2015年6月26日に米国の連邦最高裁判所は同性婚を認める判決を下しました。この結果、全米で同性婚が合法化されることになりました。日本でも渋谷区で同性カップルに結婚に相当する関係と認める証明書を発行する条例案が提出されるなど、「性的少数者」に関して社会的な関心が高まりつつあります。そこで今月は医療現場で遭遇する「性」に関する様々な英語表現を扱います。
まずは下記の単語/表現の意味を考えてみてください。よく知られているものとそうでないものが混在していると思いますが、どれも「性的少数者」に関する表現です。
日本では「性的少数者」と翻訳されることの多い sexual minority ですが、英語圏では sexual diversity や LGBT という表現の方がよく使われると感じます。この LGBT という表現は日本でも最近普及してきましたが、これは lesbian, gay, bisexual, and transgender の頭文字を取った表現です。LGBTは知っていても、LGBTQは初耳という方も多いと思いますが、この Q は queer の頭文字で、以前は「ホモ」「変態」といった意味の差別用語として使われていましたが、現在は「LGBTのどこにも分類されない性的少数者」という意味で使われています。具体的には「transgenderでありbisexual」や「自分のことはそもそも男性や女性という枠組みで捉えられない」といった方が自分の gender identity を表現する際に使います。
これらはそれぞれ lesbian と gay の医学的な英語表現で、文献などで使われる表現です。lesbianとgay、どちらに対しても homosexualという表現は、英語圏では「差別的」な表現となるので使わないようにしてください。また lesbian も gay も単体では名詞としては使われず、形容詞として使われます。ですから “He is a gay.” ではなく、必ず “He is gay.” となりますのでご注意を。
WSWとMSWと同じく、医学文献で使われる bisexual の表現です。それぞれ WSMW や MSWM とも表現されます。straight, lesbian,gay, and bisexual といった性の指向を sexual orientation と言います。これを患者さんに尋ねる場合には “Do you have sexual intercourse with men, women, or both?” という質問表現を使うといいでしょう。
transgender に使われる表現で、前者は「女性から男性へのtransgender」として、後者は「男性から女性への transgender」を意味します。日本語でも「エフ・ティー・エム」や「エム・ティー・エフ」という発音で普及してきている表現ですので、日本語の文脈でも覚えておいてください。また transgender で行われる手術は sex reassignment surgery (SRS) もしくは gender reassignment surgery (GRS) というのが最もよく使われている表現です。
男性が女性の服装をする女装、そして女性が男性の服装をする男装のことを一般的な英語では cross-dressing と言い、医学的にはtransvestic fetishism と言います。これは自身の sexual identityやgender identity とは関係のないものですのでお間違えないように。
この ally とは「支持者」を表す英語で、「アライ」のように発音します。英語圏では “I am an ally.” というメッセージを性的少数者のシンボルマークである rainbow flag( 虹色の旗)に合わせて事務所などに貼ってある場合があります。この ally は straight ally の略ですので、 “I am an ally.” というメッセージは、「私は異性愛者であるが、性的少数者の社会的権利の獲得を支持します。」という意味になり、このようなサインは「このサインが貼ってある場所ではLGBTQの人でも安心して coming out してくださいね」というメッセージを持っています。もう日本語になっている coming out ですが、これは元々 coming out of the closetという表現で、「LGBTQ の方々がクローゼットから出てくるように、自分のsexual orientation を周りの人に伝える」という意味の表現なのですね。