国際化が進む中、日本人医師からも「英語で履歴書や志望動機書を書く必要があるのですが、どう書いたらいいのでしょうか?」というお問い合わせを頂く機会が増えました。
そこで今月は英語での履歴書と志望動機書の書き方に関する基本的事項をご紹介します。
そもそも「履歴書」は英語で何と言うのでしょう? 読者の皆さんも resume と curriculum vitae (CV) という2つの表現を特に区別することなく「履歴書」として使っているのではないでしょうか?
英語の resume とはA4サイズ1枚の書類で、日本の「履歴書」と近いものと言えます。ただこの resume は英語圏では医師や研究者のような専門職の採用に関しては使用されないことが一般的です。医師や研究者のような専門職の採用に関しては日本で言うところの「業績書」に近い curriculum vitae(「カリキュラム ヴィタイィ」のような発音)である CV というものが使用されます。ですから医師である皆さんが「履歴書」として準備しなければならないのはこの CV ということになります。
英語でCV を書く場合、そこには英語圏共通の「作法」があります。
大きさはA4サイズで、枚数は3枚から5枚程度となります。この CV のデザインに関して新奇性は必要なく、必ず白の背景に black text の文字、そしてフォントも Times New Roman や Cambria といった traditional fonts を使い、大きさも11か12 の point size で統一します。またページ下の中央には必ず page number をつけ、項目は bullet points と呼ばれる箇条書きで表現します。その際の動詞は行為を表す action verbs を使い、必ず過去形 past tense で表現しましょう。日本の履歴書では「年齢(生年月日)」「性別」に加えて本人の写真も添付することが求められますが、英語圏ではこれらは「職務に関係のない項目」であり、人事担当者の差別意識を排除するために記載しないことが一般的です。
ではこの CV には具体的に何をどのような順番で記載するのでしょうか?
この項目に関しては「絶対的な基準」があるわけではありませんが、下記の項目が一般的です。
1. Personal Information
2. Education
3. Clinical Experiences
4. Research Experiences
5. Publications & Presentations
6. Volunteer Experiences & Extracurriculars
7. Awards & Scholarship
8. Optional Sections
最後の Optional Sections ですが、ここでは所属学会や使える言語(皆さんであれば「日本語」ですね)、そして評価されやすいリーダーシップやマネジメントに関する経験を記載することが求められます。
人事が確認する書類として最も重要なのがCV なのですが、このCV に次いで重要な書類が日本の「志望動機書」に相当する Personal Statement です。
これはA4サイズ1枚に800 words 程度で書いた essay のことで、下記の3つの内容を書くことが求められます。
1. Why this position?(数ある仕事の中でなぜこの仕事を選んだのか : 志望動機)
2. Why you are a good fit to the position?(数ある候補者の中でなぜ自分が最適なのか : 自己アピール)
3. Future career plans(この仕事を通して何を学びたいのか ・ そしてそれが将来の目標とどのように関連しているのか)
英語圏での採用においては基本的に CV が候補者の人事情報の基盤となる書類となり、Personal Statement はその情報に「候補者がなぜこのポストに応募してきたのか」という物語を加える役目を持ちます。
この CV と Personal Statement に加えて Cover Letter というA4サイズ1枚の書類も提出が必要となりますが、これには下記の項目を書きます。
1. Short introduction
2. State the position for which you are applying
3. Convey a connection to the program
4. Describe your skills and experiences
5. Finish with passion
この Cover Letter は Personal Statement とは異なり、複数あるポストへの応募を担当している人事に読んでもらうことが前提ですので、「どのポストに応募しているのか」と「どのようにしてそのポストのことを知ったのか」という情報が必要になります。またそのポストへの情熱 passion を伝える良い機会でもあるので、そのチャンスは逃さないようにしましょう。
これら CV, Personal Statement, and Cover Letter において最も重要なのがスペルや文法、そしてスペースなど句読法のミスがないことです。提出前に何度も確認して間違いのない書類を作成してください。