医療界Topics

「日本の未来を守る総合診療医」を主軸に実践的な症例報告も多数

第20回 日本病院総合診療医学会学術総会 開催

複数疾患を持つ高齢者の治療に
病院総合診療医が貢献する

日本病院総合診療医学会は、一定の専門分野を持ちながら、病院内で総合診療を担う病院総合診療医「ホスピタリスト」の学術交流および育成を目標とする。同会理事長の林純氏は、「2010年の設立当初は80名だった会員も、今では1800名を超え、この10年で病院総合診療医の重要性への認識が広まった」と振り返る。

同会の第20回学術総会は林氏が会長を務め、福岡県福岡市で2020年2月21日(金)・22日(土)に開催された。同総会のテーマを「日本の未来を守る総合診療医 高齢者の医療と予防医学の実践」とした理由を、林氏は以下の様に語る。

「日本の医療における喫緊の課題は高齢者医療です。複合疾患や特有の症状も多い高齢者に対し、病院の多様な診療科が緊密に連携して適切な治療を行うには、窓口となる病院総合診療医の存在が欠かせません。私たちの活躍が日本の未来を守る一助になるとの思いを込めました」

同総会の一般演題は症例報告、臨床研究、高齢者医療のカテゴリー別に募集され、2日間で292演題となった(特別講演等を除く)。症例報告は、全身倦怠感、関節痛、嚥下障害、皮膚症状、口内炎など症状別に行われたが、この点も今回の特色と林氏はいう。

「病院の総合診療部(科)は病名ありきでなく、症状にもとづく全人的な診療が基本です。それを意識してもらう意味で症状別の演題募集・発表としました」

先進的研究から臨床の事例まで
広がりのあるテーマで講演

特別講演では、高齢者医療に重点を置くケアミックス病院で理事長を務める原寛氏が「現代養生学」と題し、高齢者の健康長寿に役立つ生活習慣などを紹介。

このほか生活習慣病関連分野への広がりも期待されるプレシジョン(精密)医療、コホート研究による脳梗塞の病態や予防・管理など、先進的な研究例から実践的な解説まで広がりあるテーマで講演が行われた。また日本専門医機構理事長の寺本民生氏は、サブスペシャルティとしての病院総合診療医への期待を語った。

シンポジウムは、診療看護師の現状と今後への期待、診断エラーからの学び、などがテーマ。加えて「病院総合診療医をどう育てるか?」をテーマに、各病院の総合診療部(科)のリーダー、日本医師会や日本内科学会、日本病院会等で専門医制度に携わる委員が、病院総合診療医を育てる教育体制、総合診療専門医のサブスペシャルティ専門医としての検討状況などについて発言した(下表参照)。

林氏は「中堅医師は当学会への参加に積極的。今後は日本の医療の未来を担う若手医師の参加を促したい」とし、そのためにも臨床と症例研究・疫学研究の両面をさらに充実させたいと語った。

日本病院総合診療医学会理事長
同学術総会 会長
林 純
林 純氏
第20回 日本病院総合診療医学会学術総会の特別講演、シンポジウムについて
(敬称略)※プログラムの一部を紹介。シンポジウムの一部はテーマのみ掲載
特別講演 演題 演者
2月21日(金) 現代養生学 原 寛 医療法人原土井病院 理事長
プレシジョン医療の総合診療的展開について 赤司 浩一 九州大学医学部第一内科
(病態修復内科) 教授
2月22日(土) コホート研究からみた脳梗塞の病態と治療 北園 孝成 九州大学大学院病態機能内科学
(第二内科) 教授
病院総合診療医に期待すること 寺本 民生 一般社団法人日本専門医機構
理事長
シンポジウム テーマ
2月21日(金) 『診療看護師導入という未来の医療への提言〜多様な導入の可能性を探る〜』
2月22日(土) 『診断エラー〜日常診療からの学びとclinical pearls』
『病院総合診療専門医をどう育てるか?』
特別発言
横山 彰仁(日本内科学会の観点から)
演者
羽鳥 裕(日本医師会の観点から)
園田 幸生(日本病院会の観点から)
志水 太郎(日本プライマリ・ケア連合学会の観点から)
内藤 俊夫(日本病院総合診療医学会の観点から)
開催概要

第20回日本病院総合診療医学会学術総会
2020年2月21日(金)・22日(土)
会場:ヒルトン福岡シーホーク(福岡県)
主催:一般社団法人 日本病院総合診療医学会
http://hgm-japan.com/

