医師会との付き合い方| 開業 七転び八起き

※「ジャミックジャーナル」は2011年10月号より「ドクターズキャリア マンスリー」にリニューアルされました。

第6回

「医師会との付き合い方」

医師会入会には、
ローカルルールが存在する

 開業を決意した際、地域の医師会に入会するかどうかは避けて通れない問題です。東京では開業しても医師会に入会しない先生が多いと聞きますが、地方では医師会に入会している先生がほとんどのようです。

  

 私も開業を決めた時点で医師会に入会するつもりでいました。しかし、事前の情報収集がうまくいかず、医師会長への挨拶が開業の三ヵ月前となり、だいぶ遅くなってしまいました。

 開業前に所属していた東京都内の医師会は、挨拶や許可をもらう必要などは特になかったのですが、開業先の医師会に連絡をいれたところ、こちらの医師会では、クリニックを建てる前に医師会長に挨拶に行き、許可をいただく必要がある、と言われたのです。医師会のほうからも、挨拶に来ないので、入会しないものだと思っていたと言われました。

 知らなかったとはいえ、こちらの対応も悪かったことをお詫びして、なんとか入会の許可をいただきました。その際、他の地域の医師会ではもっと厳しいきまりがあるとも言われました。

 どうやら、その地域ごとにルールがあり、入会の書類上の手続き以外の決まりごとがあって、そこを経過して初めて入会となるようです。医師会に入会する際には、その地域のルールを確認して、所定の手続きを踏んで入会するよう気をつけてください。

 入会の次は会費の納入となります。院長はA会員となるので、入会金がかなりの金額になります。こちらも医師会ごとに違うようです。私の入会金は都内で開業された知人の先生より高額で驚きました。その地域の医師会の会員数などにより金額は異なるようです。入会金は開業後でいちばん収入の少ないころに支払うことになるので、こちらも可能であれば事前調査を行い運転資金に組み入れておくことが大切です。ちなみに支払いは分割払いも可能なので、大変助かりました。

 入会後はどのような対応をされるのか心配しましたが、仲間として受け入れていただき、しばらくすると親しく話ができる先生も出てきました。性格の合う、合わないはありますが、現状、問題なくお付き合いをさせていただいています。

医師会に入って
よかったこと

 医師会に入ってよかったことは次の点でした。

 まずは健診と予防接種の仕事です。医師会では市の健診事業や予防接種事業を委託されているので、その仕事を斡旋してくれます。予防接種や健診を通して地域の住民がクリニックを訪れるきっかけとなります。また、公民館や学校などで健診や予防接種を行う場合、自分の顔を覚えていただくよい機会にもなり、後日クリニックを受診してくれることもあります。

 予防接種の会場には市の保健師さんがいるので、顔見知りになると後々仕事がしやすくなります。保健師さんの口コミも集患に非常に有効です。

 医師会によってはラジオ番組やテレビ番組を持っていることもあります。私は地方FM局のラジオ番組で2回、自分の専門分野についてのお話をさせていただきました。新規開業の際にはかならず一度は担当する決まりになっており、ありがたかったです。

 医師会主催で毎月の勉強会や忘年会、新年会や近隣の総合病院との病診連携懇親会が開催されます。このような会合に出席するうちに近隣の病院勤務の先生や先輩開業医の先生とお話する機会ができ、顔の見える連携ができるようになりました。

 さらに保険診療についての助言もしていただけます。保険診療の審査について、集団指導会の開催や個人指導時の対応策などいろいろと情報提供をしてくれました。診療報酬の改正時にも、講習会を開催してくれます。

 産業医の仕事を斡旋してくれるかと期待していましたが、私の開業した地域では産業医の仕事が少ないようで、地域産業保健推進センターの事業を紹介してもらいました。主に健診の事後措置の指導を行っています。

医師会に入って
困ったこと

 逆に医師会に入会して困ったこともいくつかあります。それは医師会内の仕事を頼まれることです。もともと断るのが苦手な性格なので、事務の人や役員の先生方にお願いされると断りきれなくなり、引き受けてしまった仕事がいくつかあります。

 今、私が行っている仕事は4つほどありますが、主なものは介護保険の審査委員、市民公開講座の委員などです。診療時間外の会議で進められればよいのですが、日中、診療時間内に開催される会議もあります。

 私の場合は医師1名のクリニックなので、日中の会議に出席する場合はクリニックを閉院する必要があります。確実に減収となりますが、医師会の報酬はそれに見合う金額ではありません。医師会の仕事はボランティア精神で引き受けたほうがよいでしょう。もちろん、将来、医師会で役員、理事になりたい、医師会の仕事を通して地域に貢献したいと考えている先生は大いに仕事を受けて、積極的に医師会活動に参加すればよいと思います。

 

 クリニックに2名以上医師がいれば、どちらか1名が医師会活動に積極的に参加しても影響は少ないと思います。医師会の仕事をうけるときは、しっかりと内容や会議の時間帯を確認するべきです。参加者の大半が木曜日午後に休診をする場合、会議がその時間に合わせて設定されることがよくあります。しかし、当クリニックは水曜日が休みなのでクリニックを閉院しないと会議に参加はできないのです。他の先生の休診日を調べてみて、自分と同じであれば仕事に影響することはあまりないので引き受けてよいと思います。

 もう一点は、日本医師連盟という医師会付属の政治団体があり、選挙が近づくと支援する議員のポスターを貼るような依頼があったり、後援会に入るよう要請があったりします。近年の医療行政の厳しさを考えると医師会の政治活動がうまくいっていると思えませんので、要請に対しては協力してはおりません。

※当記事はジャミック・ジャーナル2009年9月号より転載されたものです

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