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注意が必要な慣用表現 Part2

「論文の英語はわかっても、英字新聞の英語となるとよくわからない……」。専門的な医学英語は理解できても、慣用的な英語表現に抵抗感を感じる先生も多いはず。また、その場ではわかったつもりでいても、じつは意味を間違えて理解していたというのもよく聞く話です。そこで今月は、先月に引き続き、一見簡単そうでも注意が必要な、身体に関する慣用表現を紹介いたします。

覚えておきたい euphemism

下線部に注意して、以下の英語を和訳してください。

  • I just want to see you beat the big C.
  • Can I spend a penny?
  • She has a bun in the oven recently.

「とにかくこのがんを克服してもらいたいんだよ」

英語は単刀直入に表現する、という先入観から、「がん」や「死」といった強い衝撃を与える言葉でもためらいなく直接的に表現すると考える方が多いようです。しかし、英語でもこの種の表現にはeuphemism(婉曲表現)が使われます。この“big C”はcancerから派生した「がん」を表すeuphemismです。新聞や雑誌の見出しでも“How Vitamin C Prevents Big C”というように使われますので、ぜひ覚えてください。

「トイレに行っていいですか?」

これは、British Commonwealth(イギリス連邦)において、(年配の)女性が使う表現で、かつて女性の公衆トイレで施錠するのにお金がかかったことに由来するようです。他にもトイレに関するeuphemismは数多く、British Commonwealthでトイレの場所を聞くときには“Where is loo?”がよく使われます。

「彼女、最近妊娠したんだ」

妊娠はおめでたいニュースですが、場面によってはeuphemismが好まれることもあります。このbunはホットドッグなどに使われるロールパンのことで、babyと語感が似ています。これが「オーブンに入って焼き上がる準備に入った」と表現することで「妊娠している」という意味になるのです。「妊娠している」にはこのほかにも“in the pudding club”“up the duff”といったeuphemismも使われるので覚えておくとよいでしょう。

英語でも「詮索好き」は「首をつっこむ人」?

さらに次の3つの英語を下線部に注意して和訳してください。

  • He’ll back on his feet again in no time at all.
  • Do not void prior to the ultrasound examination.
  • I don’t mean to be nosy.

今度はどうでしたか?では見ていきましょう。

「彼はすぐにまた元気になるよ」

“to back on one’s feet”は直訳で「自分の足で立てるようになる」となり、そこから「健康な身体に戻る」という意味で使われます。逆に、“to spend time on one’s back”は「仰向けになって時間を過ごす」、つまり「病床に伏す」を表します。

「超音波検査の前には排尿を控えてください」

「おしっこをする」の最も一般的な表現は“to pass water”で、「お小水をする」とよく似ています。この他「排尿する」には“to urinate”“to micturate”、そして“to void”などがあります。前者2つが排尿行為そのものを表現しているのに対し、“to void”には「膀胱を空っぽにする」という行為を表現しています。したがって例文の場面では“to void”を用いた表現が適切でしょう。

「詮索するつもりはありません」

日本語では他人事に「首」をつっこみますが、英語では「鼻」をつっこみます。したがって“nosy person”で「鼻をつっこむ人」、つまり「詮索好きな人」となるわけです。また日本語の「鼻が高い」は、英語では“high nose”ではなく“long nose”となります。ちなみに、「鼻が高い」には「誇らしげな様子」という意味もありますが、“long nose”にはそのニュアンスはありません。