「医学英語には精通していても、患者さんが使う慣用表現には苦手意識が強い」「身につけようと思って勉強しようにも、なかなかそんな機会も時間もない」。そんな先生も多いはず。 そこで今月も、先月に引き続き、一見簡単そうに見えても注意が必要な、そんな身体に関する慣用表現を紹介いたします。
まず、下線部に注意して以下の3つの英語を和訳してください。
色のイメージは、日本語と英語で必ずしも同じではありません。“in the pink”は「肌に赤みがかかった健康な状態」を表し、“in the pink of health/condition”などと用います。意味の似た表現に、“as fit as a fiddle”「バイオリンの弦のようにピンピンしている」、“to look/be the picture of health” “to feel on top of the world”などもあります。また“alive and kicking”は、獲りたての動物の足が元気よく動いているイメージから、人間が「元気な状態である」という意味で使われます。
“on one's last legs”には、「ひどく疲れた状態」という意味のほかに、“at death's door”「死ぬ間際」の意味もあります。「死ぬ間際」には、“to be about to meet one's Maker”や“to be about to croak”などもあります。前者は“one's Maker”「神様」のところに行くので、アクション映画のセリフとしても有名です。後者は“to croak”「カエルがゲロゲロと鳴く」と同じ表現で、ここから「グエッとくたばる」というイメージに発展しました。映画「シュレック3」で、カエルの王様が死ぬとき、まさにこの表現が使われていましたね。
婉曲的に「亡くなる」と表現するのがこの“to pass on”や“to pass away”です。“He was dead three years ago.”などと誤用しがちですが、これでは「3年前は死んでいたけど、今は生きている」という滑稽な意味になるので、“He passed away three years ago.”と正しく表現してくださいね。
さらに、次の3つの英語を下線部に注意して和訳してください。
精神科医“psychiatrist”にはいろいろな慣用表現があります。例文の“headshrinker”は、「精神疾患を持つ患者は混乱していて、話している内容がどんどん大きくなってしまう。それを縮めるのが精神科医」という発想から生まれた表現です。
ほかにも、患者が“couch”「ソファベッド」に横たわって精神科医に話をすることから、“couch doctor”とも表現します。どちらも面と向かっては使われない表現ですが、覚えておくとよいでしょう。
“to flare up”は「燃え上がる」だけでなく、「急に起こる」「突然現れる」という意味もあります。“My arthritis flares up every winter.”「毎年冬になると関節炎が悪化するんです」のように、「ひどくなる」という意味でも使われます。英訳をするときにも役に立つ表現ですので覚えておいてください。
“to go under the knife”「手術を受ける」は、特に何の手術か明言していない場合、「美容目的の手術を受ける」という意味になることがあります。意味を間違わないように、文脈に十分注意してくださいね。