静岡県特集 「ふじのくに地域医療支援センター」をはじめ女性医師支援、指導医育成など医師のキャリア形成を県全体でサポートする体制づくりが進行中。

静岡県知事から医師の皆様方へ 世界が注目する静岡県で活躍を

自然から産業までバランスのとれた静岡県は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの競技会場にも選ばれるなど、世界的に高く評価されています。さらに、全国トップクラスの健康長寿県であり、健康・医療の分野において、すばらしい環境を有しています。

健康の分野では、世界文化遺産である日本一高く神々しい富士山や、「世界で最も美しい湾クラブ」の一つである駿河湾など、変化に富んだ豊かで美しい自然と温暖な気候に恵まれており、これらの環境が育んだお茶やみかんを始めとする多彩で高品質な食材を生産する「食の都」であることが、健康長寿を支えています。

医療の分野では、がん治療に秀でた病院として多くの医療関係誌にも紹介されている、高度がん専門医療機関の県立静岡がんセンター、最新の研究・研修施設である「先端医学棟」を新設し、MRI手術室をはじめとした最高水準の医療設備を提供する県立総合病院、あらゆる小児の重症疾患に対応し、国内のみならず海外からも心疾患などの難病患者を受け入れる小児専門病院の県立こども病院など、全国でも最先端の医療施設があり、皆様の能力と経験を大いに高めることができる環境を整えています。

一方、地域の医療関係者が一丸となって若手医師のキャリアを支援する「ふじのくに地域医療支援センター」を平成22年に全国に先駆けて設置しました。理事長には、文化勲章をはじめロベルト・コッホ賞や唐奨など数々の賞を受賞され、医学の分野で世界的に著名な本庶佑先生をお迎えし、全国最大規模の貸与枠を確保している医学修学研修資金貸与制度などの取組を行ってきています。

本制度では、全国の医学生等を対象に、73大学、約1000人への貸与を行っています。さらに、この資金の利用者を対象とした、仮想の医科大学である「ふじのくにバーチャルメディカルカレッジ」を創設して、価値ある情報や多様な交流の場などを提供することにより、日本全国どこの医学部に在籍していても、本県の魅力を学んでいただける環境を整えています。

本県の充実した医療環境や活躍している先輩医師を知って、県内で医師として働くことの意義とやりがいをしっかりと感じていただき、医療の第一線で御活躍いただきますことを、強く期待いたします。

静岡県知事 川勝平太氏
1972年 B.A.(経済学)早稲田大学、1975年 M.A.(経済史)早稲田大学、1985年 D.Phil. オックスフォード大学。1990年に早稲田大学政治経済学部教授就任。1998年国際日本文化研究センター教授、2007年静岡文化芸術大学学長を経て、2009年より現職(現在3期目)。

高度医療から臨床研究まで支援する「先端医学棟」

静岡県立総合病院では高度・先端医療の機能強化、患者サービスの向上を図る目的で、2017年に「先端医学棟」を建設。22の手術室を設置し、MRI、CT、血管造影のハイブリッド手術室のほか、内視鏡手術室やロボット支援手術室を備え、放射線治療室には最新のCTリニアックを導入している。

医療関係者の臨床研究を支援する「リサーチサポートセンター」も開設し、医師が診療しながら研究を続けられる環境を整備。遺伝子解析、統計解析、疾病の分析など、高度な治療から予防まで幅広い研究を支援する体制を整えた。

先端医学棟(地上5階建て)の2階ラウンジ
ロボット支援手術室

「ふじのくに地域医療支援センター」により
静岡県内で医師のキャリア形成を支援する

医師数は全国平均を下回るが県の施策により改善の傾向も

静岡県の二次保健医療圏ごとの医師数(人口10万人当たり)を見ると、全国平均を上回る圏域は浜松医科大学がある西部のみで、ほかは全国平均をやや下回るか、100人前後下回る状況だ。中でも県東部では賀茂と富士の両圏域で大きく下回るなど、医師の偏在が明らかになっている。

しかし医師数は2016年までの6年間では、熱海伊東圏域を除く7圏域で増加しており、特に賀茂圏域が最も多い28人増(人口10万人当たり)となった(資料提供:静岡県)。

このように医師偏在を是正する動きも見られるのは、同県がいち早く医師確保対策に乗り出した点が大きい。医師が働きやすい環境を整え、キャリアアップの支援策を一元的に行う「ふじのくに地域医療支援センター」を2010年に開設。2007年から始まった「静岡県医学修学研修資金」の利用促進などでも成果を上げている。

同センター副理事長で、構想時点から携わっている鶴田憲一氏によると、これには医師のキャリア形成を支援する研修機能、医師の県内就職を促進するリクルート機能、医学修学研修資金貸与者の配置先を調節する機能、調査機能と主に4つの機能があるという。

「研修機能には指導医の育成および確保の支援、県内の医療施設を横断的に活用して専門医を育てる研修プログラム、女性医師の復職支援なども含まれます。こうした枠組みは厚生労働省に評価されて国庫補助事業となり、さらに当センターをモデルとして各都道府県に『地域医療支援センター』が設置されることになったのです」

