埼玉医科大学国際医療センター 脳神経外科(脳血管内治療科) 専門医に聞く ここから描けるキャリア

脳血管内治療専門医を1年で取得
目的を明確に短期集中で学ぶ

埼玉医科大学国際医療センター脳神経外科の脳血管内治療科は、年齢や出身大学を問わず、専門医取得を目指す医師にも広く門戸を開いているのが特徴です。そのキャリアプランと学びについて伺いました。

脳血管内治療を
地域に持ち帰りたい
臨床経験を重ねて
引き出しを増やす

埼玉医科大学国際医療センター
脳神経外科(脳血管内治療科)
助教(臨床フェロー)
米澤 あづさ 先生

埼玉医科大学国際医療センターに入局された経緯を教えてください

私は2008年に琉球大学医学部を卒業し、JA長野厚生連佐久総合病院で初期研修を受けました。初期研修に佐久総合病院を選んだのは、地域医療に力を入れており、科別募集ではなくスーパーローテート方式の研修プログラムがあったからです。専門的な学びも重要ですが、臨床医としての基礎を固めるためには、トータルで患者さんによい医療が提供できなければならないと考え、総合診療を学びました。

後期研修も佐久総合病院で修了しました。もともと外科系志望だったのですが、なかでも脳神経外科を選んだのは、佐久総合病院として、次世代の脳神経外科医が不足していたことがきっかけでした。実際に入局して感じたのは、脳神経外科領域は、手術のバリエーションが非常に多いという点です。難しい手術も多く、1つをクリアできてもまた次のステップがある、学び続けることで一生かけてできる仕事だと感じました。

後期研修修了後、2014年に佐久総合病院で日本脳神経外科学会の専門医の資格を取得しましたが、同院では脳血管内治療ができる医師がいなかったため、治療ができず、指導も受けられませんでした。脳血管内治療の適応となる患者さんのためにも、その技術を持ち帰り、診療体制を整えたいと考えました。佐久総合病院で埼玉医科大学脳神経外科の石原前教授や先輩医師との縁もあり、2015年に助教・臨床フェローとして当センターの脳血管内治療科に入局しました。

埼玉医科大学国際医療センターでの研修の特徴はどのようなところにありますか?

脳神経外科のなかでも診療科が分かれていて症例数も非常に多いので、短期間で集中的に技術を習得できることが最大のメリットだと感じました。資格が取得できても技術が伴っていなければ意味がありませんが、私は「できるだけ早く脳血管内治療を佐久に持ち帰りたい」と、明確な目的を持って入局したので、短期間に実践で使える技術が身につけられるのは大きな魅力でした。

私は当科に入局し、1年で日本脳血管内治療学会専門医試験の受験資格となる症例数を経験でき、資格も取得できました。現在は次のステップである指導医資格の取得を目指して日々トレーニングを積んでいます。

脳神経外科は救急も担うので多忙ですし、そのなかで症例をできるだけ多く経験するとなれば、かなり大変であるのも事実です。しかし逆に考えれば、何年もかけて専門医試験の受験に必要な症例をそろえ、その間も多忙な生活を続けるほうが大変かもしれません。また、拘束時間が長いというイメージがある診療科ですが、以前に比べると脳血管内治療の普及によって手術時間は大幅に短くなっていると思います。

特に女性医師にとっては、短期間で専門医取得という目標を早く達成できたほうが、その後に余裕が生まれると思います。その先のライフプランとして家庭を持ちたい、出産したい、あるいは私のように期間限定で目的を持って学びたい医師にとってはよい選択肢ではないでしょうか。

医局内の雰囲気はどうですか?

出身大学がバラバラで、学閥もないので、非常に入りやすかったです。私は医学部卒業後、地域の基幹病院で初期研修、後期研修を受けたので、大学には自分の所属といえる医局がありませんでした。佐久総合病院では脳神経外科を専攻する医師が少なく、後輩もいなかったのですが、当センターでは脳血管内治療科の仲間たちととても楽しく学べていますし、ここでは研修医に教える機会もあります。人にものを教えるために自分も学ばなくてはならないので、それがとても良い刺激になっています。

当科では、人材育成に力を入れていることもあり、私以外にも脳血管内治療の専門医取得を目的に臨床フェローとして入局している医師もいます。教授をはじめ、医局のみなさんが新しい技術や考え方が入ることをプラスに捉えていると感じます。

学ぶうえで大切にしていること、日頃の臨床で心がけていることは何ですか?

脳血管内のカテーテル治療は、治療前のシミュレーションが非常に大事で、そこで大方が決まるといっても過言ではありません。手技をみることも非常に勉強になりますし、それを自分のものにできるのがカテーテル治療の特徴であり、大きなメリットだと思います。当科は症例が非常に多いので、多くの症例をみてストラテジーの引き出しを増やしたいと思っています。

これは、トラブルシューティングにおいても同様で、トラブルが発生する前に回避する、あるいはトラブルが起きたときに立て直す方法はいろいろあると思います。それがぱっと思いつけばいいのですが、私にはそのセンスはまだあまり磨けていません。だからこそ、他の先生の治療をできるだけ多くみることで、こういう方法もある、あの先生がこうやっていた、こんな選択肢もあるというように、できるだけたくさんの武器を身につけていきたいと思っています。

特に私はこの先、佐久に戻ることが前提で、当科のように多くの助けを得ることができないので、独り立ちして患者さんをよい方向に持っていける脳神経外科医になりたいと思っています。

診療において心がけているのは、患者さんとの話のなかで、医療的に重要なことを聞き取ることです。患者さんは何が大事なことなのか、医師にとって必要な情報かということはわかりません。だからこそ話のなかでうまく引き出せたらと思っています。

最後にメッセージをお願いします

外科はセンスや才能、要領のよさがないとできないと思っている人は多いのではないでしょうか。たしかにセンスや才能がある人は伸びると思いますが、当科の専門研修はそれぞれに合わせてプログラムを作ってくれます。不器用でも、要領があまりよくない人でも、高い技術を身につけ、自信が持てるようになると思います。

私のように専門医や指導医の資格取得を目標としている医師に対しても、年齢や経験に関係なく受け入れてくれる土壌がありますし、教えることに意欲がある指導医がたくさんいます。脳血管内治療だけを集中的に学べるので成長のスピードも早いですし、トレーニングを積みたい人には最適な環境ではないでしょうか。

例えば、今日は開頭手術、明日は脳血管内治療という研修施設も多く、なかには脳血管内治療は月1例しかできないという施設もあると思います。それぞれによさはありますが、特に同時進行で学ぶことが苦手な人は、期間を決めて集中的にやることで成長のスピードが早くなります。やる気のある人はぜひ遠慮せず、見学に来てください。

2018年3月掲載

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