稼げる裏技| 開業 七転び八起き

※「ジャミックジャーナル」は2011年10月号より「ドクターズキャリア マンスリー」にリニューアルされました。

第5回

「稼げる裏技」

当直、外来、健診
アルバイトで連携もクリア

 開業後クリニックの収入が思ったより少なくて困ったとき、どのように収入を増やしていくかは切実な問題です。クリニックの診療報酬を増やせればよいのですが、落下傘開業では最初は患者さんの数が少なく、なかなか増えません。悩んでいても、収入は増えず自己資金は減る一方です。

 今回は、今すぐ役に立つ稼げる裏技を私の経験を踏まえてご紹介したいと思います。

 開業後初めての診療報酬の支払いは、2?3ヵ月後になります。それまでは患者さんの自己負担分しか現金収入はありません。私はこのことを予想していましたので、十分な自己資金を用意しているつもりでした。しかし、予想していたよりも患者さんの伸びがかなり悪く、自己資金が早くになくなってしまうことがわかりました。

 そこで、他の医療機関にアルバイトに行くことにしました。できればクリニックの外では働きたくなかったのですが、自己資金が少なくなり借金の返済が数ヵ月後に始まることを考えれば、とにかく現金収入を増やす方法を考えるしかありませんでした。

 まずは当直のアルバイトから始めました。当直ならば一晩である程度の現金を稼げます。しかし、忙しい病院は、当直料は高いのですが、体力の消耗が激しく睡眠時間もほとんど取れません。毎日の診療の合間や土日に働く場合は厳しいと考えました。最初は東京まで数時間かけて当直に行っていましたが、交通費がかかり移動も疲れてしまうので、紹介業を介して近隣の医療機関を探してもらいました。

 条件としては慢性期の療養病床が主体となる病院での当直に限定しました。こちらの希望にあったアルバイト先も見つかり、開業後半年後ごろより本格的に当直を開始し、約1年間続けました。その期間、ほとんど休みなく土日は当直をしていました。そのおかげで、収入を増やすことができ、さらに近隣の病院との病診連携がうまく行くようになったのです。

 医師不足の今、当直に限らずアルバイトはたくさんあるはずです。自分の体力、能力にあったアルバイト先を見つけて、困ったときはこまめにアルバイトに出かけ、現金を稼ぎましょう。

 クリニックが休みの日に他の医療機関の外来に行くのもよいと思います。以前にこの記事でも書きましたが、私は近くの市民病院の外来をしています。このことが大きな増患につながり、病診連携もうまく行くようになりました。規模の大きな病院でアルバイトをすると、勤務医時代には気がつかなかった利点、欠点にも気がつきます。また、勤務医、開業医の両方の視点で物事を見ることができ、大変勉強になりました。さらに、診療報酬や、最近の保険審査の動向なども病院で情報収集できるので役に立っています。

 当直、外来のほかに現金収入になりそうなのは健診のアルバイトです。こちらも医師会から薦められた市町村より委託された健診、紹介業から紹介されたもの、人間ドックなど健診センターでのアルバイトなどがあります。いずれにしても、アルバイトはできるだけ近隣の医療機関で行い、当直や外来も宣伝活動の一つであると前向きに考え、笑顔で対応しましょう。私の場合はアルバイト先の夜間外来に来られた方が医療機関に問い合わせて、後日クリニックを受診してくれることもありました。

市販後調査、予防接種、
自費診療……裏技いろいろ

 できれば自分のクリニックから外に出ないで現金を稼ぎたい先生もいるでしょう。そういう方には市販後調査や講演会(製薬会社や製薬卸会社対象)を行うとよいと思います。講演会のスライドや原稿の作成はクリニック内でもできますし、市販後調査も数をこなせば大きな金額になります。当直よりは単価が低いですが、クリニック内で書類を作成すればよいので、体力は消耗しません。製薬会社や製薬卸会社などではMR向けの講演や、MR試験前のMRのプレゼンテーション能力を評価する審査役という仕事もありました(わかりやすく言えばダメ出し係)。いずれも講演料が支払われます。このようなお話は取引のある卸業者、製薬会社のMRから依頼があります。お話があれば、積極的に受けてください。

 

 また、今は副作用報告を行うと、報告書の記載が必要になり、こちらも提出すると書類作成料のようなものが支払われます。治験も最近ではクリニック単位で行われるものも少なくありません。積極的に行えばかなりの金額になるはずですが、書類作成は時間がかかるようです(残念ながら当院では治験は行いませんでした)。

 インフルエンザ予防接種も貴重な現金収入になります。相場は医師会で決められていますので、接種料金の変更は難しいですが、少しでも接種者数を増やせれば収入増加につながります。

私は中小企業などを相手に、昼休みやクリニック終業後、土曜日の午後など、仕事場に出張して接種者数を増やしました。また、予防接種の患者さんをクリニック業務外の時間に予約制でまとめて行うクリニックもあります。今年からはこのスタイルで行ってみようと思っています。

 さらに当院ではAGA治療薬のプロペシア、胎盤エキス製剤のプラセンタなどの自費診療も行っています。

 プロペシアは製薬会社に登録しておけば、製薬会社のホームページを通してクリニックを紹介してもらえます。プロペシアの処方は院内処方で行っています。薬局で薬をもらうことを恥ずかしく思うようで、クリニック内で直接私から手渡しをしています。だいたいの方はプロペシアを内服すると継続されています。

 プラセンタ注射は美容目的で受診する方が多く、ほとんどが女性です。またリウマチの方が痛みに効果があると受診されることもあります。ホームページで検索して受診される方が多い傾向にあります。大都市の美容クリニックでは高額で行っているようで、相場を調べ美容クリニックの値段よりかなり安く設定しました。

 プラセンタに関しては2006年から特定生物由来製品の指定を受けており、必ず治療前に説明、同意を得る必要があります。またカルテ、管理台帳の記録の20年間の保存が義務づけられています。説明を行い希望されない方にはヒトプラセンタではなくブタ由来のプラセンタのサプリメントも扱っているので、そちらを購入していただいています。

 自費診療は、カルテなどをきちんと分け、管理を厳重に行わないと、保険指導の際に混合診療だと指摘される可能性があるので注意が必要です。

検死も収入源に
苦しい時期を乗り越える

 さらにあまりおすすめできませんが、検死を行うというのがあります。検死の料金は自費診療扱いになるのでこちらで設定できますが、医師会での相場があります。地域により料金に差があるようですが、地方では検死をする先生が少ないため、開業すれば一度は声をかけられることがあるかと思います。刑事ものの小説やドラマが好きな人は向いているかもしれません。

 私が検死の仕事を受けたのは、警察のある団体に属しており、懇親会のときに検死をするよう頼まれ、断れなくなったいきさつがあります。

 当初は心配していましたが、最近は淡々と仕事をしています。平和な地方都市であれば件数は少ないでしょう。私の場合、検死の仕事は診療時間外や昼休みなどに対応できるものだけをお引き受けしています。近隣の病院も検死を受けているので、どちらかで行うということになっています。

 検死を行うようになってからは以前より警察がクリニックの周りをよくパトロールしてくれているような気がしています。

 クリニックの収入の基本は、増患し、診療報酬を増やすことです。今回紹介したのはあくまで応急処置という意味での裏技になります。

 このように私はいろいろなアルバイトを行い、現金収入を増やし、金銭的に苦しい時期を乗り越えてきました。アルバイトをしないですむのがよいと思いますが、開業してから資金的に困っている先生がいらっしゃれば、試みてはいかがでしょうか。

※当記事はジャミック・ジャーナル2009年8月号より転載されたものです

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