要です。おそらく、私のいまの仕事の8割はそれです」(廣橋氏)

図表1 がん死亡者における死亡場所別割合
「今後の緩和ケアのあり方について」第19回緩和ケア推進検討会(平成28年)資料より
図表2 永寿総合病院のがん診療体制
廣橋氏提供資料
図表3 永寿総合病院の緩和ケアの診療体制と現状
廣橋氏提供資料