『RECRUIT DOCTOR'S CAREER』2020年4月号掲載
※掲載内容は雑誌掲載号における取材時のものです

  • 林 純氏
    第20回 日本病院総合診療医学会学術総会 開催
    日本病院総合診療医学会は、一定の専門分野を持ちながら、病院内で総合診療を担う病院総合診療医「ホスピタリスト」の学術交流および育成を目標とする。同会理事長の林純氏は、「2010年の設立当初は80名だった会員も、今では1800名を超え、この10年で病院総合診療医の重要性への認識が広まった」と振り返る。
    (『リクルートドクターズキャリア』2020年4月号掲載)
  • 真野俊樹氏
    MQMA第5回研究大会 2020開催
    医療の質と経営(マネジメント)の質を高める実践研究をテーマとするMQMA(一般社団法人 メディカルクオリティマネジメントアカデミー)の研究大会が2月2日(日)に開催された。
    (『リクルートドクターズキャリア』2020年3月号掲載)
  • 井川誠一郎氏
    第27回 日本慢性期医療学会 開催
    1992年設立の介護力強化病院連絡協議会に始まる日本慢性期医療協会(会長:武久洋三氏)は、医師、歯科医師、看護師、多様なコ・メディカルスタッフ、介護スタッフなどが参加する。
    (『リクルートドクターズキャリア』2020年2月号掲載)
  • 前田武志氏
    法務省矯正医官の業務説明会が開催
    2018年1月に東京都昭島市に開設された東日本成人矯正医療センターは、全国の矯正施設(刑務所、拘置所、少年院、少年鑑別所等)に併設された病院・診療所の中でも、ICUなど急性期医療に対応できる設備が整った医療施設の一つ。前身である八王子医療刑務所(東京都八王子市)を移転する形で開設されたものだ。
    (『リクルートドクターズキャリア』2020年1月号掲載)
  • 矢野健次氏
    第66回 日本矯正医学会総会 開催
    全国の矯正施設(刑務所、拘置所、少年院、少年鑑別所等)における矯正医療を扱う日本矯正医学会は1951年に設立。10月24日(木)・25日(金)開催の同総会は第66回を迎えた。学会員は施設内の病院・診療所で被収容者の診療に当たる矯正医官(医師・歯科医師)、看護師、薬剤師、心理技官(臨床心理士)などで、多様な職種からの発表が特色だ。
    (『リクルートドクターズキャリア』2019年12月号掲載)
  • 秋山和宏氏
    “今”の視点で医療と社会を語る 『MED Japan 2019』が開催
    医療・福祉の現場で先進的な活動を続ける人物が社会に提言する場として、日本各地で10年以上続く「MED Japan」。その1年間の集大成となる「MED Japan 2019」が10月6日(日)に開催された。主催の秋山和宏氏は、今回のテーマである「一途一心」をもとに、ひたむきな想いから発せられた言葉が社会を変える力を持つと語る。
    (『リクルートドクターズキャリア』2019年12月号掲載)
  • 森 清氏
    第1回 日本在宅医療連合学会大会が開催
    病院の医師を中心に医療依存度の高い疾患・病態の在宅医療などを扱う「日本在宅医療学会」と、在宅医療に従事する医師を主な会員とする「日本在宅医学会」が合併し、2019年5月に「日本在宅医療連合学会」が発足。初の大会が7月14日・15日に開かれた。
    (『リクルートドクターズキャリア』2019年9月号掲載)
  • 中田智明氏
    第29回 日本心臓核医学会総会・学術大会が開催
    昨年の診療報酬改定では、安定冠動脈疾患の治療戦略における機能的虚血評価の重要性が示された。これを踏まえ、心臓核医学会は「心血管疾患の至的治療戦略の構築における心臓核医学の最適化と進化」をテーマとする学術大会を7月12日・13日に北海道函館市で開催した。
    (『リクルートドクターズキャリア』2019年9月号掲載)
  • 西嶋康浩氏
    厚生労働省主催の医療政策セミナーに医師・医学生が参加し、熱く討論
    厚生労働省が主催し、ディスカッションやプレゼンテーションなどを通じて医療政策の立案プロセスを学ぶ「医療政策セミナー」が、7月20日(土)に開催された。同セミナーは医師または医学生を対象に春(第1回)・夏(第2回)の年2回開催。第2回となる今回はおよそ50人が参加したが、その約半数が医師で、特に初期臨床研修医など若手医師が目立っていた。
    (『リクルートドクターズキャリア』2019年9月号掲載)
  • 石塚尋朗氏
    福島県医師会による医業承継セミナーが開催
    福島県医師会は福島県から委託を受け、後継者不在などによる診療所廃止を減らし、地域医療の担い手を確保する目的で「医業承継バンク(以下バンク)」を2019年2月に開設。医業の譲渡を希望する医師と、承継して開業医となる医師とのマッチングを進めている。
