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医療倫理に関する英語表現

最近、人工多能性幹細胞:Induced pluripotent stem(iPS)cellsの研究が、画期的な研究として賞賛されると同時に生命倫理の議論を呼んでいます。
このような生命観のほか、医療者はじつに幅広く倫理的な問題を扱う必要があります。
そこで今月は、医師が関係する倫理に関する表現をいくつかご紹介します。

Plagiarism:日本人が知らない大事なルール

以下の文章の意味を下線部に注意して考えてください。

  • “ Do dental students also take the Hippocratic Oath at their graduation ceremony?”
  • “ You need to refer to the CONSORT statement, a set of recommendations for reporting randomized controlled trials.”
  • “ The university is investigating whether the former dean is guilty of plagiarism.”

「 歯学部生も卒業式でヒポクラテスの誓いをするの?」

「ヒポクラテスの誓い」は、英語ではHippocratic OathまたはOath of Hippocratesとなります。日本の医師にはあまりなじみがありませんが、どんなものか一度インターネットで見ておくとよいでしょう。また「ヒポクラテスの誓い」に代表される「倫理規定」はcode of ethicsとなり、“Health care interpreters need to adhere to their code of ethics.”「医療通訳者はその倫理規定に従う必要がある」のように使われます。

「 CONSORT声明という、ランダム化比較試験の投稿に関するガイドラインで確認しなきゃダメだよ」

CONSORTとはConsolidated Standards of Reporting Trialsの略語で、「臨床試験報告に対する統合基準」という意味です。生物医学研究論文を作成するための統一規定としてVancouver Styleというものが有名ですが、CONSORTは臨床試験に関する論文の投稿に焦点を当てたガイドラインです。ここにあるチェックリストは臨床試験論文執筆の際にはとても有用ですので、ご存じない方はぜひチェックしておいてください。

「 大学が今、前の学長が剽窃(ひょうせつ)をしていたかどうかを調査している」

英語圏の大学で専門にかかわらず最初の授業で学ぶもの、それがこのplagiarismです。これは「他人の考えを適切な引用手段を用いずに自分のものとして使用すること」で、犯罪行為として厳しく扱われています。日本では学生がレポートを書く際、先輩や友人のものを「ほとんどそのまま写して」提出することが少なくありませんが、英語圏の大学でそのようなことをすればすぐに退学扱いになります。また「先輩が書いた症例報告を患者情報だけ変えてそのまま使おう」というような行為も立派なplagiarismになります。日本ではまだplagiarismに対する意識が低いですから、「自分はそんな盗作行為とは無縁だ」とは思わずに、何がplagiarismに当たる行為なのか、確認しておいてくださいね。

“M&M”って何のこと?

次は臨床の場面での倫理に関する表現です。

  • “ Sometimes we need to let nature run its course.”
  • “We cannot put him on the respirator. He is DNR.”
  • “ I heard that Dr. Bratton was grilled at the M&M conference.”

「 何も処置をしないで天に委ねなければならないときもあります」

これは、「安楽死euthanasia」の場面で使う表現です。このような場面では、特に患者さんのご家族に配慮した表現が求められます。たとえeuthanasiaという単語を知っていても、家族の方に面と向かって“We should perform euthanasia.”という表現は使えません。例文のような「場面に合った表現」を使うようにしましょう。

「 人工呼吸器につなぐことはできません。彼は蘇生拒否の患者さんですから」

DNRDo Not Resuscitateの略語で、「蘇生処置をしないでください」というliving willです。DNRほど知られてはいませんが、Do Not Intubate「挿管処置をしないでください」を表すDNIもよく使われるので覚えておいてください。

「 ブラットン先生、インシデント事例検討会でこっぴどくしぼられたらしいよ」

M&MMorbidity and Mortalityの略です。それぞれの意味で考えると「罹患率と死亡率」となり、何のことかわからなくなってしまいますが、これは病院などで行われる「ヒヤリ・ハットなどを含めた医療事故を報告して、その原因や対策などを検討する会議」の意味で使われます。有名なチョコレートはM&M’sですので、お間違えのないように。