医療界Topics

13時までにすべて終わるスピードドックをライターが体験

医師の専門知識・スキルが生かされる
これからの予防医療

検査結果に対する診断や内視鏡検査など医師の専門性を生かせる部分も多い。

受診しやすい人間ドックで
予防医療の普及に貢献する

2006年から2015年の10年間で2日ドックを行う病院が減少する一方、1日ドックを実施する施設は2倍以上に増えている(公益社団法人 日本人間ドック学会『2015年 人間ドックの現況』)。さらに近年は午前中で検査から説明・指導まで終えるタイプのドックも多い。

今回、メディア向け体験ツアーが、「世界保健デー」にちなんで開催されたので筆者も参加した。主催は聖隷予防検診センター(静岡県浜松市)で、人間ドックと一般健診を通じて、日本の医療政策の重点項目である予防医療に注力していることで知られている。

同センターは「スピードドック」の名称で、検査・診察・結果説明・個別指導が当日13時までに終わる人間ドックを提供している。検査日の利用者数やオプション検査の選択で異なるが、筆者がこのドックを受けたときは8時頃に始まった検査は9時過ぎに終了。昼食前に医師の説明や看護師等からの個別指導も終わるというペースだった。

同センター所長の森厚嘉氏は利用者のニーズの多様化に応え、宿泊ドックから1日ドック、そしてスピードドックへと受診の選択肢を広げてきたという。

「結果は郵送せず、検査でわかった課題や生活の改善点を直接伝えることも重視して、時間内に終わらせています。国の施策も健康診断で健康を維持し、病気の早期発見を目指す予防医療の重視ですから、受診しやすい人間ドックのニーズは今後も高まるでしょう」

異なるバックグラウンドの
常勤医10人がセンターに従事

同センターは隣接する総合病院 聖隷三方原病院と同法人だが、病院とは異なる保健事業部に属し、独自に常勤医10人を擁している(2018年5月現在)。近隣の大学病院等の派遣・非常勤医も加えると数十人に上るが、基盤となる業務は常勤医が主に担っていると森氏。

「私の専門は外科ですが、ほかにも消化器内科、内分泌内科、泌尿器科、心臓血管外科など多様なバックグラウンドの医師が業務に当たっています。検査結果の判断が難しい場合は、それに適した経験を持つ医師にアドバイスを求めることができるのも強みの一つです。また、他のスタッフと共有することで、専門知識やスキルを検査のクオリティーの維持・向上に役立てられるのです」

地域包括ケアシステムの実現を目指し、高齢者を地域の中で支える体制が求められる中、いかにして健康寿命を延ばすかは喫緊の課題となっている。

「それだけに人間ドックや健診に携わる医師の役割は重要で、やりがいのあるキャリアの一つだと思います。また当センターのコンセプトは心休まる癒しの場所『オアシス』で、これは利用者だけでなく、医師やスタッフもまた来たくなる場所、という意味も込めています」

保健事業部には合計4つの健診施設があり、人間ドックと一般健診を合算すると年間のべ約56万人を超える利用者がいる。こうした貴重なデータの有効利用も考えると、今だけでなく未来の健康を創るのも健康診断の役割といえるだろう。

聖隷予防検診センター
所長
森 厚嘉
森 厚嘉氏
聖隷予防検診センターで行うスピードドック

同センターの1日人間ドックをさらに効率化。追加料金1,080円(税込)の設定で、検査内容を変えず、13時までに医師の結果説明、看護師や栄養士による個別指導まで終える。利用者の昼食は説明・指導前または終了後となる。

