医療界Topics
慢性期医療に必要なエビデンスの構築を目指し、活発に討議
第27回 日本慢性期医療学会 開催
看護師やコ・メディカルも参加し、
さまざまな経験を共有する
1992年設立の介護力強化病院連絡協議会に始まる日本慢性期医療協会(会長:武久洋三氏)は、医師、歯科医師、看護師、多様なコ・メディカルスタッフ、介護スタッフなどが参加する。
2019年12月3日(火)・4日(水)には学術集会である第27回日本慢性期医療学会を開催。「“令和”時代の慢性期医療 ~スキルとエビデンスの融合を目指して~」をテーマに600超の演題が講演され、約2500名の参加者が活発な発表・討議を行った。
学会長の井川誠一郎氏は、壮年期の急性期医療を前提としたエビデンスは慢性期医療への適用が難しいケースも多いとし、「当学会を、現場で培った経験をデータにもとづき議論し、慢性期医療のゴールデンスタンダードを構築する機会にしたい」と語る。
「そのため今大会では、ポスターセッション前の30分間を発表者とのディスカッションに充てるなど、討議の機会をできる限り増やすよう工夫しました」
3日の記念講演は、医療・介護の現場でも導入が進む装着型サイボーグ「HAL®」の開発者、山海嘉之氏を招いて行われた。山海氏はIoTとIoH(Internet of Human)による医療の個別化・最適化といった将来像に触れた後、医療用「HAL®」により神経難病の患者の歩行が大きく改善された例などを紹介。質疑応答時は脊椎損傷への適用などの期待も寄せられていた。
また同学会では2日間で5つのシンポジウムが開催された(下表参照)。「“令和”時代の慢性期医療はこうなる!」では、行政や研究者から在宅での看取りも含めた慢性期医療の重要性などが語られ、急性期医療と慢性期医療の連携について、それぞれの立場から実践例も示された。
さらに井川氏は痛みをテーマとするシンポジウムを設け、痛みの治療の専門家をシンポジストとした狙いをこう話す。
「体の痛みは動きを妨げてフレイル等の要因になるほか、歯痛による栄養の偏りやポリファーマシーの問題なども引き起こします。慢性期医療における痛みの影響は広範で、その重要性と対応を改めて考えてもらうことが必要なのです」
一般演題はポスター会場を含む11会場で演じられ、「維持期リハ」「地域包括ケア」「チーム医療」「ACP」など実践的なテーマでの発表・質疑応答が続いた。
慢性期医療に欠かせない看護師やコ・メディカルは、同学会でも数多く発表を行っており、特定看護師の活躍例を扱うセッションなども設けたと井川氏。
「こうした学術集会は多職種が持ち寄った経験を共有するチャンス。討議を通じて慢性期医療で本当に役立つエビデンスを生み出す場にしたいと考えています」
- 第27回 日本慢性期医療学会
学会長
- ●第27回 日本慢性期医療学会の記念講演、シンポジウムについて(敬称略)
※プログラムの一部を紹介。シンポジウム2~5はテーマのみを掲載 -
記念講演 12月3日(火) サイバニクスが拓く医療・介護最前線、そして未来への取り組み 山海嘉之 筑波大学サイバニクス研究センター 教授・研究統括/CYBERDYNE株式会社 代表取締役社長・CEO シンポジウム1 12月3日(火)
「“令和”時代の慢性期医療はこうなる!」・医療を取り巻く環境変化の中での慢性期医療への期待について/田中規倫(厚生労働省医政局総務課医療政策企画官)
・超高齢社会における慢性期医療のあり方を考える/松田晋哉(産業医科大学医学部公衆衛生学 教授)
・急性期と慢性期の質の高い連携を目指して 〜地域における感染症と栄養問題への取り組み〜/ 上西紀夫(日本長期急性期病床研究会 会長/高度急性期医療センター 公立昭和病院 院長)
・要介護者を減らすという新たな視点でさらなる医療介護の連携を図る/武久洋三(日本慢性期医療協会 会長/博愛記念病院 理事長)シンポジウム2 12月3日(火)
「療養病床の今後を考える 〜選択と集中! 療養病床の生きる道〜」シンポジウム3 12月4日(水)
「慢性期医療におけるペインコントロール」シンポジウム4 12月4日(水)
「今後どうなる介護医療院 ~介護医療院の深化と進化~」シンポジウム5 12月4日(水)
「ACP(アドバンス・ケア・プラニング)~その理解と実践~」
- ●開催概要
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第27回 日本慢性期医療学会
2019年12月3日(火)・4日(水)
会場:大阪国際会議場(大阪府大阪市)
主催:一般社団法人 日本慢性期医療協会
https://jamcf.jp
『RECRUIT DOCTOR'S CAREER』2020年2月号掲載
※掲載内容は雑誌掲載号における取材時のものです
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- 第20回 日本病院総合診療医学会学術総会 開催
- 日本病院総合診療医学会は、一定の専門分野を持ちながら、病院内で総合診療を担う病院総合診療医「ホスピタリスト」の学術交流および育成を目標とする。同会理事長の林純氏は、「2010年の設立当初は80名だった会員も、今では1800名を超え、この10年で病院総合診療医の重要性への認識が広まった」と振り返る。
- (『リクルートドクターズキャリア』2020年4月号掲載)
