新潟県特集 地域別求人情報 早くから圏域ごとに医療機関の役割分担が進み、行政と大学が協力してそれを支援するなど全国に先駆けた新潟県の取り組みをレポートする。

新潟県知事から医師の皆様へ

地域でも臨床と医学研究を両立しやすいなど「新潟で働きたい」と思える環境を整えていきます。

新潟県知事の米山隆一です。

私は読者の多くの皆様と同じ医師であり、放射線科医として働いていました。その後、法律分野に転身し、さらに平成28年10月に新潟県知事となりました。

人口10万人当たりの医師数は全国的に増えており、新潟県でも増えていますが、順位は全国で43番目となっています。

県内で見ると、私の出身地である魚沼地域を始め、新潟市以外では医師不足が深刻です。それを解決するために、私は、「新潟で働きたい」と思える環境をつくることが重要であり、地域での臨床と医学研究が両立しやすい環境を整備したいと考えています。

新潟県には14の県立病院(魚沼基幹病院含む)があり、他県に比べても非常に多い数です。県立病院の電子カルテ化を推進し、統合データベースの構築・活用に向けた具体的な検討を進め、将来的には研究に活用できる環境に繋げていきたいと考えています。

地域医療体制については、高度急性期・急性期から、回復期、慢性期、在宅医療に至るまで、一連のサービスが切れ目なく、また過不足なく提供されるなど、各地域において、患者の状態に応じた質の高い医療が効率的に提供されることが理想です。

この実現に向けた具体的な取組として、県内2例目の公設民営の基幹病院となる、県央基幹病院の整備を進めています。基幹的病院と地域の医療機関との連携を深め、「面」として、地域の医療ニーズに応えられる体制の構築を進めていきます。

また、2機目となるドクターヘリの運航が開始されました。本県は全国第5位の面積を持ちますが、1機目と合わせて県内全域に30分以内に到達でき、複数の出動要請にも対応可能な体制が整ったところです。今後も、隣県のドクターヘリとの相互補完による救急搬送体制の構築などを積極的に進めていきたいと考えています。

新潟県には、素晴らしいものがたくさんあります。

美しい自然や美味しい食べ物をはじめ、歴史的価値の高い遺産や文化、知られていないかもしれませんが世界トップクラスの産業がいくつもあります。何よりまじめで温かい人々がいます。

新潟に興味を持たれた医師の皆様、この新潟で一緒に働きませんか。

お待ちしています。

新潟県知事 米山隆一氏
1992年東京大学医学部卒業。放射線医学総合研究所(現:国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 放射線医学総合研究所)、ハーバード大学附属マサチューセッツ総合病院研究員を経て、2005年から東京大学先端科学技術研究センター医療政策人材養成講座特任講師。2011年弁護士法人おおたか総合法律事務所勤務。2016年10月から現職。

新潟県福祉保健部 福祉保健課参事(医療政策担当)神田健史氏

新潟県が充実を図る医療提供体制のポイント

魚沼基幹病院の整備
二次保健医療圏が担う機能を圏域内で完結させるため、魚沼基幹病院の整備と周辺病院を含めた医療の再編を行った。基幹病院は高度医療、救急医療、地域医療支援機能を担うと同時に、新潟大学等との連携の下、教育センターや研究センターを併設し、総合診療医等の育成や生活習慣病に関するコホート研究を行っている。
県央基幹病院の整備
県央圏域において、これまで不足していた救命救急医療や高度・専門的医療を確保するとともに、医師確保を図るため、医療再編を進め、救命救急センターを併設した基幹病院を整備する。さらに、基幹病院と周辺医療機関との役割分担・連携を進め、圏域内で相当程度完結できる医療提供体制の構築を目指す。
地域医療連携ネットワークの整備
医療の質の確保や勤務医の負担軽減を目指し、佐渡圏域と魚沼圏域では圏域内の病院や診療所、薬局などをオンラインで結び、診療情報や画像情報などを共有する医療連携ネットワークの構築を進める。重複検査や重複投与の回避や、医療者への正確な情報提供を可能にする。
ドクターヘリの整備
広大な県土を有し、へき地を多く抱えることから、救急医療体制の確保のためドクターヘリを導入し、救急医療の専門医と看護師による早期の救命医療の開始、救急医療機関への速やかな搬送を行っている。今後も効率的な活用を進め、一層の救命率の向上と後遺症の軽減を図る。

