茨城県特集 地域別求人情報 キャリア教育への支援、働きやすい環境の整備など医療の充実と同時に医師の満足度向上に向けた施策を次々と実行に移す、同県の取り組みを紹介する。

茨城県知事から医師の皆様方へ 一人でも多くの医師の方々に本県で勤務していただくため
研修体制や勤務環境などをさらに充実させてまいります

皆様、こんにちは、茨城県知事の大井川和彦です。

知事に就任して半年余りとなりますが、私は、茨城県を将来にわたり夢や希望を描ける県としていくため、これまでの常識にとらわれず、新しい発想で、県民の皆様とともに、果敢に挑戦してまいりたいと考えております。

そうした中で、県民の皆様が安心・安全を実感できる医療提供体制の実現は、待ったなしで取り組むべき最重要の課題であります。

そのため、茨城県が、より多くの医師の皆様にとって魅力があり、働く場所として選んでいただける県になるための施策に力を入れてまいります。

まず、医師のキャリアアップ支援として、高度な技術の習得のための若手医師・指導医の海外派遣や、救急医療等の技術研修会の開催など、研修体制の拡充を図ってまいります。

また、仕事と家庭を両立できる勤務環境の整備に向けて、新たに、子育て中の医師が、県内のどこの医療機関に勤務していても、急に発病した子どもの受診やその後の保育を電話一本で手配できる緊急コール体制の構築を目指してまいります。

さらに、お子様の教育環境の充実を図るため、今後、県立高等学校への医学部進学コースの設置などに取り組んでまいります。

そして、茨城県は、温暖な気候で、海・山の幸に恵まれますとともに、JR常磐線やつくばエクスプレス等の鉄道網や縦横に走る高速道路により、都心等へのアクセスに優れております。国際線・国内線が就航している空港などもあり、暮らしやすい県であることが、全国的にも高く評価されており、御家族の皆様にも、きっと満足いただけるものと考えております。

今後とも、茨城県を知っていただくため、医師の皆様向けのポータルサイトを新設し、県内医療機関の勤務環境や、各地域の生活環境等の情報を総合的に発信しますほか、医師のための相談窓口に専任の担当職員を配置し、個別の相談にも積極的に対応させていただきます。

これを読んでいただいた皆様が、茨城県に魅力を感じ、本県での勤務に興味を持っていただければ幸いです。

茨城県で皆様にお会いできる日を心待ちにしております。

茨城県知事 大井川和彦氏
1983年茨城県立水戸第一高等学校卒業。1988年東京大学法学部卒業。1996年ワシントン大学ロースクール卒業。1988年通商産業省(現:経済産業省)入省後、同省シンガポール事務所長(初代)、商務流通政策グループ政策調整官補佐などを経て2003年に退官。マイクロソフトアジア執行役員、マイクロソフト株式会社執行役常務パブリックセクター担当、シスコシステムズ合同会社専務執行役員パブリックセクター事業担当兼コマーシャル事業担当などを経て、2016年株式会社ドワンゴ(ニコニコ動画運営会社)取締役。2017年9月から現職。

県内の各医療機関が医師のキャリア形成や研究活動を支援

筑波大学
県内唯一の医学部として人材を輩出し、同附属病院では高度医療を提供する。職員の生涯教育に積極的で、地域医療の現場でも充実した指導が受けられるシステムを構築。個別のキャリア相談も行う。
茨城県立中央病院/同こども病院/同こころの医療センター
総合病院、小児専門病院、精神科専門病院という施設ごとの特色を生かした診療と同時に、次世代の人材育成にも力を入れる。
茨城県立医療大学
コメディカル育成のほか、同付属病院では筑波大学発のベンチャー企業サイバーダインと協力し、ロボットスーツ「HAL®」を使った神経・筋難病の治療を進めるなど、先進的なリハビリを実践する場としても機能している。
茨城県立健康プラザ
科学的根拠に基づく健康づくり支援のため、これまで培った県民の健診データをビッグデータとして提供を予定。疫学的、公衆衛生学的な研究にも貢献する。