施設概要

社会福祉法人 聖隷福祉事業団
保健事業部 聖隷予防検診センター

所在地:静岡県浜松市北区三方原町3453-1
開設年:1976年
http://www.seirei.or.jp/hoken/yoken-center/

『RECRUIT DOCTOR'S CAREER』2018年6月号掲載
※掲載内容は雑誌掲載号における取材時のものです

  • 林 純氏
    第20回 日本病院総合診療医学会学術総会 開催
    日本病院総合診療医学会は、一定の専門分野を持ちながら、病院内で総合診療を担う病院総合診療医「ホスピタリスト」の学術交流および育成を目標とする。同会理事長の林純氏は、「2010年の設立当初は80名だった会員も、今では1800名を超え、この10年で病院総合診療医の重要性への認識が広まった」と振り返る。
    (『リクルートドクターズキャリア』2020年4月号掲載)
  • 真野俊樹氏
    MQMA第5回研究大会 2020開催
    医療の質と経営(マネジメント)の質を高める実践研究をテーマとするMQMA(一般社団法人 メディカルクオリティマネジメントアカデミー)の研究大会が2月2日(日)に開催された。
    (『リクルートドクターズキャリア』2020年3月号掲載)
  • 井川誠一郎氏
    第27回 日本慢性期医療学会 開催
    1992年設立の介護力強化病院連絡協議会に始まる日本慢性期医療協会(会長:武久洋三氏)は、医師、歯科医師、看護師、多様なコ・メディカルスタッフ、介護スタッフなどが参加する。
    (『リクルートドクターズキャリア』2020年2月号掲載)
  • 前田武志氏
    法務省矯正医官の業務説明会が開催
    2018年1月に東京都昭島市に開設された東日本成人矯正医療センターは、全国の矯正施設(刑務所、拘置所、少年院、少年鑑別所等)に併設された病院・診療所の中でも、ICUなど急性期医療に対応できる設備が整った医療施設の一つ。前身である八王子医療刑務所(東京都八王子市)を移転する形で開設されたものだ。
    (『リクルートドクターズキャリア』2020年1月号掲載)
  • 矢野健次氏
    第66回 日本矯正医学会総会 開催
    全国の矯正施設(刑務所、拘置所、少年院、少年鑑別所等)における矯正医療を扱う日本矯正医学会は1951年に設立。10月24日(木)・25日(金)開催の同総会は第66回を迎えた。学会員は施設内の病院・診療所で被収容者の診療に当たる矯正医官(医師・歯科医師)、看護師、薬剤師、心理技官(臨床心理士)などで、多様な職種からの発表が特色だ。
    (『リクルートドクターズキャリア』2019年12月号掲載)
  • 秋山和宏氏
    “今”の視点で医療と社会を語る 『MED Japan 2019』が開催
    医療・福祉の現場で先進的な活動を続ける人物が社会に提言する場として、日本各地で10年以上続く「MED Japan」。その1年間の集大成となる「MED Japan 2019」が10月6日(日)に開催された。主催の秋山和宏氏は、今回のテーマである「一途一心」をもとに、ひたむきな想いから発せられた言葉が社会を変える力を持つと語る。
    (『リクルートドクターズキャリア』2019年12月号掲載)
  • 森 清氏
    第1回 日本在宅医療連合学会大会が開催
    病院の医師を中心に医療依存度の高い疾患・病態の在宅医療などを扱う「日本在宅医療学会」と、在宅医療に従事する医師を主な会員とする「日本在宅医学会」が合併し、2019年5月に「日本在宅医療連合学会」が発足。初の大会が7月14日・15日に開かれた。
    (『リクルートドクターズキャリア』2019年9月号掲載)
  • 中田智明氏
    第29回 日本心臓核医学会総会・学術大会が開催
    昨年の診療報酬改定では、安定冠動脈疾患の治療戦略における機能的虚血評価の重要性が示された。これを踏まえ、心臓核医学会は「心血管疾患の至的治療戦略の構築における心臓核医学の最適化と進化」をテーマとする学術大会を7月12日・13日に北海道函館市で開催した。
    (『リクルートドクターズキャリア』2019年9月号掲載)
  • 西嶋康浩氏
    厚生労働省主催の医療政策セミナーに医師・医学生が参加し、熱く討論
    厚生労働省が主催し、ディスカッションやプレゼンテーションなどを通じて医療政策の立案プロセスを学ぶ「医療政策セミナー」が、7月20日(土)に開催された。同セミナーは医師または医学生を対象に春(第1回)・夏(第2回)の年2回開催。第2回となる今回はおよそ50人が参加したが、その約半数が医師で、特に初期臨床研修医など若手医師が目立っていた。
    (『リクルートドクターズキャリア』2019年9月号掲載)
  • 石塚尋朗氏
    福島県医師会による医業承継セミナーが開催
