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手術に関する英語表現

「手術」を英語で何と言うかと聞かれたら、皆さんはどんな単語を思いつきますか?
多くの人は surgeryを考えると思いますが、実はこれには「手術」以外にも多くの意味を持つのです。
そこで今月は日本人にあまり知られていない手術に関する英語表現をご紹介します。

1.色々な意味で使われる surgery

英語の surgery には元々「手で行う作業」という意味があります。したがって「外科医」を表す surgeon は「手で作業をする人」という意味になり、その昔、診断をせずに歯を抜いたり、傷ついた手足を切断したり、瀉血をしたり、髪を切ったり髭を剃ったりする「床屋」を表す barber surgeon として使われていました。これに対して身体の中でどのようなことが起こっているかを診断し、患者に寄り添う「癒す人」が physician と呼ばれ、これが現在の「内科医」の語源となっています。現在では surgeon も physician も「医師」として同じ医学教育を受けており、米国ではどちらも Dr. (surname/姓) と呼ばれますが、英国では「内科医」には Dr. (surname/姓) を使い、「外科医」には Mr./Ms. (surname/姓) を使って区別しています。

このように surgery は現在「外科」という意味で使われていますが、一般には「手術」という意味でも使われており、「これまで手術をしたことはありますか?」は “Have you ever had any surgeries in the past?” のように表現されます。しかし医学論文で「手術」を表現する際には注意が必要です。医学論文の書き方マニュアルとして有名な AMA Manual of Style には surgery は「外科」として使い、「手術」には surgery ではなく operation を使うように明記されています。つまり「術前術後の処置を含めた外科治療全体」を surgery と表現し、「手術そのもの」は operation として区別しているのです。したがって「術後の経過は順調でした」と表現したい場合、 “The postsurgical course was uneventful.” ではなく、 “The postoperative course was uneventful.” と表現する必要があります。

この他、米国では外来患者を診察する診療所のことを office と呼びますが、英国ではこれも surgery と呼びます。ですから “I visited my GP’s surgery yesterday.” と聞いた場合、この surgery は「外科」や「手術」ではなく「(一般開業医の)診療所」という意味になるのです。この他にも英国では「政治家との面会」という意味でも surgeryが使われます。このように英語の surgery には色々な意味があるのです。

2.英語で「手術室」は何と言う?

次に「手術室」の英語表現を見てみましょう。

米国では operation room と呼ばれ、臨床場面ではこの略語の OR が「手術室」として使われています。これに対して英国では theatre(米国式のスペルでは theater) が「手術室」として使われています。

麻酔が開発される前、手術というものは痛みを伴うとても辛い医療行為で、現在よりも施術に際してハードルが高く、実施する際には大勢の外科医が見学に訪れていました。このように数多くの見学者が閲覧可能な設備として生まれた「手術室」は現在のそれとはかなり設備や様相が異なり、あたかも「劇場」のようなものだったために theatre と呼ばれ、英国では現在でもその呼び名が定着しているのです。したがってtheatre で働く医療スタッフは英国では theatre staff、もしくは operating department practitioner の略語である ODP と呼ばれています。

手術室に入る際、外科医は「手術時手洗い」をする必要があります。この作業に英語では scrub という動詞を使い、「手術時手洗いをして手術室に入る」を to scrub in や to get scrubbed、「手術用手袋を外して手術室から出てくる」を to scrub out と表現します。

「器械出し看護師」は scrub をするところから日本でも scrub nurse と呼ばれますが、手術室の「外回り看護師」を英語で何と言うかご存知ですか?英語では手術室の内外を色々と動き回るところから circulator や operating room circulating/circulation nurse と呼ばれているのです。また英国では「走り回る」というイメージから runner や running nurse という俗語でも呼ばれているので、もし耳にする機会があれば、「走っている人」ではなくて「外回り看護師」のことだと思い出してくださいね。