資料提供:新潟県

医師の不足や地域偏在を補うため医療機関の役割分担と地域連携が進む

医師数の不足をカバーする密接な地域連携が特色

新潟県は全国5位の面積を持ち、自然環境も平野、山間部、離島など多様だ。同県の『新潟県地域医療構想』では、これを7つの二次保健医療圏に分けて現状把握と課題の分析を行っている(左図参照)。人口10万人当たりの医師数は新潟市、新発田市、長岡市のような都市部への集中が見られ、中でも新潟圏域は県平均の200・9人のみならず、全国平均の244・9人も上回る287・2人となる。一方で他の6圏域は県平均よりも低く、県内で最も低い魚沼圏域は119・0人と新潟圏域の半数以下となっている。「確かに当県のほとんどの圏域で医師数は全国や県の平均を下回ります。しかし人数の不足と、各圏域に必要な医療が提供されないこととはイコールではないと私は考えています」

医師不足は必ずしも医療不足を意味しないというのは、同県で医療政策を担当する神田健史氏だ。神田氏は新潟県出身で、自治医科大学卒業後に新潟県内の病院で義務年限を過ごし、大学教員となってからは各地の地域医療に関する研究も進めていた。「臨床での経験や研究成果も踏まえると、当県の地域医療は厳しい状況に対応すべく、早くから医療機関の役割分担と連携が生まれ、それが根づいているといえます。こうした体制のため、県外から来た医師でも、紹介先に迷うことなく診療できると思いますね」

病床数よりも需要に合った医療体制の提供が重要

また計画の策定や推進にあたっては、圏域ごとに地域の関係者が課題を探り検討した後に、解決策を持ち寄ることを重視しているという。「地域医療構想では将来の医療需要の推計をもとに病床数を推計しますが、大事なのは数より各地域の医療需要に合った医療の提供体制です。高齢化で大腿骨頸部骨折、肺炎、心筋梗塞などが増える予測なら、リハビリテーションも重要でしょう。やはり各圏域で考えた方が実効性はあると思います」

ここで神田氏が強調するのは、同県でいう地域医療、地域連携はそれぞれの地域が求める医療の提供が目的であり、医師や医療機関が得意分野だけを提供し、それ以外はほかに任せるといった分業制度ではないという点だ。「医師が地域のニーズに応じて学び、自らを変化させることが、本来の意味での地域医療ではないでしょうか。当県ではそれに早くから取り組んできましたが、地域の中で医療をどう位置付けるかを考え、地域に求められる存在を目指して成長することは、医師にとって本望ではないかと思います」

同県で専門性を高めたいなら三次救急の病院、家庭医を目指すなら地域の医療機関と、受け入れ先は事欠かないと神田氏。同県独自の地域医療で力を伸ばしてほしいとエールを送った。

