藤田医科大学病院 総合消化器外科 教授に聞く 教育方針と未来

専門性の追求と若手医師の育成を両立
消化器外科領域のオピニオンリーダーを育成

藤田医科大学病院総合消化器外科は、2015年9月に臓器別診療科を統合し、総合消化器外科となりました。入局後に経験を積むなかで専門領域を決められる点が後期研修希望者に好評です。

診療科を
総合消化器外科に再編成
基礎と専門性を学ぶ環境へ

藤田医科大学病院
総合消化器外科 教授
宇山 一朗 先生
1985年
岐阜大学医学部卒業
1985年
慶應義塾大学外科学教室
1991年
練馬総合病院勤務
1997年
藤田医科大学医学部外科学講師
2002年
藤田医科大学医学部外科学助教授
2006年
藤田医科大学医学部外科学教授

消化器外科の診療科を再編成した経緯を教えてください

私が藤田医科大学に赴任した当時、外科は旧第一外科から旧第四外科まで4つの講座に分かれていました。各科ですべての臓器を診る体制でしたが、それぞれに治療方針が異なるなどの問題点がありました。また、患者さんもどの診療科を受診すればよいかわからない状況だったと思います。

2001年に当時の旧第三外科の船曳孝彦教授が学長に就任し、臓器別診療科への再編が行われました。私が赴任当時所属していた旧第一外科は、肝臓外科に改組されることになりました。もともと医師になった当初は肝臓外科を志望していたこともあり、そのまま残る選択肢もありましたが、赴任以前から取り組んでいた胃がんの腹腔鏡手術が軌道に乗り始めていたこともあり、旧第三外科の上部消化器外科に転籍しました。

いわゆるナンバリングから、上部消化器外科、下部消化器外科、肝・脾臓外科、胆・膵外科と、臓器別に診療科を再編したことで専門性が高まり、臨床レベルは向上しました。学会でも注目されるようになり、非常に大きな成果が上げられるようになったと思います。一方で研修医にとっては、入局時に臓器別に専門を決めるのはハードルが高いといえるでしょう。そこで、年月はかかりましたが、2015年に先行して病院の診療科を総合消化器外科として統合しました。大学も2年遅れとなる2017年に総合消化器外科講座として1つになりました。

藤田医科大学病院の後期研修の魅力について教えてください

実際に研修希望者は“講座”ではなく“診療科”、つまり臨床現場で(どのようなことを)学べるのかをみて、研修先を選ぶと思います。そのなかで、「消化器外科がやりたい、だけど最初から臓器を絞り込むのではなく、広く学びながら専門を選びたい」という研修医は少なくありません。そのため、診療科が統合された2015年以降は入局希望者も増えています。
総合消化器外科となったことで、専門性の高さはそのままに、消化器外科に興味がある研修医にとって、より門戸が広がったといえるでしょう。

また、当院では総合消化器外科、呼吸器外科、心臓血管外科、小児外科、内分泌外科、乳腺外科、移植再生外科、災害外傷外科、外科・緩和医療が1つに集まった統合外科も組織されています。専門医資格を取得するには消化器外科領域の経験だけでなく、他外科領域での研修も重要です。後期研修医は、最初の1年間、専門外の外科をローテーションしますが、日頃から講座や診療科間の交流がはかれる風通しのよい組織であることが、ローテーションをする際にも活かされると思います。

当院は新設医大の附属病院で、関東方面には大きな関連教育病院はいくつかありますが、近隣に大きな関連病院がありません。これは、研修を行ううえではデメリットにもなりかねませんが、当院は日本最大の病床数を持つ大規模病院で、専門性の高い指導医が各診療科にいます。そのため、外科専門医資格を取得するために必要な症例は院内ですべて経験できます。

上部消化器外科の特徴を教えてください

総合消化器外科は、消化管グループと肝胆膵グループに分かれており、さらに消化管グループは上部班と下部班に分かれています。
上部班の特徴は、国内でもいち早く腹腔鏡手術を開始したことです。

私が医師になった当時、外科手術は開腹しかありませんでしたが、国内に腹腔鏡が導入されると、患者さんにできるだけ低侵襲な治療をするには腹腔鏡手術に取り組むべきだと考えました。実際に、開腹手術に比べて腹腔鏡手術は患者さんの回復も早いです。当院に赴任して以降、腹腔鏡手術を数多く経験しており、現在では全手術症例の90%以上が腹腔鏡手術です。

その腹腔鏡手術をさらに進化させるために導入したのが、手術支援ロボット「ダヴィンチ」です。消化器外科領域では、2009~2017年8月までにダヴィンチ支援下手術を616例行っており、国内トップレベルの手術件数となっています。ロボット手術支援は、腹腔鏡手術と比べても合併症の発生率を抑えられる可能性があることに加え、リンパ節郭清の正確性から、高い治療効果が期待できます。
また、上部消化器外科では食道がんの手術も行いますが、食道がんでは、国内で最初にロボット支援手術を導入しました。

愛知県内では胃がんの手術件数が最も多く、多くの症例を経験できる点は研修医にとって大きなメリットだと思います。一方で、すべての病院で腹腔鏡が実施できる環境が整っているわけではありません。後期研修では、提携病院で研修も受けますので、そこで開腹手術の症例も経験し、外科医としての基礎を築いてほしいと思います。

