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バイタルサインの英語表現

「ショック」を示唆するバイタルサインのことを日本の医師は「ショックバイタル」のように表現しますが、これは和製英語であって英語圏では通じない表現です。このようにバイタルサインは身近ではあっても、その正しい表現や読み方となると意外と知らないという方も多いのではないでしょうか?
そこで今月はこの「バイタルサイン」に関する英語表現をご紹介します。

38.3°Cってどう読むの?

そもそも「バイタルサイン」は英語ではVital Signs のように複数形で表現するのが一般的です。これらは「死体cadaver にはない、まさに「生きていることを示す兆候」であり、「体温」「血圧」「心拍数」「呼吸数」などが含まれ、下記のように表記することが一般的です。

Vital Signs
 Temp: 38.3°C
 BP: 166/86 mmHg
 HR: 102/min, regular
 RR: 22/min

まず「体温temperature ですが、 “Temp: 38.3°C” は “(The body) temperature (is) thirty eight point three degrees Celsius.” と読みます。ここで気をつけて頂きたいのが「数字が1以外の場合、単位自体も複数形となる」ということです。したがって 1 mg は one milligram のように milligram は単数形になりますが、0.1 mg, 2 mg, and 0 mg などは全て point one milligrams, two milligrams and zero milligrams のように s が付く複数形になるのです。したがって “38.3°C” も “thirty eight point three degrees Celsius” のように degree が複数形の degrees になるのです。「摂氏」のことを centigrade と記憶されている方もいらっしゃるかもしれませんが、現在では Celsius が使われています。

また米国では Celsius の代わりに 「華氏Fahrenheit が使われますが、この2つの単位の変換に苦労する方も多いと思います。ただ臨床場面では 「100°F が 37.8°C」、「104°F が 40°C」となることに加え、これらの周辺の温度では「1°F が 0.5°C」となるということだけを覚えておけば、誰でも簡単に変換ができるようになります。つまり100°F から 1°F だけ低い 99°F が摂氏何度になるかを考えるには、37.8°C から 0.5°C 低い 37.3°C になると考えれば良いのです。体温に関してはほぼ正確に変換できる便利な法則ですので、是非覚えておいてください。

166 mmHg ってどう読むの?

次に「血圧blood pressureですが、 “166/86 mmHg” は “Blood pressure (is) one sixty six over eighty six millimeters (of) mercury.” のように over を使って読みます。166 mmHg は「水銀 mercury の高さ」という意味からone sixty six millimeters of mercury のように読みます。 (ただしこの of は省略されることが普通です。)また血圧での 166 のような数字は one hundred and sixty six ではなく、one sixty six のような読み方になることにも注意をしてください。

「高血圧」と「低血圧」は皆さんご存じの通り、それぞれ hypertensionhypotension となります。日本では hypertension にHTという略語が使われますが、英語では HTN という略語が一般的です。また distributive shock では皮膚は warm & dry となりますが、それ以外のhypovolemic/cardiogenic/obstructive shock では、cold & clammy という所見になります。この clammy は「クラムチャウダー」として知られる clam 「二枚貝」から派生した形容詞で、「(二枚貝の中に指を突っ込んだ時に感じるように)湿っぽい感じ」というイメージになります。

心拍数heart rate の “HR: 102/min, regular” は “ (The) heart rate is one oh two per minute, regular.” のように読みます。「頻脈」は日本語でも「タキる」として有名な tachycardia となります。この tachy- は speed という意味で、車の「タコメーター」である tachometer にも使われています。これとは逆に「徐脈」の brady-cardia の brady- は slow という意味になります。心拍数が 60-100 の正常範囲内で、なおかつ「不整脈arrhythmia がない場合、regular rate and rhythm と表現し、この略語の RRR を使って記載することが一般的です。

最後に「呼吸数respiratory rate ですが、 “RR: 22/min” は “(The) respiratory rate is twenty two per minute.” と読みます。「頻呼吸」は tachy- を使って tachypnea、「徐呼吸」は brady- を使って bradypnea となります。それぞれ tachypneic と brady-pneic という形容詞もあり、 “He is tachypneic at 22.” のように表現することもできます。