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現病歴を「上手く」取るための英語表現

医療面接 history taking において医師の印象を決定づける要素の一つが「現病歴」history of present illness (HPI) の尋ね方です。
患者さんの「主訴」 chief complaint の詳細な経過を映像で捉えるように聞き出すだけでなく、患者さんに「このお医者さんはしっかりと自分の話に耳を傾けてくれる」という安心感を与えることが理想ですが、それを英語で行うとなると、なかなか難しいのが現実です。
そこで今回は、どんな主訴にも応用できる、現病歴を「上手く」取るための英語表現をご紹介します。

英語での「あいづち」表現

まず「主訴chief complaint を尋ねる英語表現ですが、これには “How can I help you today?” もしくは “What seems to be the problem?” を使いましょう。後者は “What is your problem?” とは言わないように。一見すると似ていますが、こちらは「何か文句あるか?」という意味になってしまいますので。

患者さんが chief complaint を述べたら、次に「その症状について詳しく話してもらえませんか?」“Could you tell me more about the symptom?” のような open-ended questions を続けます。

患者さんがその経過を話し始めたら、「患者さんの話にあいづちを打ちながら傾聴する」responding to the patient’s remarks with active listening cues ことを心がけましょう。ここで役に立つ英語の「あいづち」表現には下記のようなものがあります。

・“Hmm.”
・“Aha.”
・“OK.”
・“I see.”
・“I understand.”
・“Go on.”

ここで大切なのは「同じ表現を繰り返さない」ということです。上記の表現を上手く組み合わせながら、異なる表現を組み合わせてあいづちを打つとよいでしょう。

よく「わかります」という意味で “I know.” という表現を使われる方がいらっしゃいますが、これは使い方によっては「わかってるよ」というような印象を与えることがありますので、代わりに “I see.” や “I understand.” のような表現を使いましょう。また「それは辛いですね」のような共感表現を使いたい場合には “I’m sorry to hear that.” や “That must be so distressing.” が便利です。 “That’s too bad.” という表現は、使い方によっては「あっそう」のような印象を与えますので使わない方が無難です。また患者さんの英語表現が上手く聞き取れない場合には “What do you mean by that?” という表現が便利です。これは「と言いますと?」というイメージの表現で、これを使うと患者さんはよりわかりやすい英語表現に言い換えてくれることでしょう。

現病歴を「発症時」「発症前」「発症後」に分けて尋ねる英語表現

患者さんが一通り主訴について話し終えたら、次はその経過を詳しく尋ねます。英語では痛みの詳細を尋ねるために “OPQRST” や “SOCRATES” といった「語呂合せ」 mnemonics が有名ですが、そういった具体的な質問をする前に、「発症時onset、「発症前before the onset、「発症後after the onset の3つに分けて質問することをお勧めします。

まず「発症時onset について “Could you tell me how things were when the symptom started?” と尋ねます。これで一通り発症時について話してもらった後に、「発症前before the onset についても “How about before it started?” と尋ねます。ここではさらに「以前にも同じ症状があったか」も “Have you ever had the same symptom before?” と尋ねておくとよいでしょう。それが終わると「発症後after the onset を “Could you tell me how things have been since the symptom started?” のように現在完了形を使って尋ねます。ここではさらに「他の症状other symptoms の有無を “Have you noticed anything else besides the pain?” のように尋ねたり、「治療treatment の有無を “Have you taken some medications or have seen a doctor about this already?” のように尋ねておくとよいでしょう。

このように現病歴を「発症時」「発症前」「発症後」の3つに分けて open-ended questions を使って尋ねると、患者さんは主訴の経過の詳細を自分の言葉でしっかりと述べることができます。こうすることで主訴の詳細な経過を映像で捉えるように聞き出すことができるだけでなく、患者さんにも「このお医者さんはしっかりと自分の話に耳を傾けてくれる」という安心感を与えることができるのです。

この3つに分けて現病歴を尋ねる方法は、どんな症状にも応用できる便利なものです。次回先生の診察室に英語を話す患者さんが来られた際には是非使ってみてください。