コンサルタントとの付き合い方| 開業 七転び八起き

※「ジャミックジャーナル」は2011年10月号より「ドクターズキャリア マンスリー」にリニューアルされました。

第3回

「コンサルタントとの付き合い方」

コンサルタントは必要
その選択を誤ると……

 開業するにあたって、必ずと言っていいほどお世話になるのが開業コンサルタント(以下コンサル)です。

 その仕事内容は開業地の選定、開業の資金計画、銀行との折衝、医療機器導入、建築会社の斡旋・交渉・監督、職員採用、各種広報、届出書類の作成・提出などで、開業までの面倒な諸事業を担っています。業務の内容はそれぞれの会社により異なると思われますが、私が依頼したコンサルは前述のような仕事をしていました。

 コンサルには、開業支援だけを行う場合と、開業とその後の経営安定までを支援する場合とがあるようです。

 私の場合は、開業までは開業支援だけを行うコンサルに、開業後の経営難時代は別のコンサルに、お世話になりました。開業までは建設会社紹介のゼネコン系コンサル、開業後経営難に苦しんでいた時期に助けていただいたのは会計事務所所属のコンサルで、私は会計系コンサルと呼んでいます。同じコンサルでもその目的、支援の仕方は大きく異なっていました。

 最初に選んだのはゼネコン系コンサルでした。彼らの仕事は開業させることで、建設会社や銀行とつながりがある場合が多いようです。私も最初のコンサルは期日までに面倒な仕事を代行し、開業を成立させる親切な人たちだと思っていました。でも、彼らが何人もの人手を使い、私たちに親切にしてくれる裏には、当然、商売として利益が出るシステムがある、と推察すべきでした。彼らは優しくこういいます。「医療機器や医院建築に関して、何も知らないドクターが自分で交渉すると業者に高いお金で売りつけられますから、そうならないために私たちが仲介に入って交渉させていただきます」。その言葉を信じてしまいました。私の失敗はここから始まっていたのかもしれません。

 今回、このような形で原稿を書いているのも、私の経験談として、開業を支援するコンサルと名乗っていながら、コンサル業務をきちんと行わない業者もあることを知っていただきたいからです。もちろん、しっかりとしたコンサル会社もたくさんあるでしょう。もしかしたら私が少数派かもしれません。そこはどうか誤解なきよう、お願いいたします。

 さて、彼らはまずどんなクリニックにしたいのかを聞いてきます。このとき具体的、明確なイメージを伝えることが大切です。コンサルは建築費、運転資金、医療機器購入費など必要経費がいくらかかるのかを概算し、委託された会計事務所が資金計画をつくります。それを基に銀行から開業資金の融資を受けるために働きかけます。それから建設会社との交渉に入り、設計事務所とクリニックの建物を自分のイメージに合ったようにデザインしていきます。もちろん、この場合も予算内でおさまるように計画していきます。

 しかし、私の場合は具体的で明確なイメージを伝えたにもかかわらず、いつの間にか予算を超える計画になっていました。当初の計画より開業に必要な経費が増えていき、そのほとんどが建築費になっていたのです。医療機器の選定は建築計画の後だったので、ここで経費を抑えるべきでしたが、私は消化器内科医なので、どうしても内視鏡と超音波診断装置だけは譲れません。結局、経費がないにもかかわらず、高額機器を導入し、後日莫大なリース料に苦しめられることになりました。

 そのとき、コンサルは建築費を抑えたり、医療機器の費用を抑えたりするための助言は行いませんでした。なんのためのコンサルでしょう。うちのクリニックは建物こそ立派ですが、借金の額を考えるとときどき腹立たしい気持ちになります。

コンサルのペースに
巻き込まれないことが重要

 私がここまでいいなりになってしまったのは、コンサルのペースで交渉をしてしまったことが要因です。交渉はほとんどが平日で、仕事が終わってからです。食事もほとんど摂らずに、夜の10時や、ときには11時くらいまでもかかりました。場所はコンサル会社のオフィスか関連の設計事務所で行うことが多く、こちらから出向いていました。彼らの殺し文句は、「こんなことでは開業に間に合いませんよ」です。そう言われると期日までに開業できないかもしれないと焦ってしまい、さらに疲労と空腹も重なり、いいなりになってしまうのです。

