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症例報告の英語表現Part.1

日本大学医学部には、毎年マサチューセッツ総合病院から、ハーバード大学を卒業した優秀な医師が臨床指導に訪れます。
彼らは全員が高い口頭症例報告の技術をもっています。
そこで今月から2回にわたり、日本人医師がよく間違える表現に重点を置きながら、口頭での症例報告をいくつかご紹介しましょう。

既往歴の上手な表現方法は?

以下の日本語を下線部に注意して英語にしてください。

  • 「症例は46歳男性」
  • 「54歳女性、2日間続く間欠的胸痛で当院受診」
  • 「既往歴としては高血圧と糖尿病があります」

“The patient is a 46 year-old gentleman.”

じつに多くの日本人医師が、「症例」と「患者」を混同して使っている場面に遭遇します。日本語では「この患者さんのケース(症例)」というニュアンスで「症例」という言葉を使っているために、「疾患」と「人」を同じように扱いますが、英語では「症例」caseは疾患であり、「患者」patientは人であると明確に区別します。ですから厳密には例文の日本語も「患者は46歳男性」とするべきなのです。「59歳女性の胃癌症例」と言いたい場合には、 a case of gastric canser in a 59-year-old woman のように、前置詞の使い方にも気をつけてくださいね。

“A 54 year-old woman presented with two days of intermittent chest pain.”

「~を主訴に当院受診」という表現にはいろいろなものがありますが、ぜひ覚えてもらいたいのがこのpresented with (chief complaint)です。口頭での症例交北だけでなく、書面でも頻繁に使われる表現ですので、意識して使うようにしてください。

“His past medical history is significant for hypertension and diabetes.”

「既往歴には~があります」と表現したい場合、significant/remarkable/notable for には「既往歴はほかにもあるけれど、ここで重要なものは以下です」というニュアンスがあるため、とても便利です。口頭での症例報告ではother active and relevant medical problemsのみを言及することが大切ですので、この表現は最適なものと言えます。

「術後経過良好」を英語で言うと?

  • 「入院時の聴診所見ではS1とS2に異常なく、心雑音もなし」
  • 「聴診で両側呼吸音減弱」
  • 「術後の経過は良好です」

“His heart exam on admission reveals normal S1 and S2, no murmur is appreciated.”

次はPhysical Examination に関する表現です。聴診は英語で auscultationですが、症例報告でじゃheart と lungs(よくchestと表現されます)の二つに分けて説明するのが一般的です。  よく「理学所見や検査所見では過去形で報告すべきですか?」と聞かれますが、口頭での症例報告の場合は現在形で話すことが多いようです。また「(検査などで)~が見つかった」という表現には、例文のようにto revealという動詞がよく使われます。

“His chest exam reveals decreased breath sounds bilaterally.”

ここでのポイントは「両側」です。もちろんほかにもいくつかバリエーションはありますが、例文にあるbilaterallyという表現も使えるようにしておきましょう。よく「脈拍は正常で左右差なし」という表現にequalを使う日本人医師がいますが、それだと聞いているほうは“Equal to what?” と言いたくなります。この場合も“Pulse (is) regular bilaterally”で十分です。

“The postoperative course is unevenful.”

この場合の「良好」は「特別なことは起こらなかった」という意味です。event自体は特別ネガティブな意味というわけではなく、cardiac eventといった場合も「心臓に関してなにかが起こった」という中立なニュアンスになります。このeventがなかったというのがこの場合の「良好」、つまりuneventfulとなるのです。ちなみにsurgeryには「術前術後の処置」という意味も含まれるため、「術後」は正確にはpostsurgicalではなく、postoperativeとなるのでご注意を。