医療界Topics

地域医療を支えてきた医師の功績を顕彰

第6回『赤ひげ大賞』は5名が大賞、2名が特別賞を受賞

第6回赤ひげ大賞および選考委員特別賞の受賞者。
左から鎌田氏、藤巻氏、河井氏、塚本氏、松原氏、水上氏、佐藤氏(受賞理由等は下表を参照)。

外部選考委員も加わり
一般の目線からも活動を評価

各地で地道に診療を続ける医師を対象とした「赤ひげ大賞」の表彰式が、2月9日(金)に行われた。同賞を主催する日本医師会の道永麻里氏は賞の趣旨をこう語る。

「身近なところで地道に診療してくれる医師こそ、患者さんにとってありがたい存在。この賞は普段はあまりスポットの当たらない方々の活動を顕彰し、ご本人の励みとしていただくことも一つの目的です」

受賞者5名は各都道府県の医師会長による推薦後、主催者のほか外部選考委員も交えた選考を経て決定され、2017年11月に日医会見や産経新聞紙上で発表された。さらに今回は選考委員の強い要望で、東日本大震災で被災者支援に活躍され、その後も熱心に地域医療に取り組む2名の医師が選考委員特別賞を受賞。

「ご本人はもちろん、ご家族や患者さんも大変喜ばれ、地元メディアも好意的に取り上げるなど、地域に根ざした医療活動を一般の方に広く知っていただくという目的も果たせていると思います」

また道永氏は若手医師も赤ひげ大賞を受賞した医師の活動を知り、それぞれの将来像の参考にしてほしいという。

「惜しくも受賞を逃されましたが、50年以上も消化器疾患の診療を続け、カルテや病理組織診断も含めた手術切除材料をすべて保存している方も候補でした。今後は若手医師、臨床研究にも力を入れる方など、候補者の幅をさらに広げたいですね」

表彰式は日本医師会会長の横倉義武氏をはじめとする主催者挨拶の後、道永氏が選考過程を述べ、31名の候補者から選ばれた大賞5名、特別賞2名それぞれの受賞理由を紹介した。さらに受賞者一人ひとりへの表彰状・副賞授与、および挨拶が行われ、記念撮影で幕を閉じた。

第4回から表彰式の参加を希望した医学生も加わった。受賞者のスピーチやレセプションでの歓談などから、地域に根ざした医療への関心が高まることだろう。

日本医師会会長の横倉氏による挨拶。赤ひげ大賞を設けた目的のほか、かかりつけ医の重要性などを語った。

公益社団法人
日本医師会 常任理事
道永麻里
道永麻里氏
第6回「日本医師会 赤ひげ大賞」受賞者 (敬称略)
(以下の受賞者の順序は北から・年齢は2018年2月9日現在)
藤巻 幹夫(90歳)
新潟県 藤巻医院理事(医師)
診療地区は市内でも過疎高齢化が最も進む中山間地域の特別豪雪地帯。新潟県中越地震の際は自院も被害を受けたが、被災者の診察に懸命に当たった。また40年以上にわたり予防接種に携わる他、学校医も担っている。
河井 文健(77歳)
静岡県 河井医院理事長・院長(医師)
地域唯一の救急告示診療所で、25年間昼夜の区別なしに救急医療に取り組む。2次救急を担う病院ができた後も搬送までの時間を考慮し、初期対応に尽力。病院と連携して検査機器の共同利用や遠隔読影等にも対応する。
塚本 眞言(67歳)
岡山県 塚本内科医院理事長・院長(医師)
小規模多機能施設を医院に併設し、住み慣れた地域での看取りに尽力。住民主体の組織「円城安心ネット」を立ち上げ、地域ぐるみの支援活動も行う。医療機関への送迎等、地域の高齢者の生活支援のため介護タクシー事業も展開。
松原 奎一(75歳)
香川県 松原病院理事長(医師)
1968年から地域住民の健康保持増進に貢献。診察した子どもの血液に異常値が多く、生活習慣病のハイリスク生徒への保健指導のため、学校医として診ていた中学1年生に自費で血液検査を開始。その成果から現在は全県下で検査が実施される。
水上 忠弘(73歳)
佐賀県 水上医院理事長・院長(医師)
高齢化率が40%を超える山間地域で、34年間かかりつけ医として24時間体制で診療や往診を続けている。デイサービスと小規模多機能施設を設け、リハビリ室も無料開放。治療から看取りまで一生に関わるとの考えで有床診療所を維持。
選考委員特別賞
鎌田 眞人(60歳)
宮城県 歌津八番クリニック理事長・院長(医師)
地区で唯一の診療所として地域に貢献。東日本大震災では自院も全壊したが、昼夜を問わず避難所を往診して救命と治療に当たった。発災翌日から中学校体育館で医療活動を開始。4日後には仮設診療所も開設した。
佐藤 徹(59歳)
宮城県 佐藤徹内科クリニック理事長・院長(医師)
南三陸町の沿岸部から山間部まで訪問診療に出向くだけでなく、学校医・産業医としても尽力。東日本大震災では自院が全壊し、自身も避難所生活の中で、町内の避難所を支援。現在は南三陸病院と連携し地域医療の再生に取り組んでいる。
開催概要