中でも喫緊の課題だった県東部圏域の医師偏在に対し、聖マリアンナ医科大学(神奈川県川崎市)と「医学生等の育成に関する協定」を締結。医学修学研修資金を利用する大学特別枠を設けると同時に、同大学からは県東部の病院に指導医などを派遣し、医療の充実とともに初期研修医を受け入れやすい体制づくりを進めている。

医学生や若手医師が希望するキャリアアップを支援

全国の先駆けとなった同センターが果たした役割の一つに、前述の「静岡県医学修学研修資金」の利用促進がある。同資金制度が始まった2007年は年17人だった貸与者も2017年には105人に増加し、現在、973人に貸与している。2018年は120人に貸与予定だという。

「大きく伸びた理由は貸与者が使いやすい制度に徹したことです。貸与には静岡県出身かどうかは関係なく、同資金の返還免除のため県指定の医療機関に勤務していただく際も、履行期限に余裕が持てるよう配慮しました。そのため大学に戻って教育を受けたり、海外研修に参加したりといったキャリア形成もスムーズになっています」

また医療機関への配属も、本人が目指すキャリアに配慮して行うことを基本とし、必要に応じて「静岡県専門医研修ネットワークプログラム」を活用した専門医取得も可能にしている。

ふじのくに地域医療支援センター 副理事長 鶴田憲一氏

二次保健医療圏ごとの人口10万人当たり医師数

(※2016(平成28)年12月現在)

「ふじのくに地域医療支援センター」の主な機能

研修機能 医療の質の向上及び医師を確保するための研修の充実
横断的な専門医研修ネットワークプログラムの提供、指導医の確保支援、女性医師の復職支援 など
リクルート機能 医師及び医学生の県内就職を促進するための情報発信、リクルート活動
県外医大にいる静岡県出身者の確保等、県内高等学校との連携(医学科進学の促進等)、医学生・研修医向け医療情報サイトへの情報発信の拡充 など
医学修学研修資金貸与者のコーディネート機能 医学修学研修資金貸与者の配置方針の検討
調査機能 県内の各地域及び各病院等の医療に関する調査及び研究

女性医師や若手医師の着実な成長を支援するため
浜松医科大学や県医師会も密接に連携

女性医師向けの支援センターがきめ細やかにサポート

これまで見たような医学生対象の制度だけでなく、同県では女性医師の活躍を支援する取り組みにも力を入れている。その主軸となるのが「ふじのくに女性医師支援センター」で、県全体の女性医師に対する就業支援・キャリア形成支援を目的に開設された。同センターでは専任医師の谷口千津子氏などがコーディネーターを務め、情報発信を中心とした支援、出産や子育てなどで離職した女性医師への就業相談をはじめ、さまざまなサポートを提供しているのが特色だ。

例えばキャリア相談は専門医に関する問題、新たな知識・手技の取得を目指した生涯教育のほか、子育てや介護などによってキャリア継続が難しいケースの相談などにも対応。浜松医科大学内にある同センターで谷口氏のほか担当コーディネーターがコンサルティングを行い、本人に適したキャリアプランの作成を支援している。また県内各地への出張相談も可能だ。

復職支援の相談も同様にコンサルティングが利用でき、加えてスムーズな職場復帰に向けた研修制度も用意されている。「ワーキングコース」は復職と同時にキャリアアップや専門医取得・継続も視野に入れたもの。仕事と家庭の両立に配慮した医療施設で働き、本格的な復職を目指していく。また「短期トレーニングコース」は女性医師が安心して復職できるよう、復職検討中の施設の見学、個々の希望に沿ったトレーニングなどを行っている。

このほか復職に役立つ情報として、医療施設の育児支援制度、各自治体のファミリーサポートや保育園などの一覧、各種子育てサービスなどを同センターホームページに掲載している。

県医師会も含め県全体で医師確保に取り組む

また静岡県医師会では県内の指導医の協力を得て、初期臨床研修医向けの教育研修イベントとして「屋根瓦塾 in Shizuoka」を企画・開催している。これにより研修医同士の交流とモチベーションの向上を図ることで、初期研修終了後の県内への定着率アップも期待している。

さらに県でも若手医師教育のため県東部の静岡医療センター(駿東郡)、伊東市民病院(伊東市)にシミュレーションセンターを置き、手技の向上や医療安全の学習などの研修を実施。このようにオール静岡の体制で、女性医師や若手医師のキャリア形成と県内定着への努力を続けている。

静岡県は東部の伊豆、中部の駿河、西部の遠江と歴史的に見ると三つの地域にわかれ、文化や気風もそれぞれ違うようだと鶴田氏(前出)。

「地域ごとに自然や食文化も異なりますし、場合によっては仕事への取り組みにも影響する可能性もあります。逆にいえば当県への移住を考えられる際は、そうした地域特性も考慮していただくと、ご自分に合った地域が探しやすいかもしれませんね」