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- MQMA第5回研究大会 2020開催
- 医療の質と経営(マネジメント)の質を高める実践研究をテーマとするMQMA(一般社団法人 メディカルクオリティマネジメントアカデミー)の研究大会が2月2日(日)に開催された。
- (『リクルートドクターズキャリア』2020年3月号掲載)
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- 第27回 日本慢性期医療学会 開催
- 1992年設立の介護力強化病院連絡協議会に始まる日本慢性期医療協会(会長:武久洋三氏)は、医師、歯科医師、看護師、多様なコ・メディカルスタッフ、介護スタッフなどが参加する。
- (『リクルートドクターズキャリア』2020年2月号掲載)
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- 法務省矯正医官の業務説明会が開催
- 2018年1月に東京都昭島市に開設された東日本成人矯正医療センターは、全国の矯正施設(刑務所、拘置所、少年院、少年鑑別所等)に併設された病院・診療所の中でも、ICUなど急性期医療に対応できる設備が整った医療施設の一つ。前身である八王子医療刑務所(東京都八王子市)を移転する形で開設されたものだ。
- (『リクルートドクターズキャリア』2020年1月号掲載)
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- 第66回 日本矯正医学会総会 開催
- 全国の矯正施設(刑務所、拘置所、少年院、少年鑑別所等)における矯正医療を扱う日本矯正医学会は1951年に設立。10月24日(木)・25日(金)開催の同総会は第66回を迎えた。学会員は施設内の病院・診療所で被収容者の診療に当たる矯正医官(医師・歯科医師)、看護師、薬剤師、心理技官(臨床心理士)などで、多様な職種からの発表が特色だ。
- (『リクルートドクターズキャリア』2019年12月号掲載)
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- “今”の視点で医療と社会を語る 『MED Japan 2019』が開催
- 医療・福祉の現場で先進的な活動を続ける人物が社会に提言する場として、日本各地で10年以上続く「MED Japan」。その1年間の集大成となる「MED Japan 2019」が10月6日(日)に開催された。主催の秋山和宏氏は、今回のテーマである「一途一心」をもとに、ひたむきな想いから発せられた言葉が社会を変える力を持つと語る。
- (『リクルートドクターズキャリア』2019年12月号掲載)
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- 第1回 日本在宅医療連合学会大会が開催
- 病院の医師を中心に医療依存度の高い疾患・病態の在宅医療などを扱う「日本在宅医療学会」と、在宅医療に従事する医師を主な会員とする「日本在宅医学会」が合併し、2019年5月に「日本在宅医療連合学会」が発足。初の大会が7月14日・15日に開かれた。
- (『リクルートドクターズキャリア』2019年9月号掲載)
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- 第29回 日本心臓核医学会総会・学術大会が開催
- 昨年の診療報酬改定では、安定冠動脈疾患の治療戦略における機能的虚血評価の重要性が示された。これを踏まえ、心臓核医学会は「心血管疾患の至的治療戦略の構築における心臓核医学の最適化と進化」をテーマとする学術大会を7月12日・13日に北海道函館市で開催した。
- (『リクルートドクターズキャリア』2019年9月号掲載)
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- 厚生労働省主催の医療政策セミナーに医師・医学生が参加し、熱く討論
- 厚生労働省が主催し、ディスカッションやプレゼンテーションなどを通じて医療政策の立案プロセスを学ぶ「医療政策セミナー」が、7月20日(土)に開催された。同セミナーは医師または医学生を対象に春(第1回)・夏(第2回)の年2回開催。第2回となる今回はおよそ50人が参加したが、その約半数が医師で、特に初期臨床研修医など若手医師が目立っていた。
- (『リクルートドクターズキャリア』2019年9月号掲載)
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- 福島県医師会による医業承継セミナーが開催
- 福島県医師会は福島県から委託を受け、後継者不在などによる診療所廃止を減らし、地域医療の担い手を確保する目的で「医業承継バンク(以下バンク)」を2019年2月に開設。医業の譲渡を希望する医師と、承継して開業医となる医師とのマッチングを進めている。
- (『リクルートドクターズキャリア』2019年6月号掲載)
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- 第5回 MQMA研究大会 2019開催