新潟県地域医療構想による各地域の特徴

下越構想区域
救命救急センターを持つ基幹的病院が高度・専門的医療を担う。区域内の完結率は8割を超えるが、悪性新生物や小児医療は新潟構想区域への流出も多い。離島を含め広大な面積を有し、救命救急センターまで60分超の地域もある。
新潟構想区域
新潟市に高度・専門的医療を担う医療機関が複数立地し、構想区域内での完結率が非常に高い。一方、区域内の市町単位での流出入は大きく地域差があり、緊急性の高い疾患でも急性期病院まで90分を超える地域もある。
県央構想区域
救命救急医療や高度・専門的医療を確保し、構想区域内で相当程度完結した医療提供体制を構築するため、救命救急センターを併設する県央基幹病院の整備が進んでいる。現状では区域外への流出が多く、完結率は全般的に低い。
中越構想区域
救命救急センターを併設した基幹的病院や公的病院が複数あり、高度・専門的医療の中心を担う。比較的役割分担が整備され、入院医療の完結率は高い。医師数は長岡市では県平均より高く、それ以外は低いなど地域偏在がある。
魚沼構想区域
公立病院の医療再編を行い、魚沼基幹病院を中心に、機能分担による地域完結型医療を目指している。以前は完結率が県内構想区域の中では2番目に低かったが、同院開設後は救急医療の完結率は高まっている。
上越構想区域
救命救急センターも有する基幹的病院が高度・専門的医療を担い、各地域の基幹的な病院は急性期医療やへき地医療を担うなど、役割分担ができている。完結率は高く、構想区域外への流出、構想区域外からの流入も少ない。
佐渡構想区域
構想区域の中央部に基幹的病院が立地し、医療機関の役割分担は比較的整理されている。離島のため、他構想区域からの流出入が少なく完結率も高い。佐渡構想区域で対応できない疾患はドクターヘリが活用されている。

資料提供:新潟県

大幅な医療再編やICT活用などへき地医療への取り組みも活発

持続可能な体制を目指して医療再編を行った魚沼圏域

ここで圏域が取り組んでいる医療政策の一つを見てみよう。同県内で人口10万人当たりの医師数が最も少ない魚沼圏域では、地域内の連携を支援し、持続可能な医療提供体制を目指して2015年から医療再編が進められた。

まず、三次救急や高度医療を担うため魚沼基幹病院(新潟県南魚沼市)を新たに開設。既存の県立病院を地元市に移管するとともに、病床縮小の上、初期・回復期医療を担う病院に再編。役割分担をより明確にした上で、いわば地域全体で一つの病院として機能させるものである(詳細は左下図)。

また、魚沼基幹病院には新潟大学医歯学総合病院の一組織として、新潟大学地域医療教育センターを併設している。同センターには、新潟大学医学部の協力を得て同大学の特任教授等を指導医として配置し、診療・教育・研究を行う体制を整えている。

医療が地域内で完結するよう、病院の開設や病床変更も含めた再編を行い、診療や研究に携わる人材までを手当てする施策を「魚沼モデル」として全国にアピールしたいと神田氏はいう。「大学側も地域医療を実践しながら医師を育て、学生の卒前教育や研究の拠点を持つことは大きなメリットです。しかも当センターでは2018年度から基幹型の研修病院として研修医を受入れ予定で、地域社会と密接に関わる環境で、医師の卒後教育を行うことが目標です」

医学部卒業後、大都市圏で専門を磨いてきたが壁にぶつかった、患者のニーズに応えきれないといった悩みを持つ医師もいるだろう。同センターでは後期臨床研修医も受け入れており、改めて医療の原点に触れ、新たな診療に挑戦することで大きく成長してもらえると神田氏は考えている。

地域医療の経験をもとに研究ができる環境を提供

さらに同県では、新潟大学大学院に寄附講座として『新潟地域医療学講座』を設置し、「地域医療部門」「災害医学・医療人育成部門」の2つの部門において、新潟の地域医療に求められる医師の育成や研究を行っている。「地域医療・へき地医療に携わると研究ができないといったイメージを払拭するため、新潟地域医療学講座と連携して、医師が地域医療の現場での経験をテーマに研究を行い、学会で論文発表できるような体制をつくっていきたいと考えています」

これ以外に、県内のさまざまな病院に勤める医師の研修拠点として、新潟医療人育成センター(新潟県新潟市)が設けられている。ここでは体系化された研修プログラムにもとづくシミュレーション機器等を活用した教育を行っており、医療の高度化に対応できるようスキルアップを支援している。

患者情報を島内で共有して高度な地域連携を行う佐渡圏域

このほか、圏域別の課題として圏域内外を含めた医療機関の連携を挙げる佐渡圏域では、ICTを活用した佐渡地域医療連携ネットワーク(さどひまわりネット)の活用が進んでいる。