赤ひげ大賞表彰式
2018年2月9日(金) 17:00〜18:00
※18:10よりレセプション
会場:帝国ホテル(東京都千代田区)
主催:日本医師会、産経新聞社
特別協賛:太陽生命保険株式会社
http://www.akahige-taishou.jp/

『RECRUIT DOCTOR'S CAREER』2018年3月号掲載
※掲載内容は雑誌掲載号における取材時のものです

  • 林 純氏
    第20回 日本病院総合診療医学会学術総会 開催
    日本病院総合診療医学会は、一定の専門分野を持ちながら、病院内で総合診療を担う病院総合診療医「ホスピタリスト」の学術交流および育成を目標とする。同会理事長の林純氏は、「2010年の設立当初は80名だった会員も、今では1800名を超え、この10年で病院総合診療医の重要性への認識が広まった」と振り返る。
    (『リクルートドクターズキャリア』2020年4月号掲載)
  • 真野俊樹氏
    MQMA第5回研究大会 2020開催
    医療の質と経営(マネジメント)の質を高める実践研究をテーマとするMQMA(一般社団法人 メディカルクオリティマネジメントアカデミー)の研究大会が2月2日(日)に開催された。
    (『リクルートドクターズキャリア』2020年3月号掲載)
  • 井川誠一郎氏
    第27回 日本慢性期医療学会 開催
    1992年設立の介護力強化病院連絡協議会に始まる日本慢性期医療協会(会長:武久洋三氏)は、医師、歯科医師、看護師、多様なコ・メディカルスタッフ、介護スタッフなどが参加する。
    (『リクルートドクターズキャリア』2020年2月号掲載)
  • 前田武志氏
    法務省矯正医官の業務説明会が開催
    2018年1月に東京都昭島市に開設された東日本成人矯正医療センターは、全国の矯正施設(刑務所、拘置所、少年院、少年鑑別所等)に併設された病院・診療所の中でも、ICUなど急性期医療に対応できる設備が整った医療施設の一つ。前身である八王子医療刑務所(東京都八王子市)を移転する形で開設されたものだ。
    (『リクルートドクターズキャリア』2020年1月号掲載)
  • 矢野健次氏
    第66回 日本矯正医学会総会 開催
    全国の矯正施設(刑務所、拘置所、少年院、少年鑑別所等)における矯正医療を扱う日本矯正医学会は1951年に設立。10月24日(木)・25日(金)開催の同総会は第66回を迎えた。学会員は施設内の病院・診療所で被収容者の診療に当たる矯正医官(医師・歯科医師)、看護師、薬剤師、心理技官(臨床心理士)などで、多様な職種からの発表が特色だ。
    (『リクルートドクターズキャリア』2019年12月号掲載)
  • 秋山和宏氏
    “今”の視点で医療と社会を語る 『MED Japan 2019』が開催
    医療・福祉の現場で先進的な活動を続ける人物が社会に提言する場として、日本各地で10年以上続く「MED Japan」。その1年間の集大成となる「MED Japan 2019」が10月6日(日)に開催された。主催の秋山和宏氏は、今回のテーマである「一途一心」をもとに、ひたむきな想いから発せられた言葉が社会を変える力を持つと語る。
    (『リクルートドクターズキャリア』2019年12月号掲載)
  • 森 清氏
    第1回 日本在宅医療連合学会大会が開催
    病院の医師を中心に医療依存度の高い疾患・病態の在宅医療などを扱う「日本在宅医療学会」と、在宅医療に従事する医師を主な会員とする「日本在宅医学会」が合併し、2019年5月に「日本在宅医療連合学会」が発足。初の大会が7月14日・15日に開かれた。
    (『リクルートドクターズキャリア』2019年9月号掲載)
  • 中田智明氏
    第29回 日本心臓核医学会総会・学術大会が開催
    昨年の診療報酬改定では、安定冠動脈疾患の治療戦略における機能的虚血評価の重要性が示された。これを踏まえ、心臓核医学会は「心血管疾患の至的治療戦略の構築における心臓核医学の最適化と進化」をテーマとする学術大会を7月12日・13日に北海道函館市で開催した。
    (『リクルートドクターズキャリア』2019年9月号掲載)
  • 西嶋康浩氏
    厚生労働省主催の医療政策セミナーに医師・医学生が参加し、熱く討論
    厚生労働省が主催し、ディスカッションやプレゼンテーションなどを通じて医療政策の立案プロセスを学ぶ「医療政策セミナー」が、7月20日(土)に開催された。同セミナーは医師または医学生を対象に春(第1回)・夏(第2回)の年2回開催。第2回となる今回はおよそ50人が参加したが、その約半数が医師で、特に初期臨床研修医など若手医師が目立っていた。
    (『リクルートドクターズキャリア』2019年9月号掲載)
  • 石塚尋朗氏
    福島県医師会による医業承継セミナーが開催