    福島県医師会は福島県から委託を受け、後継者不在などによる診療所廃止を減らし、地域医療の担い手を確保する目的で「医業承継バンク(以下バンク)」を2019年2月に開設。医業の譲渡を希望する医師と、承継して開業医となる医師とのマッチングを進めている。
    (『リクルートドクターズキャリア』2019年6月号掲載)
  • 真野俊樹氏
    第5回 MQMA研究大会 2019開催
    医師や医療機関の経営層、さまざまな医療関連企業、研究者などが参加し、医療の質と経営の質を高める実践研究・人材育成に取り組むMQMA(一般社団法人メディカルクオリティマネジメントアカデミー)。その第5回研究大会が、2月2日(土)・3日(日)に開催された。
    (『リクルートドクターズキャリア』2019年3月号掲載)
  • 東小薗 誠氏
    第65回 日本矯正医学会総会 開催
    10月25日(木)・26日(金)、第65回となる日本矯正医学会総会が開催された。同会には全国の矯正施設(刑務所、拘置所、少年院、少年鑑別所等)に設置される病院・診療所の医師、看護師、薬剤師、心理技官(臨床心理士)などが参加しており、両日の一般講演でも医師のほか各職種から多様な発表が相次いだ。
    (『リクルートドクターズキャリア』2018年12月号掲載)
  • 秋山和宏氏
    医療人や社会起業家らによる『MED Japan 2018』が開催
    今回で第10回となるMED Japan(旧名MEDプレゼン)が10月14日に行われた。同会は医療・福祉の現場で新たな提案と実践を続ける人材が社会に提言を行う。主催の秋山和宏氏はそれを増幅して広く届ける場がMEDの役割だという。
    (『リクルートドクターズキャリア』2018年12月号掲載)
  • 矢口智子氏
    日本医師事務作業補助研究会 全国大会が開催
    9月15日(土)、広島コンベンションホールで日本医師事務作業補助研究会 第8回 全国大会(大会長 増成倫子氏)が開催された。2011年の第1回全国例会以来、年々規模は拡大し、今回は800人近くの参加となった。
    (『リクルートドクターズキャリア』2018年11月号掲載)
  • 林 真輝氏
    法務省矯正医官業務説明会が大阪で初開催
    7月28日(土)、大阪医療刑務所で法務省大阪矯正管区による矯正医官業務説明会および同所見学会が行われた。矯正医官とは法務省所轄の矯正施設(刑務所、拘置所、少年院等)の病院や診療所で診療する医師を指す。同会は法務省の担当者が業務内容を説明するだけでなく、矯正医官自らが参加者と質疑応答を行う等、具体的な情報を提供するのが特色。
    (『リクルートドクターズキャリア』2018年9月号掲載)
  • 森 厚嘉氏
    医師の専門知識・スキルが生かされるこれからの予防医療
    2006年から2015年の10年間で2日ドックを行う病院が減少する一方、1日ドックを実施する施設は2倍以上に増えている(公益社団法人 日本人間ドック学会『2015年 人間ドックの現況』)。さらに近年は午前中で検査から説明・指導まで終えるタイプのドックも多い。
    (『リクルートドクターズキャリア』2018年6月号掲載)
  • 相澤孝夫氏
    長野県内で活動を希望する小平選手にチャンスを提供した相澤病院の考えとは
    今年2月9日から25日に行われた平昌五輪で、スピードスケート女子500mで金メダル、1000mで銀メダルなど大活躍した小平奈緒選手。それとともに話題になったのが、小平選手が勤める相澤病院(長野県)だろう。同院は長く地域医療に貢献してきたが、理事長の相澤孝夫氏はその歴史の一コマをこう振り返る。
    (『リクルートドクターズキャリア』2018年5月号掲載)
  • 真野俊樹氏
    第4回MQMA学術総会 2月研究大会開催
    海外医療機関の経営や国際的な第三者認証などの研究を通じ、医療と経営の質を高める人材育成を目指すMQMA(一般社団法人メディカルクオリティマネジメントアカデミー)。その第4回学術総会が2月3日(土)・4日(日)に開催された。
    (『リクルートドクターズキャリア』2018年3月号掲載)
  • 道永麻里氏
    第6回『赤ひげ大賞』は5名が大賞、2名が特別賞を受賞
    各地で地道に診療を続ける医師を対象とした「赤ひげ大賞」の表彰式が、2月9日(金)に行われた。同賞を主催する日本医師会の道永麻里氏は賞の趣旨をこう語る。
    (『リクルートドクターズキャリア』2018年3月号掲載)
  • 濱中洋平氏
    今後のキャリアを考えるための知識を習得「1日で学ぶ病院経営講座」開講
    専門医取得を中心に、専門性の向上に熱心な医師は多いだろう。加えて地域連携、多職種連携が重視される時代では、医師はマネジメント力の習得も必須となりつつある。その中でも国の医療政策、医療機関の経営戦略、診療科の変化などから今後の医療を俯瞰的に捉え、医療現場で主導的な役割を担う力を養う講座が2017年11月30日(木)に開講された。
    (『リクルートドクターズキャリア』2018年1月号掲載)