一人ひとりのキャリアプランにマッチした支援策で
医師が働きやすい環境を整備

医師が働きながら成長できる体制をさらに強化する

2025年問題への対応も含め、各自治体とも地域医療構想の実現を急ぐ中で、2017年9月に新県知事が就任した茨城県では、新たな施策の準備が急ピッチで進んでいるという。

「当県の人口10万人当たりの医師数は全国平均を下回りますが、ここ10数年で着実に増加しました。そうした医師が知識やスキルを磨ける教育体制、働き続けられる職場環境の整備といった支援が重要と考えています」

同県で保健福祉部長を務める木庭愛氏は、県内の大学医学部や医療系大学が持つ病院、県立病院なども医師の卒後教育に非常に熱心に取り組んでいると語る(下の図表「地域医療教育センター・ステーションで「地域で医師を育てる」」参照)。

「例えば筑波大学附属病院では、二次保健医療圏の中核病院などに大学病院のサテライト施設『地域医療教育センター・同ステーション』を置き、医師と医学生・研修医を派遣。地域内で医療が完結するよう高度医療を提供すると同時に、若手医師が地域医療を学ぶ場としても活用されています」

たとえ研修医でなくても、「地域医療に興味はあるが学ぶ機会がない」と悩んでいる医師なら、こうした環境で得るものは大きいだろうと木庭氏。

さらに同県が主催・協力する医師向けの研修も多く、救急現場や病棟での患者急変時に対応できるよう行っている、研修医向けの救急ライセンス研修などはその一例だ。

「もちろん若手医師だけでなく、指導医クラスの医師を対象とした研修も筑波大学主導で行われており、その充実した内容は他県の医師からの受講希望も多いと聞いています」

次世代の医師を育てるサポートも充実

有利な条件で教育ローンを提供
・医学部に進学する子どもを持つ保護者に、県が在学中の金利を負担し、有利な条件で融資を受けられる制度を設ける予定。融資額は3000万円まで(2018年度から)。
医師修学資金貸与制度を拡充
・医師修学資金(一般)、地域枠、海外対象で募集し、2018年度は一般の新規定員を10名から20名に、海外対象の学年は4〜6年から1〜6年に拡充。

急性期から在宅医療までICTで業務の負担を軽減

またICTで医療の高度化・効率化も進め、医師が本来の業務に集中できるような施策も用意するという。

「その中心となるのは遠隔医療で、例えば山間部など医療資源が十分でない場所で脳卒中が発生した場合、地域の救急病院に専門医がいなければ、救命救急センターのような高度な専門的医療を提供する医療機関に連絡し、CTなどの画像を送って適切な診断を仰ぐといった連携を行う予定です」

こうした連携により専門医が移動などに余計な時間を割くことなく、診断・治療といった医師本来の業務に取り組めるよう支援すると木庭氏。

一方で、在宅医療を支える訪問看護ステーションの機能強化を図るため、ICTの活用による在宅療養者の状態確認などの取り組みを支援していく予定だという。

加えて、現在は同県の地域枠で卒業した医師をサポートしている「地域医療支援センター」が、その機能を大幅に拡充予定。これからは県内で働くすべての医師を対象に、各自の希望に添ったキャリア形成を支援し、適切な研修先を紹介するなど、人材育成のハブとしての役割を目指している。

「当県で働く医師なら誰でも大きく成長できる体制づくりを、今後さらに強化したいと考えています」

このほか女性医師のキャリア形成・復職支援も茨城県医師会と協力して行っているが、筑波大学附属病院のシステムを参考に、さらに充実させるよう準備中だ(詳細は次ページ参照)。

また同県で働く医師の子どもが医学部進学を希望することも考慮し、県立高校に医学部進学を目的としたコースを設け、さらに有利な条件で教育ローンが利用できる支援策や修学資金貸与制度の拡充も実施する予定だ。