これは島内の病院や診療所、薬局などが個別に保有する患者の診療情報や処方情報を地域医療連携ネットワーク内で共有して医療の質を高め、他の医療機関への紹介や検査予約などにも活用するというものだ。加えて介護施設や訪問診療では介護職員がネットワークを通じて医師に指示や相談を求めるといった連携も期待されている。

このように以前から地域での役割分担が進んできた同県では、より高度で密接な地域連携に向けて新たな取り組みが次々に始まっている。

魚沼圏域の医療機関を再編成して役割を明確化
三次救急と高度医療、周産期医療を担う魚沼基幹病院の設置により、魚沼圏域内で高度医療までカバーする。また魚沼市立小出病院、南魚沼市民病院、南魚沼市立ゆきぐに大和病院では一次医療、二次医療を、地域の他の医療機関が初期医療を受け持つなど、それぞれの役割を明確化し、ほとんどの医療を地域内で完結させるのが狙い。

県内病院の調査で得た情報から紹介先を斡旋する事業も好評

新潟県ドクターバンクで県内への転職をサポート

では同県の医師を対象とした転職等の支援策には何があるだろうか。神田氏によれば、県内で多くの医師に活躍してもらうため、新潟大学医学部と連携した地域医療支援センターを開設し、自らセンター長を務めているという。県内の就業を希望する医師を対象とした『新潟県ドクターバンク』も同センターが支援している。

この制度は医師本人のさまざまな要望をもとに転職先を紹介するものだが、神田氏は県内の病院を毎年訪ねて調査を重ねており、医療現場を経験した医師の目で現状を確認しているため、各自の要望にマッチした紹介先選びが確かな点が強みとなっている。

またこれを利用して新潟県の病院を訪問する場合はスタッフの同行も可能で、交通費は全額補助される。「むろん長く診療する人が望ましいのですが、当県の医療に興味を持ち、しばらく勉強したい人も歓迎です。当県の地域連携を是非経験してください」

医師に対する主な支援施設・支援策

医師の教育・研究支援
  • 良医育成新潟県コンソーシアム(臨床研修医対象)
  • 新潟大学大学院 新潟地域医療学講座
  • 新潟大学地域医療教育センター・魚沼基幹病院
  • 新潟医療人育成センター
県内への転職支援
  • 地域医療支援センター
  • 新潟県ドクターバンク
  • 新潟県女性医師支援センター
医師の勤務環境整備
  • 医療クラークなどの教育支援
  • 病院内保育所への助成等

医師の業務の負担軽減や女性医師の支援にも注力する

同県は県内医師の勤務環境の整備も進めており、例えば医師の業務軽減のため医療クラークの教育支援なども検討中だという。また女性医師を支援する「新潟県女性医師支援センター」では、女性医師の勤務継続や復職などの相談を受け付け、復職研修を行う県内病院の情報提供なども行っている。「県外からの転職相談も受けるなど、女性医師への支援窓口を一本化して、より利用しやすくしたものです」

このほか医療機関に対しては、病院内保育所への助成など女性医師が働きやすい環境整備を支援している。

上越・北陸新幹線で東京から最短1時間40分季節の楽しみが満載の新潟県

伝統芸能、夏の花火、雪まつりなど、多彩なイベントが四季折々に楽しめる。

新潟県の自然、グルメ、イベントなどの詳しい情報は「にいがた観光ナビ」で。https://www.niigata-kankou.or.jp/

新潟県への移住情報なら「にいがた暮らし」で入手

新潟の気候や交通網、子育て支援策、レジャーの楽しみなど、新潟県移住の基礎情報が網羅されたサイト。移住した人へのインタビューも有り。新潟県内市町村の空き家情報を希望の条件で検索できる「空き家情報検索システム」のほか、県・市町村の住宅関連支援制度の検索も可能。

http://niigatakurashi.com/
東京都内に2ヵ所の相談窓口。表参道と有楽町の「にいがた移住支援デスク・ココスムにいがた」

新潟県では都内の交通至便な立地に移住相談窓口を開設。県内での暮らし全般に関する情報提供のほか、市町村や県の定住支援策等も紹介してくれる。

表参道オフィス
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