「頭がいい」「頭が固い」「頭の回転が速い」など、日本語に「頭」を使った慣用表現が数多く存在するように、英語にも、この「頭」に相当する“brain”を使ったさまざまな慣用表現が存在します。
そこで今月はそんなbrainを使った慣用表現をいくつかご紹介しましょう。
以下の文章の意味を下線部に注意して考えてください。
集団の意思決定で重要な判断をする人物のことを日本語でも「ブレイン」と表現しますが、英語も同様です。例文のa brain behind somethingは、「目立つことはないけれど、実は意思決定で重要な役目を果たす人物」という意味で使われます。「表立っては評価されない」という前提がありますので、ほめ言葉として使うときには十分注意してくださいね。
to pick one’s brainは「他人の知恵を借りる」という表現です。この場合、借す側のbrainのほうが借りる側よりも、その知識に関して優れているということになりますから、言われて悪い気はしないはずです。ただし、to ask for one’s advice「アドバイスを求める」のような表現に比べると謙虚さに欠けるので、目上の人には使わないほうが無難でしょう。
brain drainは最近ホットな話題ですので、さまざまな英語文献で目にした先生も多いことでしょう。この表現は研究者といったアカデミックな分野における人材の流出だけでなく、経済的に資本となる人材の流出にも使われるため、human capital flightとも呼ばれています。
次は少し、脳に負荷を与える表現を見ていきましょう。to get one’s brain in gearは「頭にギアを入れてしっかりと考えられるようにする」という表現です。少しゆったりとしていて、「これからがんばるぞ!」というときに使ってみてください。 また例文のCould you get me a coffee?はCould you give me a coffee?と比べて少し尊大な印象を与えますので、ご注意を。
to beat one’s brains out ~ingは「必死に知恵を絞って~する」という意味の表現です。よくI beat my brains out finding proper resources for my paper.「必死に知恵を絞って論文に必要な文献を探した」のように使う方もいますがこれは間違いで、すでに揃っているものを前に、あれこれ考える場合に使います。机に向かってウンウン悩んでいる姿を想像するといいでしょう。
最後も同じく「知恵を絞る」という表現です。to rack one’s brainは「脳みそをいじめる」といったイメージで、to beatよりもやや強い印象の表現です。いずれにしてもあまり楽しそうに考えているという感じではありませんね。