    福島県医師会は福島県から委託を受け、後継者不在などによる診療所廃止を減らし、地域医療の担い手を確保する目的で「医業承継バンク(以下バンク)」を2019年2月に開設。医業の譲渡を希望する医師と、承継して開業医となる医師とのマッチングを進めている。
    (『リクルートドクターズキャリア』2019年6月号掲載)
  • 真野俊樹氏
    第5回 MQMA研究大会 2019開催
    医師や医療機関の経営層、さまざまな医療関連企業、研究者などが参加し、医療の質と経営の質を高める実践研究・人材育成に取り組むMQMA(一般社団法人メディカルクオリティマネジメントアカデミー)。その第5回研究大会が、2月2日(土)・3日(日)に開催された。
    (『リクルートドクターズキャリア』2019年3月号掲載)
  • 東小薗 誠氏
    第65回 日本矯正医学会総会 開催
    10月25日(木)・26日(金)、第65回となる日本矯正医学会総会が開催された。同会には全国の矯正施設(刑務所、拘置所、少年院、少年鑑別所等)に設置される病院・診療所の医師、看護師、薬剤師、心理技官(臨床心理士)などが参加しており、両日の一般講演でも医師のほか各職種から多様な発表が相次いだ。
    (『リクルートドクターズキャリア』2018年12月号掲載)
  • 秋山和宏氏
    医療人や社会起業家らによる『MED Japan 2018』が開催
    今回で第10回となるMED Japan(旧名MEDプレゼン)が10月14日に行われた。同会は医療・福祉の現場で新たな提案と実践を続ける人材が社会に提言を行う。主催の秋山和宏氏はそれを増幅して広く届ける場がMEDの役割だという。
    (『リクルートドクターズキャリア』2018年12月号掲載)
  • 矢口智子氏
    日本医師事務作業補助研究会 全国大会が開催
    9月15日(土)、広島コンベンションホールで日本医師事務作業補助研究会 第8回 全国大会(大会長 増成倫子氏)が開催された。2011年の第1回全国例会以来、年々規模は拡大し、今回は800人近くの参加となった。
    (『リクルートドクターズキャリア』2018年11月号掲載)
  • 林 真輝氏
    法務省矯正医官業務説明会が大阪で初開催
    7月28日(土)、大阪医療刑務所で法務省大阪矯正管区による矯正医官業務説明会および同所見学会が行われた。矯正医官とは法務省所轄の矯正施設(刑務所、拘置所、少年院等)の病院や診療所で診療する医師を指す。同会は法務省の担当者が業務内容を説明するだけでなく、矯正医官自らが参加者と質疑応答を行う等、具体的な情報を提供するのが特色。
    (『リクルートドクターズキャリア』2018年9月号掲載)
  • 森 厚嘉氏
    医師の専門知識・スキルが生かされるこれからの予防医療
    2006年から2015年の10年間で2日ドックを行う病院が減少する一方、1日ドックを実施する施設は2倍以上に増えている(公益社団法人 日本人間ドック学会『2015年 人間ドックの現況』)。さらに近年は午前中で検査から説明・指導まで終えるタイプのドックも多い。
    (『リクルートドクターズキャリア』2018年6月号掲載)
  • 相澤孝夫氏
    長野県内で活動を希望する小平選手にチャンスを提供した相澤病院の考えとは
    今年2月9日から25日に行われた平昌五輪で、スピードスケート女子500mで金メダル、1000mで銀メダルなど大活躍した小平奈緒選手。それとともに話題になったのが、小平選手が勤める相澤病院(長野県)だろう。同院は長く地域医療に貢献してきたが、理事長の相澤孝夫氏はその歴史の一コマをこう振り返る。
    (『リクルートドクターズキャリア』2018年5月号掲載)
  • 真野俊樹氏
    第4回MQMA学術総会 2月研究大会開催
    海外医療機関の経営や国際的な第三者認証などの研究を通じ、医療と経営の質を高める人材育成を目指すMQMA(一般社団法人メディカルクオリティマネジメントアカデミー)。その第4回学術総会が2月3日(土)・4日(日)に開催された。
    (『リクルートドクターズキャリア』2018年3月号掲載)
  • 道永麻里氏
    第6回『赤ひげ大賞』は5名が大賞、2名が特別賞を受賞
    各地で地道に診療を続ける医師を対象とした「赤ひげ大賞」の表彰式が、2月9日(金)に行われた。同賞を主催する日本医師会の道永麻里氏は賞の趣旨をこう語る。
    (『リクルートドクターズキャリア』2018年3月号掲載)
  • 濱中洋平氏
    今後のキャリアを考えるための知識を習得「1日で学ぶ病院経営講座」開講
    専門医取得を中心に、専門性の向上に熱心な医師は多いだろう。加えて地域連携、多職種連携が重視される時代では、医師はマネジメント力の習得も必須となりつつある。その中でも国の医療政策、医療機関の経営戦略、診療科の変化などから今後の医療を俯瞰的に捉え、医療現場で主導的な役割を担う力を養う講座が2017年11月30日(木)に開講された。
    (『リクルートドクターズキャリア』2018年1月号掲載)