Webサイトが来院動機の患者が増加している
開業時の広告宣伝は、「紙」と「Web」の両方を上手く使いこなすことが大切だ。
まず、紙には近隣へのポスティングチラシと、新聞の折り込みチラシがある。住宅地などに立地し、地域住民をターゲットとした医院に適している。
「開院の1週間前にはポスティング、数日前に折り込みを撒きたいところです。折り込みは、土日に内覧会だとしたら、直近の水・木曜日がベスト。他のチラシが少なく、埋もれにくいためです」(日本医業総研・植村智之氏)
一方のWebは、近年、重要性が増している。植村氏らが患者の調査をしたところ、来院動機がWebだった割合が高いと言う。高齢者をターゲットとした医院でも、家族がWebを見て来院するかどうかを決める。
「1ヵ月前にはWebサイトをプレオープンし、開院日や場所だけでも告知しましょう。開院2~3週間前に本オープンし、内覧会の告知や、医院の特徴などを紹介してください」
注意したいのは、医療法による広告規制だ。紙の広告は、場所と開院日、診療科目、医師名、専門分野などしか記載できない。一方、Webはもう少し記載できる範囲が広い。他院との比較広告は禁じられているが、自院の特徴や専門性の記載は認められている。
「詳しく書くべきは、専門性です。何に強い医師で、どういう診療をしたいかを書き、他院と差別化を図りましょう。専門性の高い医師ほどWebの効果が表れます。一般内科の場合は、医師が顔写真を出してブログを書くなど、人柄をアピールすることが大切です」
Web用の文章は、製薬会社などが供給することもあるが、差別化のためにも、自分で書いてほしい。
「最初は無理でも、開業後はなるべくご自身の文章を載せて更新してください。検索エンジン対策としても、更新頻度の高さは非常に重要です」
Webサイト作りは業者に依頼することになるが、医院用のサイトを手掛けた実績が豊富なところを選びたい。
「デザインにこだわるよりも、医院の強みを訴求するサイト作りができることが大切です。費用は、初期制作費と月の管理料がかかります。中には、初期制作費は0円で、5年間のリース契約のところもありますが、避けた方が無難です。最初はよくてもあとから手を抜かれる恐れがあります」
他の広告手段として、駅看板や電柱広告もあるが、「開業初期には不要です」と植村氏は言う。
「法規制やスペースの関係から、記載できることは限られています。それよりも、Webのリスティング広告に費用をかけた方が効率がいい。駅看板や電柱は、ある程度患者がついて、さらに増やしたくなってからで十分です」
なお、前述の内覧会も広い意味では広告だ。医師が来場者と直接話し、医院をアピールできる貴重な場である。
「来場者の簡単な相談に乗るのは構いませんが、話し込み過ぎは禁物です。検査もできず中途半端な話になり、『このくらいの医院か』と思われて来院につながらない恐れがあります」
- 植村 智之氏
- (株)日本医業総研 東京本社 シニアマネージャー
- これまで約400件のクリニック開業を成功に導いた東京本社の責任者。自身も60件超の開業案件を手掛けている。無理なく事業が軌道に乗る資金計画に定評がある。
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