最近「陰毛」のことを「アンダーヘア」と表現される方も増えているようですが、もちろんこれは「和製英語」であって、英語で under hair と表現しても全く通じません。このように医師である読者の皆さんでも「脇毛」や「もみあげ」など、体毛に関する一般的な英語表現となるとあまり知らないという方が多いのではないでしょうか?
そこで今月は「体毛」に関する英語表現をご紹介します。
まずは体毛の中でも代表的な「髪」 hair に関する英語を見ていきましょう。
主に男性が通う「理容店」は英語では barbershop、そしてそこで働く「理容師」は barber となります。これに対して主に女性が通う「美容室」は hair salon、そしてそこで働く「美容師」は hair dresser となります。
髪を表現する形容詞であるsmooth, shiny, and voluminous 「ボリュームがある」にはポジティブな印象がありますが、rough やfrizzy 「縮れている」にはネガティブな印象があります。また長い髪型の方にとっては悩みの種である「枝毛」ですが、これは英語では split hair ではなく、 split ends となるのでご注意を。
「髪型」 hair style には古今東西様々なものがありますが、日本と英語圏で共通のものも数多くあります。 「おさげ」は英語では「ブタの尻尾」を意味する pigtails となり、「三つ編み」は「編む」という動詞でも使われる plaits と表現されます。「丸い形状のパン」を英語では bun と呼びますが、髪型としては「お団子」という意味になります。また「男性が侍のように伸ばした髪をお団子で結ぶ髪型」は man bun と呼ばれています。
これらの髪型の名称は日本語と英語で明確に分かれているので混乱することはありませんが、日本語の中には和製英語で定着した髪型名もあります。その代表的なものが「モヒカン」と「スキンヘッド」です。 「モヒカン」は英語では mohawk となり、発音も 「モゥホァーク」のようになります。また「スキンヘッド」をそのまま skinhead と表現すると、「(北斗の拳の悪役のような)乱暴そうな外見の人が毛髪を剃った状態」というイメージになってしまいます。もし単に「毛髪を剃った状態」を表現したいのならば、男女に関わらず shaved head という表現を使ってくださいね。
では次に「顔の体毛」 facial hair に関する英語表現を見ていきましょう。 「もみあげ」は英語では sideburns となります。唇の上にある「口ひげ」は mustache となり、顎と頬に生える「顎ひげ」は beard と呼ばれます。顎ひげの中でもヤギのように伸びたものは goatee と呼ばれます。
英語圏では11月 Novemberになると、男性が mustache を伸ばすことで前立腺癌など男性特有の癌や健康問題に関する社会的な認知を高めていこうとするキャンペーンが行われています。このキャンペーンは mustache と November を組み合わせて Movember と呼ばれています。
「陰毛」は under hair ではなく、pubic hair となります。英語で毛髪や体毛を切ることは cut と言いますが、「短く切る」ことは trim と言います。日本では女性でも陰毛の処理をすることは一般的ではありませんが、英語圏では女性が pubic hair trimmer を使って陰毛の処理をすることは一般的です。
日本でも英語圏でも女性が「脇毛」 underarm hair や「すね毛」 leg hair の「脱毛」 hair removal をすることは一般的です。
この hair removal には「毛剃り」shaving や 毛抜き tweezers を使って毛を抜いていく plucking の他にも、「ブラジリアンワックス」として知られる松脂やハチミツを温めて柔らかくなった状態で肌に塗り、ペーパーを貼って脱毛していく「ワックス脱毛」 waxing や、松脂やハチミツの代わりに砂糖水を使って脱毛する肌に優しい「シュガーリング」 sugaring、そして「脱毛クリーム」 depilatory cream を使う方法など、実に様々なものがあります。
いかがでしたか? 「多毛症」hirsutism や「脱毛症」alopecia といった医学英語に詳しい読者の皆さんから見るとこういった一般英語は hair-splitting(枝葉末節にこだわること) と思いますが、 このような一般英語にも興味を持って学んでいけば、英語学習者として“It’ll put hair on your chest.”(胸に毛が生えるように 「これで一人前になれるよ」という意味の表現) になると思いますので、是非頑張ってくださいね。