外国人の患者さんが増加する中、psychiatrist「精神科医」ではなくても英語で「うつ」や「不安」といった症状を診断する機会も増加しています。
しかし言語に関わらず psychiatry 「精神科」の診療では高度な言語能力が必要とされます。
そこで今回は「うつ」と「不安」の診察に役立つ英語表現をいくつかご紹介いたします。
では下記の項目を尋ねる際の質問表現を考えてみてください。
1. 最近の気分
2. 面倒くさいと思う
3. 落ち着かない
4. じっとしていられない
5. 自殺企図
いかがでしょうか?どれも簡単な表現ではありますが、皆さんはどのような表現を思い付いたでしょうか?では一つずつ見ていきましょう。
「気分障害」は英語では mood disorders となります。depressive mood 「抑うつ」の有無を尋ねる際にも、最初は例文のように mood という表現を使った open-ended question で尋ねて、患者さんに自分の言葉で表現してもらうと良いでしょう。具体的に depressive mood の有無を尋ねたい場合には “Do you feel depressed/down/blue?” のような表現を使いましょう。もし患者さんに depressed mood がある場合、会話の流れに合わせて “Do you feel nothing can cheer you up?” や “Do you feel worthless?” のような質問を重ねていくと良いでしょう。
家庭や仕事の様子を尋ねる際には “How are things at home/work?” という質問表現がお薦めです。その上で “How have your symptoms affected your home or work life?” と尋ねます。例文のような「全てが努力しなければならないくらい面倒に感じますか?」という質問はそのような会話の流れの中で尋ねるとより自然な会話になります。
「不安障害」は英語では anxiety disorders となります。したがって「落ち着かない」には feel anxious という表現が使われますが、他にも to feel nervous や feel on edge のような表現も使われます。後者は「縁から落ちそうになって気分が落ち着かない」というイメージの表現です。 他にも “Do you have trouble relaxing?” など、色々な表現を組み合わせて使うと良いでしょう。
「不安障害」でよく見られる「じっとしていられない」には例文の表現以外にも to feel fidgety や to find it difficult to sit still のようなものがあります。また “Could nothing calm you down?” のような表現もよく使われます。
「うつ」や「不安」を訴える患者の診察において、患者の「自殺念慮」 suicidal ideation や「自殺企図」suicidal attempt の有無を明確に尋ねることはとても重要です。英語圏の医師の多くは to kill yourself という直接的な表現を使いますが、「どうも kill や suicide という言葉は強すぎてためらいがある」と思われる方には、例文にある「自損行為をする」という意味の to hurt yourself という表現をお勧めします。
いずれにしてもこのようなトピックを扱う際には医療者自身の感情や価値観が思わぬ形で発露してしまう傾向にありますので、自身が発する言葉には特に自覚的になるように注意してくださいね。