「ふじのくに女性医師支援センター」の主な支援内容

キャリア相談 専門医取得・更新/新たな知識・手技の取得
復職に向けた研修 ワーキングコース(浜松医科大学医学部附属病院コース・協力医療施設コース)/短期トレーニングコース(見学コース・短期研修コース)
子育て情報の提供 保育園・幼稚園・託児所の情報/各種子育てサービスの情報
情報発信 シンポジウム・講演会などの開催/ホームページ
ふじのくに女性医師支援センター
https://www.fujinokuni-w.jp/

女性による支援センターが女性医師の
就業支援・キャリア形成をサポート。

浜松医科大学には県の委託事業として、静岡県内の医療施設と連携を取りながら、県内の女性医師の仕事と家庭の両立をサポートする「ふじのくに女性医師支援センター」が設置されております。

従来、女性医師が妊娠・出産を含めたライフイベントに際して自身のキャリアを継続するためには、自らの力で育児・就業環境の采配をしていかなければなりませんでした。そこでセンターでは、東西に広い静岡県内のどの地域でも出産後のスムーズな職場復帰を実現させ、キャリアを積んでいくための支援体制の構築を目指して活動を行っています。

2017年度は静岡県内の女性医師の就職に必要な情報をまとめたホームページを作成し、情報発信を充実させました。またセンター内では、専任コーディネーターが妊娠中や育児休業中の時期から就業に向けての相談を積極的に働き掛け、54件の相談に対応いたしました。

なお根幹となる女性医師支援の連携体制の構築には、大学診療科講座や県内公的医療機関等に対して女性医師支援担当医師の配置を依頼し、39医療施設に担当者配置できました。さらに大学内では出産後の家庭環境に応じて段階的に復帰できる「女性医師支援非常勤枠」を設置し、よりスムーズな復職を可能にしています。

ふじのくに女性医師支援センター 専任医師 谷口千津子氏

静岡県医師会は「屋根瓦塾 in Shizuoka」で
若手医師・指導医を応援します。

静岡県は人口が367万人ほどで四国4県(約380万人)に近い状況下、医学部がある大学が1校しかありません。人口10万人当たりの医師数が全国40位(2016年・厚生労働省「医師・歯科医師・薬剤師調査」)ということもあり、静岡県医師会では「医師の確保対策」を最重要課題と捉え、さまざまな取り組みを行ってまいりました。

県および県内病院が奨学金等を活用し誘導した臨床研修医を応援するために、当初、全国のカリスマ指導医をお呼びしたこともありますが、もともと県内にいる優秀な指導医に直接依頼する方が、臨床研修医・指導医ともにモチベーションが上がると考え、一昨年度から「屋根瓦塾 in Shizuoka」という教育研修イベントを企画・開催しています。これは国・県からの財源的支援を受け、浜松医科大学ほかの協力も得て継続的なイベントになりつつあります。

静岡県は東京に比較的近いことから、若手医師が関東圏に流れやすい傾向がありますが、静岡県内で優秀な専門医・指導医になることも十分可能です。静岡県出身者だけでなく、名古屋圏・関東圏の若手医師も、気候が温暖で食べ物が美味しい当県で、専門研修ならびに日々の生活をエンジョイしてください。

静岡県医師会 理事 小林利彦氏

富士山、駿河湾、浜名湖など自然豊かな静岡県
都心への移動も便利

東京駅から静岡駅まで約1時間。県内に計6つの東海道新幹線の駅を持つ静岡県は、エリアごとに多彩な自然と文化、食の魅力が満載。各地に富士山の絶景ポイントも。

[東部・伊豆エリア]

城ヶ崎海岸
伊東市街の南に位置するリアス式海岸。80以上の岬、20以上の岩礁が点在し、原生林が続く台地など見どころ満載。
河津桜
大きくピンク色の花が通常2月上旬に開花、3月上旬には満開に。同時期に行われる「河津桜まつり」は100万人が訪れる。

[富士エリア]

朝霧高原
富士山の西麓の高原で、樹木が少なくカヤの草原が広がる。全国有数の酪農地帯で富士山を背景に牧歌的な風景も見られる。
旧東海道
東海道の金谷宿から牧之原まで敷かれた石畳を、住民などの寄付で一部復元。菊川坂の一部には江戸時代後期の石畳が残る。

[中部エリア]

駿府城跡・同公園
静岡市の中心にあり、晩年の徳川家康が暮らした駿府城跡。現在は二重の堀と美しい石垣のある公園として市民に開放。
牧之原大茶園
大井川下流の台地に広がる巨大な茶園。生産量は県内の約40%を占める。茶園の一角にある牧之原公園からの眺望は抜群。

[西部エリア]

中田島砂丘
遠州灘に臨む砂丘は起伏がさほどなく、風紋が遠くまで見渡せる。毎年5月の「浜松まつり」では凧あげ合戦の舞台に。
浜名湖
浜松市の西にあり、うなぎなどの養殖も盛ん。近くに温泉やレジャー施設も点在し、年間を通して楽しめる人気スポット。

写真提供:静岡県観光協会(城ヶ崎海岸、朝霧高原、浜名湖)、牧之原市観光課(牧之原大茶園)