後悔しないために知っておきたい
開業マニュアル

Phase2 立地選定

診療コンセプトに基づきエリアを絞り込む

立地選定は、開業の成否を大きく左右する。日本医業総研の植村智之氏は、入念な準備が欠かせないと言う。

「まずは先生が希望されるエリアをヒアリングします。十分なマーケティングをして3〜4つのエリアに絞り込み、物件の目星を付けて診療圏分析をします。事業シミュレーションをした上で、十分に経営が成り立つ物件があればそこにしますが、なければ周辺エリアに広げます」

エリアを絞り込む際にキーになるのが、あらかじめ定めた診療コンセプトだ。どんな診療が自院の“売り”になるかを明確化することで、対象とすべき患者層や地域特性が浮かびあがる。それらを考慮してエリアを選ぶわけだが、植村氏は次の4つのタイプがあると言う。

①地域密着タイプ
地域の高齢者を主な患者層とする医院。比較的小さな駅で、周囲に住宅地が広がっているエリアが適している。

②駅前広域タイプ
専門性を売りとする医院。東京であれば渋谷や新宿などのターミナル駅で、広域からの集患を狙う。「内科系の医院は充足しているところが多いため、アレルギー専門など領域を絞って差別化することが大切です」

③都心オフィスタイプ
働き盛りの会社員をターゲットとする医院。心療内科、婦人科など比較的アクティブな患者が来る科に向いている。

④病院連携タイプ
いわゆるお膝元開業。ある循環器の医師は総合病院に勤務していたが、外来の患者は診療所でも対応できるケースが多かった。病院の近くに開業すると、そのまま外来の患者がついて来た。「元勤務先の病院が外来を抑制しようとしていると、お互いにメリットがあります。ただし、風邪の患者など総合病院の外来に少ない層をターゲットにするなら、お膝元開業は適しません」

診療コンセプトに基づきエリアを絞り込む

診療圏分析は、実際に地域を歩いてみる現地調査が大事だ。

「私たちは住民に声を掛け、『この辺に引っ越そうと思っているのですが、いい内科はありませんか』などと尋ねています。すると、『あそこは待ち時間が長いからこっちがいい』といった声を聞くことができます。競合する医院の立地を確認したり、可能であれば患者がどれだけ来ているか、朝夜それぞれ調査します」

その地域が自院の診療コンセプトに合っているか否か、人づての情報やイメージだけでなく、直接確認することが不可欠なのである。

立地選定フローチャート

植村 智之氏

植村 智之
(株)日本医業総研 東京本社 シニアマネージャー
これまで約400件のクリニック開業を成功に導いた東京本社の責任者。自身も60件超の開業案件を手掛けている。無理なく事業が軌道に乗る資金計画に定評がある。