集患につなげるPR方法| 開業 七転び八起き

※「ジャミックジャーナル」は2011年10月号より「ドクターズキャリア マンスリー」にリニューアルされました。

第7回

「集患につなげるPR方法」

チラシ、看板、電柱広告……
PR方法はいろいろある

 落下傘開業では、いかにうまくPRを行い、集患をするかで、その後の経営状態が大きく異なっていきます。

 実際開業をしてみると、事前に見聞きしたPR方法がまったく役にたたないことがありました。自分の経験からPR方法、集患に役立ったことをいくつかあげてみたいと思います。

 医業には広告の規制があり、広告媒体やPR内容も限られています。広告として許可されるのは、電柱や野立て、駅などの看板、電話帳、インターネットなどです。チラシなどは開業時の内覧会のチラシであれば可能です。

 広告の出稿方法は開業前、開業後に大きく分かれます。

 開業前は大量に広告を出稿できる唯一のチャンスです。落下傘開業ではより多くの人に知ってもらうために、このスタートダッシュを効果的に行うことが特に大切です。

 最初のPRは職員の募集広告になります。いい職員を選ぶためのものですが、広告にもなることを念頭に、募集要項を作成してください。医院の理念やキャッチコピーなどがあれば、要項に盛り込むのがよいと思います。

 次は開業のお知らせのチラシです。私の場合新聞の折り込みチラシにしましたが、他のチラシに紛れて捨てられてしまうからでしょうか、あまり手ごたえはありませんでした。先輩開業医や一部のコンサルタントによれば、チラシはポスティングのほうが効果的なようです。ポスティングを専門に行っている会社もあるので、検討してみたらよいと思います。

 次はクリニックの設置看板です。以前も書きましたが、大きさと道路に対する角度が大切です。当初設置した看板は建築家によるデザインで、蛍光灯が入った横型のとても美しい看板でした。しかし、道路に対する角度が平行であり、走る車の目にはとまりません。景観には調和していましたが、看板としては失敗だったと思っています。

 開業後、患者さんからも看板がわかりにくいと指摘され、新たに看板を設置しました。看板屋さんに作成してもらい、こちらは縦型で道路に直角に設置しました。そのおかげで100mほど離れた交差点からでもよく見えます。また、標榜科は特徴をつけるために私の場合「肝臓専門医、内科、消化器科(現在は消化器内科)」と記載しました。さらに、女性医師であることをアピールするために似顔絵つきの看板も作成したところ、大変好評で、特に女性の患者さんが増えました。

 電柱広告は電柱のうえに設置するものと、電柱の胴部に設置するものがあります。電柱のうえの広告はほとんど見ないので、必要ないと思います。電柱の胴部の広告は、自分のクリニックの近くの交差点や大通りからクリニック方向に曲がる交差点、交差点手前の車のスピードが落ちるような場所に設置するのがよいと思います。

 看板や電柱広告は、最初は実際に走行する車から見えるような効果的な設置ができませんでした。看板設置までに十分な時間がなかったので、よい場所が空いていなかったこと、また、実際に自分が走って看板の位置を確認しなかったことが失敗の原因だと思っています。

駅看板、電話帳、ホームページ
年賀状など広告もいろいろ

 駅の看板は、新幹線の駅の総合掲示板のなかに小さな広告を出稿しています。この地域では移動がほとんど車なので、駅の広告はこれで十分だと判断しました。

 電話帳はNTTと、地域限定の電話帳がありどちらも広告を出しています。女性医師を強調するよう、パステルカラーで似顔絵付きにしました。

 インターネットのホームページはあまり効果がないと思いましたが、30歳代から50歳代の患者さんは利用するようです。開業当初は高齢の患者さんが来られることを予想していましたが、地方都市では高齢の患者さんはなかなかクリニックを変えません。

 私のクリニックではまずお子さん、お孫さんが受診され、自分がよいと思い高齢の患者さんを連れてくるパターンが見られました。最初、ホームページはお金がかかりすぎ、更新もコンサル会社を通さなければ自由にできなかったので、いったんやめました。しかし、このような状況をうけて、ホームページを作成しなおしました。

 プラセンタやプロペシアなどの自費診療の患者さんは、インターネットで検索して来院されることが多いので、自費診療を考えている先生はターゲットを絞ってホームページを作成されてもよいでしょう。

 地区ごとに年賀状を出すサービスも利用し、近隣の地区の住人全員に年賀状を出しました。最初はあまり効果がないと思っていましたが、1年以上たってその年賀状を覚えていて受診された患者さんが数名いました。以後しばらくは患者さんに年賀状を出しましたが1000名を超えたあたりで住人全員に送ることはやめました。今は家族単位で利用してくださる患者さんに年賀状を送っています。

開業後に大切なPR方法は
口コミ、講演、地域のつながり

 開業後に行うPRはさきほどのインターネットや電話帳広告を更新するくらいです。

 開業後いちばん大切なのは患者さんの口コミです。診察、説明をていねいに行うことが必ず口コミにつながります。さらに患者さん以外の口コミがあります。行政の保健師さんの口コミです。行政の予防接種やイベントで一緒に仕事をすることもあるでしょう。その際に自分の得意分野などを売り込んでおきます。うまくいけば保健指導の際などに「あの先生なら近くだから」と紹介してもらえることもあります。

 また、院外薬局の薬剤師、ケアマネジャー、栄養士などコメディカルの方々も口コミが期待できます。いずれも、常日頃よい関係を築き、自分のセールスポイントをアピールしておくとよいでしょう。

 これ以外に一回で効果のあるPRは講演です。自分の地域の町内会や、学校、健康サークルなど講演の依頼があれば、ぜひ引き受けてください。一度に数十人にお会いしてお話ができ大変効果的です。私も専門分野だけでなく幅広く講演をさせていただきました。原稿やスライドも一生懸命つくり、自分を印象づけるよう努力しました。

 また、商工会議所に入会し、健康についてのコラムを会報に3回書かせていただきました。写真と地図つきのコラムであり、これは集患に効果がありました。媒体の信頼性が高いことも安心感につながったようです。地域の多くの人が読んでいる媒体にコラムを書くのもよいPRになると思います。

 以前、この連載でも書きましたが、私の場合は地域のグループに入って、顔を覚えてもらうことが集患に効果的でした。商工会議所や近所のかたが受診してくれた場合、そのお店を利用することが重要です。

 ただし、注意しなければならないこともあります。開業当初、患者がこなくて困っていると、親切そうに近づいてくる人がいます。本当に親切な人もいるのですが、なかには政治団体や宗教団体の勧誘目的などもあります。うっかり信頼してかかわるとあとが大変なので、よく確認のうえお付き合いするのがよいと思います。

 いろいろなPR活動を挙げてみましたが、いちばん大切なのは患者さんの評判、口コミです。日常診療で患者さんをしっかりと診察することが究極のPR方法だと私は思います。

※当記事はジャミック・ジャーナル2009年10月号より転載されたものです

非公開求人1万件以上。

医師転職専門の
キャリアアドバイザーが
施設との条件交渉を
代行します。

転職のご相談はこちら

サイトは個人情報保護のためSSL暗号化通信を採用しています。お客様からの情報送信は暗号により保護されています。