- 医師や医療機関の経営層、さまざまな医療関連企業、研究者などが参加し、医療の質と経営の質を高める実践研究・人材育成に取り組むMQMA(一般社団法人メディカルクオリティマネジメントアカデミー)。その第5回研究大会が、2月2日(土)・3日(日)に開催された。
- (『リクルートドクターズキャリア』2019年3月号掲載)
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- 第65回 日本矯正医学会総会 開催
- 10月25日(木)・26日(金)、第65回となる日本矯正医学会総会が開催された。同会には全国の矯正施設(刑務所、拘置所、少年院、少年鑑別所等)に設置される病院・診療所の医師、看護師、薬剤師、心理技官(臨床心理士)などが参加しており、両日の一般講演でも医師のほか各職種から多様な発表が相次いだ。
- (『リクルートドクターズキャリア』2018年12月号掲載)
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- 医療人や社会起業家らによる『MED Japan 2018』が開催
- 今回で第10回となるMED Japan(旧名MEDプレゼン)が10月14日に行われた。同会は医療・福祉の現場で新たな提案と実践を続ける人材が社会に提言を行う。主催の秋山和宏氏はそれを増幅して広く届ける場がMEDの役割だという。
- (『リクルートドクターズキャリア』2018年12月号掲載)
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- 日本医師事務作業補助研究会 全国大会が開催
- 9月15日(土)、広島コンベンションホールで日本医師事務作業補助研究会 第8回 全国大会(大会長 増成倫子氏)が開催された。2011年の第1回全国例会以来、年々規模は拡大し、今回は800人近くの参加となった。
- (『リクルートドクターズキャリア』2018年11月号掲載)
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- 法務省矯正医官業務説明会が大阪で初開催
- 7月28日(土)、大阪医療刑務所で法務省大阪矯正管区による矯正医官業務説明会および同所見学会が行われた。矯正医官とは法務省所轄の矯正施設(刑務所、拘置所、少年院等)の病院や診療所で診療する医師を指す。同会は法務省の担当者が業務内容を説明するだけでなく、矯正医官自らが参加者と質疑応答を行う等、具体的な情報を提供するのが特色。
- (『リクルートドクターズキャリア』2018年9月号掲載)
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- 医師の専門知識・スキルが生かされるこれからの予防医療
- 2006年から2015年の10年間で2日ドックを行う病院が減少する一方、1日ドックを実施する施設は2倍以上に増えている(公益社団法人 日本人間ドック学会『2015年 人間ドックの現況』)。さらに近年は午前中で検査から説明・指導まで終えるタイプのドックも多い。
- (『リクルートドクターズキャリア』2018年6月号掲載)
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- 長野県内で活動を希望する小平選手にチャンスを提供した相澤病院の考えとは
- 今年2月9日から25日に行われた平昌五輪で、スピードスケート女子500mで金メダル、1000mで銀メダルなど大活躍した小平奈緒選手。それとともに話題になったのが、小平選手が勤める相澤病院(長野県)だろう。同院は長く地域医療に貢献してきたが、理事長の相澤孝夫氏はその歴史の一コマをこう振り返る。
- (『リクルートドクターズキャリア』2018年5月号掲載)
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- 第4回MQMA学術総会 2月研究大会開催
- 海外医療機関の経営や国際的な第三者認証などの研究を通じ、医療と経営の質を高める人材育成を目指すMQMA(一般社団法人メディカルクオリティマネジメントアカデミー)。その第4回学術総会が2月3日(土)・4日(日)に開催された。
- (『リクルートドクターズキャリア』2018年3月号掲載)
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- 第6回『赤ひげ大賞』は5名が大賞、2名が特別賞を受賞
- 各地で地道に診療を続ける医師を対象とした「赤ひげ大賞」の表彰式が、2月9日(金)に行われた。同賞を主催する日本医師会の道永麻里氏は賞の趣旨をこう語る。
- (『リクルートドクターズキャリア』2018年3月号掲載)
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- 今後のキャリアを考えるための知識を習得「1日で学ぶ病院経営講座」開講
- 専門医取得を中心に、専門性の向上に熱心な医師は多いだろう。加えて地域連携、多職種連携が重視される時代では、医師はマネジメント力の習得も必須となりつつある。その中でも国の医療政策、医療機関の経営戦略、診療科の変化などから今後の医療を俯瞰的に捉え、医療現場で主導的な役割を担う力を養う講座が2017年11月30日(木)に開講された。
- (『リクルートドクターズキャリア』2018年1月号掲載)