医師の育成にあたって取り組んでいることを教えてください

当院は大学病院として臨床、教育、研究と大きく3つの使命がありますが、なかでも重要視しているのは臨床で、特に周術期の管理の習得です。

また、外科医にとって1番の学びになるのは、手術を見直すことです。当院では毎週火曜日にカンファレンスを行いますが、そこでは腹腔鏡手術の動画を担当医が5~7分に編集して報告します。編集を行うには動画を見返さないといけませんし、動画編集のスキルは学会発表でも必要となるものです。数時間の手術を数分にまとめるのは難しいのですが、なぜここが大事だと思ったのか、その根拠を持つことが大切です。

その他にも、毎週金曜日には若手医師の手術の未編集動画を見ながらビデオクリニックを実施しています。これは自由参加ですが、週1回、4週にわたって皆で手術を見直します。講師以上でないと執刀できない大学病院が多いですが、当院では個々のスキルに合わせて判断しており、助手に入れる機会も多いです。

今後力を入れていきたい取り組みを教えてください

海外ではサージカルトレーニングの一環として、献体によるトレーニングが実施されています。国内では医学生の解剖学実習以外で献体を使用することはできませんでしたが、規制緩和により、厚生労働省でも「実践的な手術手技向上研修事業」が進められてきました。

もちろん厳しい要件はありますが、医療安全の視点からも、先進的かつ高度な手術手技を獲得するためにサージカルトレーニングは欠かせないものであり、現在、厚生労働省でもその普及を推進しています。これまで当院では行っていませんでしたが、今年中には献体を使ったサージカルトレーニングを導入していく方針です。開始にあたっては、献体によるダヴィンチ手術のトレーニングセンターを開設する計画を進めています。

また、当院では関連施設として、外科医がダヴィンチ手術の基本操作を学ぶ「ダヴィンチ低侵襲手術トレーニングセンター」を2012年に開設しています。ダヴィンチ手術の一例目を実施する際には、ダヴィンチ手術の操作をマスターしないといけないため、センターではそのトレーニングを受けることができます。

総合消化器外科の医局の雰囲気はいかがでしょうか?

総合消化器外科に統合されてより学びやすい環境になり、入局者が増えています。現在はおよそ半数が本学の卒業生ですが、他大学からの入局も積極的に受け入れています。医学部教育や医師としての初期教育が異なる人が集まっていますが、学びに来る目的が明確で、モチベーションが高い人が多いと感じます。

今後、医局をどのように発展させていきたいとお考えですか?

消化器外科医は、素養としては上部、下部、肝胆膵のすべてを診られなければいけません。しかし、患者さんが当院の医師に求めているのは専門性です。例えば、胃がんの患者さんであれば、胃がんも大腸がんもそれなりに診られる医師ではなく、胃がん領域で国内トップクラスの医師に診てもらいたいと思うでしょう。

当院は、消化器外科領域において各学会からトップクラスの評価を受けています。その高いレベルを維持するためには専門性を追求し、絶えず先進的なことに取り組む姿勢が求められます。一方では若手医師を育て、すでに確立された手術を後進に伝える役割もあります。その両立は非常に難しく、ある意味で相反するところもあるでしょう。しかしながら私たちはその共存をはかり、腹腔鏡手術やロボット手術などの分野でオピニオンリーダーとして突き進みながらも若手医師を育成し、指導していく体制を構築していきたいと思っています。

最後にメッセージをお願いします

医療においては、各疾患のガイドラインが重視されますが、すべての医師がガイドラインを守っているだけだとしたら、100年経っても改訂されることはありません。ガイドラインは遵守する立場と変えていく立場があると思います。変えていく立場の医師は、常に新しいことを考え、そのエビデンスを積み重ねてよりよいガイドラインの作成につなげなければなりません。私たちはガイドラインを変えていく立場の若手を育てていきたいと考えていますので、同じ志を持った人に入局してもらいたいと思います。

藤田医科大学病院 総合消化器外科

卒業大学構成比
藤田医科大学約50%、他大学約50%
男女構成比
男性90%、女性10%
活動中の主な学会
日本外科学会、日本消化器外科学会、日本胃癌学会、日本食道学会、日本肝胆膵外科学会、日本内視鏡外科学会、日本ロボット外科学会 他

2015年に上部消化器外科、下部消化器外科、肝・脾臓外科、総合外科・膵臓外科の4診療科を総合消化器外科に統合。腹腔鏡の手術で高い実績を持ち、2008年に手術支援ロボット「ダヴィンチ」を導入して以降、ロボット支援手術のパイオニアとして、国内トップクラスを誇る症例数がある。
研修プログラムの詳細は公式ウェブサイトをご覧ください。
藤田医科大学病院 総合消化器外科

藤田医科大学病院総合消化器外科スタッフ紹介(2018年4月現在)

教授
宇山一朗先生
杉岡 篤先生
守瀬善一先生
花井恒一先生
佐藤美信先生
稲葉一樹先生(医局長)
加藤悠太郎先生
准教授
升森宏次先生
勝野秀稔先生
松岡 宏先生
講師
小出欣和先生
中嶋早苗先生
菊地健司先生
辻昭一郎先生
棚橋義直先生
角谷慎一先生
小島正之先生
安田 顕先生
中内雅也先生
助教
遠藤智美先生
塩田規帆先生
中村謙一先生
戸松真琴先生
天野さやか先生
後藤 愛先生
鶴 安浩先生
木口剛造先生
松尾一勲先生
水野真広先生
鄭 栄哲先生
助手
西村彰博先生
服部 豊先生
三井哲史先生
井上誠司先生
犬飼美智子先生
久保伸太郎先生
辻村和紀先生
中野裕子先生

2018年5月掲載

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