茨城県保健福祉部長 木庭 愛氏

地域医療を担う医師教育、女性医師の復職支援等を
県と医療機関、医師会が密接に協力して推進する

地域医療志望の医師を実践の場で育てる教育体制

前述のように、茨城県では県や国立・県立の医療機関が、医師のキャリア形成支援、働きやすい環境の整備に力を入れている。これらの一部は県内の医療資源を有効活用する役目も果たしている。その好例が、筑波大学附属病院が導入している「地域医療教育センター・ステーション」制度だ。

筑波大学附属病院の総合臨床教育センター部長・総合診療グループ長の前野哲博氏は、「各施設に当院から指導医を派遣し、医学生や研修医はそこで研修する制度。地域の現場で大学教員からの手厚い指導を直接受けられるので、地域にいながら充実したキャリア形成が可能です」と説明する。

指導医の人件費は県等の自治体や団体が負担し、教員は派遣先では診療にも従事するため、各地域の医療体制に厚みが増す点もメリット。「総合診療科には、もともと地域医療に興味のある医師が多い。このような充実した教育体制があれば、若い医師でも安心して医師不足地域に行ってもらえる」と前野氏。こうした施策が寄与し、家庭医療専門医673名のうち、茨城県には全国4位の37名が在籍する(日本プライマリ・ケア連合学会資料より・2018年1月現在)。「このように当県の地域医療は教育レベルが高く、他県から来る医師には非常に勉強になる環境だと思います」

筑波大学附属病院 総合臨床教育センター部長 総合診療グループ長 前野哲博氏

地域医療教育センター・ステーションで「地域で医師を育てる」

使いやすい病児保育などで女性医師の復職を支援

また同県では女性医師のキャリア形成支援も重視しており、県の委託を受けた茨城県医師会の「女性医師就業支援相談窓口」を中心に、復職・転職や再研修の支援、育児・介護の相談対応などを行っている。近年では水戸協同病院がスタートさせた病児保育支援制度の立ち上げも支援している。

そのベースとなったのは筑波大学附属病院の支援制度で、同院で女性医師のキャリアコーディネーターを担当する瀬尾恵美子氏はこう話す。

「一般に病児保育の利用には、かかりつけ医の診断が必要ですが、当院の職員なら『成育支援制度』に登録しておくと、子どもの発熱時は担当者に連絡し、院内の保育室に子どもを預けるだけでよく、その後は担当者がシッターの手配や当院小児科の受診手配などを進めてくれます。保育園に預けた後で熱を出したときなども対応可能で、この制度のおかげで安心して復職できたという職員は多いですね」

加えて瀬尾氏は医師会の相談窓口でアドバイザーも務め、女性医師のキャリア形成、子育てと仕事の両立といった相談にも対応している。「アドバイザーは計3名で開業医の先生などもいて、相談者は自分の将来像にマッチする相手を選んで相談ができます。私は病院でも各診療科の教育担当と協力して女性医師一人ひとりにヒアリングし、希望に合ったキャリア支援計画をコーディネートしていますから、医師会でもそうした経験を生かしてアドバイスしています」

木庭氏(前出)によれば、病児保育支援制度は県内の各医療機関で開設できるよう、県と医師会が協力してサポートしていくという。

「今後は医師とその家族の移住支援といった施策にも取り組む予定です。東京都まで1時間前後の好立地で、海も山もあって海産物・農産物が豊富な当県なら、仕事も暮らしも充実した人生を送っていただけるでしょう」

筑波大学附属病院 総合臨床教育センター 副部長 瀬尾恵美子氏

都心から好アクセス
豊かな自然伝統文化
サイエンスの最前線まで楽しみ豊富な茨城県

東京駅発の特急で水戸駅まで約80分、日立駅まで約100分。つくば駅ならつくばエクスプレスで秋葉原駅から約40分と、都心からのアクセスは良好。海も山も身近で自然も豊か、食材の宝庫だ。エリアごとに多様な楽しみを持つ同県は、暮らしやすい「程よい田舎」感も魅力だ。