 しかし、ここで決して譲ってはいけません。多額の借金を返していくのは自分です。コンサルではありません。彼らのペースに乗らず、自分の主張を押し通すよう交渉を進めてください。私が依頼したゼネコン系のコンサルはなるべく大きな建物を建てさせて、建設会社から仲介料をとるのが目的ではなかったかと私は考えています。私が開業後どうなろうと彼らにとっては全く問題ではありません。コンサルは「開業が成功することを願っています。大丈夫です」と常に口にしていました。そう言いながらも開業してからは、開院日に手伝いに来ただけで、その後は一度も顔を出しませんでした。

 さらに問題となったのは、職員の待遇です。給与を首都圏並みに上げたこと、最初から社会保険で厚生年金にしたことが大きな負担になったのです。

 後日、会計系コンサルに変更した際、経費節減で職員を医師国保、国民年金に変更したところ、年間250万円程度の節約になりました。社会保険は従業員が5人以上または法人であれば強制加入ですが、5人未満であれば加入の義務はありません。職員のために、と手厚く保証しても、いまどきの職員はよくして当たり前、あまり感謝もしませんし、自己都合ですぐに辞めてしまうことも多いものです。クリニックの経営が安定し、貢献してくれる職員が固定化したと思われる場合か、あるいは法人化するまでは社会保険、厚生年金にはしないつもりです。

 他にも効果の出ない高額な看板や、ウェブサイトも作成しました。ウェブサイトは確かにきれいに仕上がりましたが、制作会社との間にコンサルが入ったために、最後までウェブサイトをこちらで変更することができず、更新もできない状況でした。結局、ウェブサイト制作会社との契約をやめ、今は個人のSEに任せていますが、こちらも仕事が円滑ではないので近日中に変更する予定です。

 また印刷物や備品、電子カルテはコンサルの紹介した業者に依頼しました。すべて東京の業者でしたので、地方で開業してからは交渉が不便になりました。印刷物や、備品、看板などは地域の業者に頼んだほうが、割安でできる可能性が高いですし、知名度を上げるチャンスです。面倒でも複数の地域業者に見積もりを出させて、検討するのがよいと思います。

そのコンサルは開業後も
面倒を見る気があるか?

 それでも日常の診療に追われながら、開業を期日までに実現していくために、コンサルの力を必要とする場合も出てくると思います。

 コンサルをこれから選ばれるならば、私は会計系コンサルをおすすめしたいです。会計系コンサルは経営指導と税務会計業務を行います。私が開業後に契約した会計事務所はコンサル業務、税理士業務、社労士業務もできるので、一括して委託しています。薬剤卸業者から以前紹介された、医療法人セミナーで講師をされていた会計事務所です。すべての業務をまとめた顧問料は、以前契約していた税理士事務所と社労士事務所の顧問料の合計と比較しても、月々2万円程度の差額で済みました。

 この会計事務所と契約を行った経緯は、以前に契約していた税理士事務所とさまざまな問題が発生したからです。出身大学の先輩開業医に同窓会でその問題を相談した際、やはり大手の会計事務所か、医療に特化した税理士事務所がよいとのアドバイスをいただきました。会計事務所に相談した後は、経営改善のために即座に緊急対策案を立ててくれ、ありがたかったです。

 会計系コンサルのよい点はクリニックの経営が順調になれば、半永久的に顧問料を受け取ることができるので、破綻させずに経営改善しようと努力するところです。私が会計系コンサルに依頼した頃は、クリニックの経営は破綻寸前でした。彼らのおかげで徹底した経費節減・経営改善を行った結果、なんとか持ちこたえ、今では黒字になりました。

 また彼らは開業支援だけではなく、開業後3年くらいまでの経営を指導します。今からコンサル導入を考えられる先生は、少なくとも開業後まで責任を持って支援してくれるコンサルを選ばれたほうがよいと思います。そして遠慮しないで自分の意思をしっかり伝え、開業後の円滑な経営を行っていただきたいと思います。

 借金の返済は自分だ、ということを忘れないようにしてください。

※当記事はジャミック・ジャーナル2009年6月号より転載されたものです

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