医師のキャリア観に関する実態調査 20~40代の約4割超が「現在のキャリアに迷いあり」

記事公開日:2025年11月27日

株式会社リクルートメディカルキャリアは、「医師のキャリア観」に関する調査(※)を実施しました。本調査では、医師免許取得時の理想像から現在の納得感、初めてキャリアを見直した時期とその理由、そしてキャリア選択で重視する点までを幅広く分析し、年代ごとの特徴を明らかにしました。

(※)「株式会社マクロミル」に登録している全国の医師873名を対象に調査を実施。
実施期間:2025年8月4日(月)~2025年8月12日(火)

医師が描いた理想像

免許取得当初に思い描いたキャリアプランとして最も多かったのは「専門医として技術を高めたい」(48.0%)で、続いて「家庭やプライベートと両立できる働き方をしたい」(31.0%)、「地域の基幹病院で、幅広い診療に関わる医師になりたい」(27.9%)でした。また「QOL(生活の質)を重視したキャリアを築きたい」(20.5%)も一定の割合を占めました。

医師免許を取得した頃、どのようなキャリアプランを思い描いていましたか

年代別に見ると、「専門医として技術を高めたい」は20代で60.9%と最も高く、30代以上は40%台後半で、70代でも47.8%といずれの年代でも高い割合となっています。一方、「家庭やプライベートと両立できる働き方をしたい」は20代(47.8%)、30代(43.7%)、40代(40.1%)と若手世代では40%台ですが、50代以上は低く、70代では16.4%にとどまりました。

【年代別】医師免許を取得した頃「専門医として技術を高めたい」というキャリアプランを思い描いていた医師 【年代別】医師免許を取得した頃「家庭やプライベートと両立できる働き方をしたい」というキャリアプランを思い描いていた医師

一方で、「思い描いたキャリアプランに現在どの程度近づいていると思うか」という設問では、30代で「非常に近づいている」と回答した医師はわずか10.5%で、「あまり近づいていない」「全く近づいていない」の計が36.9%を占めています。40代も同様に「あまり近づいていない」「全く近づいていない」と感じる割合が合わせて41.7%に上りました。これに対して50~60代では「非常に近づいている」「ある程度近づいている」の計が高くなり、特に60代では69.3%が「非常に近づいている」「ある程度近づいている」と感じていることが分かりました。

医師免許を取得した頃に思い描いていたキャリアプランに現在どの程度近づいていると思いますか

キャリア見直しの時期とその理由

医師が初めて自身のキャリアを「見直したいと思ったタイミング」には、年代によって大きな差が見られました。
20代では約3割が見直しを検討しており、30代では「30代前半」と回答した医師が33.3%で、「30代後半」と合わせると約4割が30代で初めてのキャリア見直しを検討していることが分かりました。40代では7割超が「キャリアを見直したいと思った」ことがあり、その時期は「30代前半/後半」と答えた医師が約半数を占めています。
一方で50代以上は傾向が異なり、「キャリアを見直したいと思ったことはない」が高くなり、50代では37.8%、60代では42.1%、70代では56.7%となりました。また、見直しを検討した場合でもその時期は若手世代に比べて遅く、60代以上では「初めて見直したいと思ったのは40代以降」とする回答が一定数を占めています。

今後のキャリアを見直したいと思ったことはありますか。見直したいと思ったことがある方は、初めて見直したいと思った時期をお答えください

※複数の勤務先がある場合は、最も多く勤務している形態で回答

次に、初めてキャリアを「見直したいと思った理由」を見ていくと、最も多かったのは「ライフステージ(育児・介護・結婚など)の変化」(32.8%)、続いて「労働時間や当直が負担になった」(29.2%)となりました。また「キャリアに将来性が感じられなかった」(21.8%)や「年収への不満」(18.8%)も一定の割合を占め、経済的要素や将来像の不透明さがキャリア再考の背景となっていることが分かります。

初めてキャリアを見直したいと思った理由としてあてはまるものをすべてお選びください

年代別に見ると特徴が一層明確になり、「ライフステージの変化」を理由に挙げた割合は30代で57.1%と突出して高く、40代でも36.2%に上りました。一方、「労働時間や当直がきつかった」「年収への不満」といった勤務条件を理由にした割合は、20代でいずれも50.0%、30~40代でも3割前後でした(20代はn数僅少のため参考値)。これに対し50代以上では両項目とも割合が低く、勤務条件を理由に「初めて」キャリアを見直そうとした医師は相対的に少数でした。