水戸・笠間エリア
水戸は水戸徳川家ゆかりの地で、偕楽園のほか歴史を感じる名所が豊富。陶芸で有名な笠間は陶器の祭典「陶ひまつり炎祭」が毎年GWに合わせて盛大に開催される。
土浦・つくばエリア
筑波研究学園都市にはJAXA筑波宇宙センターをはじめ日本有数の研究機関が多数所在する一方で、筑波山や霞ヶ浦などの豊かな自然にも恵まれたエリア。世界最大のブロンズ製立像として有名な牛久大仏もここにある。
高さ120m(台座含む)の牛久大仏
古河・筑西・結城エリア
城下町・宿場町として栄えた古こ河が、江戸時代の町の情緒が残る桜川、ユネスコ無形文化遺産にも登録された結城紬で有名な結城など、歴史と文化を感じるエリア。
鹿島・潮来エリア
伝統ある鹿島神宮、サッカーの鹿島アントラーズで知られる鹿島。潮来は水郷の面影を残し、初夏に行われるあやめまつりが人気。
初夏の水郷潮来あやめ園
大洗・ひたちなかエリア
砂浜も岩礁もある大洗海岸、水族館のほか、丘一面を青に染め上げるネモフィラが人気の国営ひたち海浜公園など、楽しみ方も多様なエリア。
北茨城・日立エリア
北茨城の五いづ浦ら海岸は著名な芸術家も訪れた景勝地で、アンコウをはじめとした豊富な海の幸が味わえるエリア。日立にはパワースポットとしても有名な歴史ある御岩神社が鎮座している。
奥久慈エリア
日本三名瀑といわれる袋田の滝、竜神ダムにかかる長さが日本最大級の歩行者専用つり橋・竜神大吊橋など、雄大な景観が楽しめるエリア。
紅葉に彩られた袋田の滝

地域の子育て資源を生かした病児保育など医師が働きやすい環境づくりを支援します

女性医師の相談窓口を開設

茨城県医師会では茨城県と連携し、各種の医師支援策を進めています。特に近年の医師国家試験合格者は3割以上が女性のため、当医師会では女性医師支援にも力を入れています。毎年主催している「男女共同参画フォーラム」では女性医師の悩み、特に結婚・出産・育児といったライフステージの変化と働き方の選択、今後の医師としてのキャリアアップなどについて、先輩女性医師の話を聞き、ディスカッションする機会を設けています。

また女性医師就業支援相談窓口を医療勤務環境改善支援センター内に設置し、専任の相談員や3名の女性医師コーディネーターが疑問・質問などに対応し、必要なら相談者のもとに出向いて助言なども行っています。

主な相談内容は保育ルームや学童保育の問い合わせ、シッターの紹介依頼、転職や復職時の勤務先案内などですが、医療機関から女性医師支援についての問い合わせも来ています。

病児保育制度の運用も支援

さらに茨城県から委託を受けた「女性医師支援事業」の中で、各市町村のファミリーサポートセンター等と連携した病児保育支援のコーディネートを行っています。この事業では医療機関に対して県からの助成金もあり、2015年度からは水戸協同病院で本格運用が始まっています。

同院で制度利用のために事前登録した7名の女性医師の皆さんからは、「勤務する際の支障が大幅に減少した」「急に子どもが病気になっても、病院内で預かってもらえるので安心できる」等の声を多く伺っています。県内でも医療機関の所在地により子育て資源の内容は異なりますが、県とともにそれらを活用しつつ、支援の充実に取り組みたいと考えています。

今後は女性医師の出産・子育て、働きやすい環境づくりに対する理解促進を図るため、医師や医療機関を対象にした冊子「女性医師キャリアアップ支援ブック」も作成予定です。

水戸協同病院での病児保育支援

同院のファミリーサポート委員会で話し合い、院内に育児室を設置。地域のファミリーサポートセンターと連携して、必要な際には電話一本でサポーターを手配してもらえ、育児室で病児を預かってもらう制度を設けた。

茨城県 医師会会長 諸岡信裕氏
1973年金沢大学医学部卒業後、千葉大学医学部第3内科講師等を経て、1993年から医療法人白帆会小川南病院院長に就任。2006年より同医療法人理事長。2016年から現職。