    (『リクルートドクターズキャリア』2019年6月号掲載)
  • 真野俊樹氏
    第5回 MQMA研究大会 2019開催
    医師や医療機関の経営層、さまざまな医療関連企業、研究者などが参加し、医療の質と経営の質を高める実践研究・人材育成に取り組むMQMA(一般社団法人メディカルクオリティマネジメントアカデミー)。その第5回研究大会が、2月2日(土)・3日(日)に開催された。
    (『リクルートドクターズキャリア』2019年3月号掲載)
  • 東小薗 誠氏
    第65回 日本矯正医学会総会 開催
    10月25日(木)・26日(金)、第65回となる日本矯正医学会総会が開催された。同会には全国の矯正施設(刑務所、拘置所、少年院、少年鑑別所等)に設置される病院・診療所の医師、看護師、薬剤師、心理技官(臨床心理士)などが参加しており、両日の一般講演でも医師のほか各職種から多様な発表が相次いだ。
    (『リクルートドクターズキャリア』2018年12月号掲載)
  • 秋山和宏氏
    医療人や社会起業家らによる『MED Japan 2018』が開催
    今回で第10回となるMED Japan(旧名MEDプレゼン)が10月14日に行われた。同会は医療・福祉の現場で新たな提案と実践を続ける人材が社会に提言を行う。主催の秋山和宏氏はそれを増幅して広く届ける場がMEDの役割だという。
    (『リクルートドクターズキャリア』2018年12月号掲載)
  • 矢口智子氏
    日本医師事務作業補助研究会 全国大会が開催
    9月15日(土)、広島コンベンションホールで日本医師事務作業補助研究会 第8回 全国大会(大会長 増成倫子氏)が開催された。2011年の第1回全国例会以来、年々規模は拡大し、今回は800人近くの参加となった。
    (『リクルートドクターズキャリア』2018年11月号掲載)
  • 林 真輝氏
    法務省矯正医官業務説明会が大阪で初開催
    7月28日(土)、大阪医療刑務所で法務省大阪矯正管区による矯正医官業務説明会および同所見学会が行われた。矯正医官とは法務省所轄の矯正施設(刑務所、拘置所、少年院等)の病院や診療所で診療する医師を指す。同会は法務省の担当者が業務内容を説明するだけでなく、矯正医官自らが参加者と質疑応答を行う等、具体的な情報を提供するのが特色。
    (『リクルートドクターズキャリア』2018年9月号掲載)
  • 森 厚嘉氏
    医師の専門知識・スキルが生かされるこれからの予防医療
    2006年から2015年の10年間で2日ドックを行う病院が減少する一方、1日ドックを実施する施設は2倍以上に増えている(公益社団法人 日本人間ドック学会『2015年 人間ドックの現況』)。さらに近年は午前中で検査から説明・指導まで終えるタイプのドックも多い。
    (『リクルートドクターズキャリア』2018年6月号掲載)
  • 相澤孝夫氏
    長野県内で活動を希望する小平選手にチャンスを提供した相澤病院の考えとは
    今年2月9日から25日に行われた平昌五輪で、スピードスケート女子500mで金メダル、1000mで銀メダルなど大活躍した小平奈緒選手。それとともに話題になったのが、小平選手が勤める相澤病院(長野県)だろう。同院は長く地域医療に貢献してきたが、理事長の相澤孝夫氏はその歴史の一コマをこう振り返る。
    (『リクルートドクターズキャリア』2018年5月号掲載)
  • 真野俊樹氏
    第4回MQMA学術総会 2月研究大会開催
    海外医療機関の経営や国際的な第三者認証などの研究を通じ、医療と経営の質を高める人材育成を目指すMQMA(一般社団法人メディカルクオリティマネジメントアカデミー)。その第4回学術総会が2月3日(土)・4日(日)に開催された。
    (『リクルートドクターズキャリア』2018年3月号掲載)
  • 道永麻里氏
    第6回『赤ひげ大賞』は5名が大賞、2名が特別賞を受賞
    各地で地道に診療を続ける医師を対象とした「赤ひげ大賞」の表彰式が、2月9日(金)に行われた。同賞を主催する日本医師会の道永麻里氏は賞の趣旨をこう語る。
    (『リクルートドクターズキャリア』2018年3月号掲載)
  • 濱中洋平氏
    今後のキャリアを考えるための知識を習得「1日で学ぶ病院経営講座」開講
    専門医取得を中心に、専門性の向上に熱心な医師は多いだろう。加えて地域連携、多職種連携が重視される時代では、医師はマネジメント力の習得も必須となりつつある。その中でも国の医療政策、医療機関の経営戦略、診療科の変化などから今後の医療を俯瞰的に捉え、医療現場で主導的な役割を担う力を養う講座が2017年11月30日(木)に開講された。
    (『リクルートドクターズキャリア』2018年1月号掲載)