【年代別】初めてキャリアを見直したいと思った理由として「ライフステージ(育児・介護・結婚など)の変化」を選んだ医師 【年代別】初めてキャリアを見直したいと思った理由として 勤務条件(「労働時間や当直がきつかった」「年収への不満」)を選んだ医師

現在のキャリア選択で重視されるもの

医師たちが実際にキャリアを選ぶ際、最も多くの医師が重視していたことは「収入の高さ」(29.6%)でした。続いて「自身の健康」(27.5%)、「家庭との両立が可能か」(26.6%)、「労働時間」(25.8%)、「勤務地・通勤距離」(22.1%)が上位に並びました。

現在、あなたがキャリアを選択する際に重視していることは何ですか

次に各重視ポイントについて年代別に見ていきます。最も多くの医師が重視したのは「収入の高さ」でしたが、この項目はどの年代でも一定の割合を占め、特に40代(36.7%)、50代(34.1%)では他の年代よりも高い傾向が見られました。
一方で「自身の健康」を重視する割合は年代が上がるにつれて高くなっており、60代では32.2%、70代では38.8%に達しました。また、「家庭との両立が可能か」を重視する割合は30~40代で顕著に高く、30代では34.5%、40代では41.8%が選択しています。これは結婚や子育て、介護といったライフイベントが集中する時期と重なることから、生活との調和を求める傾向が特に強まっているものと考えられます。

現在、キャリアを選択する際に重視していることとして「収入の高さ」を選んだ医師 現在、キャリアを選択する際に重視していることとして「自身の健康」を選んだ医師 現在、キャリアを選択する際に重視していることとして「家庭との両立が可能か」を選んだ医師

キャリアの迷いは20~40代で顕著

キャリア選択における重視点が年代ごとに異なる一方で、実際に「自分のキャリアに迷いを感じているか」についても年代によって大きな差が見られました。
20代では「迷いを感じている」「どちらかといえば迷いを感じている」を合わせて39.1%、30代では45.9%と、約4割以上の医師が何らかのキャリアへの迷いを抱いています。特に30代は「どちらかといえば迷いを感じている」が35.6%と最も高く、専門医取得や勤務先選択、またライフステージの変化など将来を左右する決断が重なる時期であることが背景と考えられます。40代でも40.7%が迷いを感じており、管理職や中堅としての役割が増えるなかで、改めて自身のキャリアの方向性を見直す姿が浮かび上がります。
一方で、50代以上では「迷いを感じていない」の割合が高くなり、特に60代(54.2%)、70代(71.6%)では半数以上がキャリアに「迷いを感じていない」ことが分かりました。

現在、医師としてのキャリアに迷いを感じていますか

自由回答設問では、「メンター・相談体制の強化」「情報の提供」「学び直しやスキルアップの支援」「勤務体制や制度の見直し」など、多岐にわたるキャリア支援ニーズが寄せられました。

今、医師に必要な「キャリア支援」についてのフリーコメント

  • 医師が必要だと思えば相談できる体制(男性/57歳)
  • いろいろな働き方をしている医師がいて、それぞれのメリット・デメリットを教えてもらえると不安が減ると思う(女性/57歳)
  • ネット上の表面上の情報ではない生きた情報(男性/56歳)
  • 学び直しの支援(男性/46歳)
  • 専門医制度に縛られないキャリアの積み方の支援(女性/44歳)
  • 自分のライフプランに合った働き方への支援(男性/66歳)

医師のキャリアは多様な選択肢を描ける時代へ

医師のキャリアは、時代やライフステージに応じて多様な選択肢を描けるものへと変化してきました。しかし、選択肢が広がったからこそ、新たな課題や迷いが生じ、それぞれに合った支援が求められていることが明らかになりました。医師が自らのキャリアに納得感を持ち、安心して働き続けられる環境を整えるためには、社会や医療機関がこうした声を丁寧に拾い上げ、多層的な支援を実現していくことが必要であると考えます。
医師の転職サポート歴40年のリクルートドクターズキャリアでは、専任のキャリアアドバイザーがお一人お一人に伴走し、ご自身のキャリアを自ら主体的に考え、自律的に歩んでいけるようサポートしています。満足のいく転職、そして思い通りのキャリアを実現するためにも、リクルートドクターズキャリアの活用をぜひご検討ください。

※本調査の詳しい調査結果は、こちらからご覧ください
https://www.recruit-mc.co.jp/assets/img/news/PDF_news251016.pdf

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