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胸痛の随伴症状に関する英語表現

主訴として頻度の高い「胸痛」の病歴聴取では、様々な種類の「胸痛」に加え、たくさんの「随伴症状」 associated symptoms の表現を知っておくことが求められます。「動悸」や「不整脈」といった随伴症状の英語を専門用語では知っていても、それを患者さんでもわかるような簡単な英語表現で言い換えたり、ましてやその有無を患者さんに質問するとなると難しいと感じる方も多いのではないでしょうか。そこで今月は胸痛の随伴症状に関して、「患者さんでもわかる簡単な表現」と「患者さんへの質問表現」の2つに分けて、実用的な英語表現をご紹介します。

では下記の症状に関して、それぞれ「患者さんでもわかる簡単な表現」と「患者さんへの質問表現」を考えてみてください。

  1. 1.angina
  2. 2.pleurisy
  3. 3.palpitations
  4. 4.arrhythmia
  5. 5.diaphoresis
  6. 6.pyrosis

1.squeezing chestpain:“Do you have any pain in your chest? Is the pain pressure-like?”

angina には angina pectoris「 狭心症」という病名として使われる以外にも、「胸が締め付けられるような痛み」として使われる場合もあります。この squeezing chest pain には英語圏では様々な表現があり、患者さんによっては “tightness”「 締め付けられる感じ」 “pressure”「押される感じ」 “crushing”「 潰される感じ」 “gripping”「握りつぶされる感じ」など、様々な表現が使われます。日本の患者さんには「漬物石を乗せているような感じ」と例える方がいますが、英語圏では “I feel like an elephant is sitting on my chest.”「 象が胸の上に乗っている感じ」といった表現がよく使われます。

2.stabbing chest pain worsened by deep inspiration: “Does the pain become worse when you take a deep breath?”

pleurisy は厳密には pleuritis「 胸膜炎」という意味の表現なのですが、実際には pleuritic chest pain「 胸膜炎に伴う胸痛」、つまり「深呼吸(特に吸気時)に伴う鋭い胸痛」という意味でも使われています。この pleurisy は pleuritis「 胸膜炎」以外にも pulmonary embolism「肺塞栓症」、 pneumonia「 肺炎」、 pericarditis「 心外膜炎」などにも認められ、患者さんは sharp pain や stabbing pain といった表現を使う傾向にあります。

3.heart pounding: “Do you feel your heart pounding?”

「動悸」や「心悸亢進」という意味のpalpitationsですが、一般的にはheart pounding という表現が使われます。to pound とはこの場合、「ドキドキする」「バクバクする」というニュアンスで使われています。palpitations を palpation「 触診」と混同される方も多いのでご注意を。

abnormal heart rhythm: “ Could you tap out your heart rhythm on the desk?”

tachycardia「 頻脈」は日本の医療現場では「タキる」とも表現されるほど有名な医学英語ですが、それと比べると bradycardia「徐脈」はそれほど認知されていない印象です。これらを含む「不整脈」arrhythmia ですが、その有無を患者さんに尋ねる際にはちょっとした工夫が必要です。「脈拍に異常があると感じますか」という表現で尋ねるのではなく、例文にあるように「机を叩いてご自分の心臓のリズムを表現してもらえませんか?」のように尋ねれば、患者さんは実際の心拍を指で机を叩くことで表現してくれます。

sweating:“Have you been sweating more than usual?”

diaphoresis は sweating「 発汗」の医学用語です。こういった普通でも見られるような現象に関して尋ねる際には、more than usua「l いつもと比べて異常なくらい」という表現を使って尋ねるといいでしょう。同じように belching「 曖気(げっぷ)」について尋ねる場合は、 “Have you been burping more than usual?” のように表現できます。

heartburn/water brash: “ Have you experienced a burning sensation deep inside your chest?”

「胸焼け」を意味するpyrosisですが、日本人の医師にとっては一般用語の heartburn の方がよく知られています。ただ「食道あたりからの液体の逆流で口の中が唾液で一杯になる」というイメージの waterbrash という表現はあまり知られていないようですが、こちらも同じく「胸焼け」を意味する一般用語です。患者さんに尋ねる際には“Have you experienced heartburn?” と直接的に尋ねる以外にも、例文にあるように「胸の奥の方で焼けるような感じはありませんでしたか?」と尋ねてもいいでしょう。