母親の不安とは? 患者の声「電話健康相談」特集

※「ジャミックジャーナル」は2011年10月号より「ドクターズキャリア マンスリー」にリニューアルされました。

もっと聞きたい!患者のホンネ 保険同人社・電話健康相談より

小児の相談の多くは母親の不安によるもの

第5回

保健師●田島徹子

 今回は、お母様たちから寄せられたお子さんに関する電話健康相談の内容をご紹介しましょう。小児に関する相談は、年間およそ2万9,000件に達します。このうち、大部分はお母様の不安に由来するもので、受診後の相談は「症状がよくならない」というのが主です。
 たとえば、2歳の女児のお母様から次のようなご相談がありました。お子さんが熱を出して日中受診し、薬をもらってきたものの、夜の10時頃からまた熱が上がりだして39.3℃に達したことから、「すぐに受診したほうがいいでしょうか?」と問い合わせてこられたケースです。お話を聞くと、嘔吐も下痢もなく、熱だけということでしたので、点滴は必要ないと判断しました。病院へ行っても、結局、解熱剤で対処するしかないので、「このまま様子をみたほうがいいでしょう」とお答えしました。そして、受診が必要な場合の目安をお伝えし、効果的な水分摂取の方法をアドバイスして電話相談を終了しました。
 このように10分、20分お話しするだけで、お母様の不安が解消される場合がよくあります。
 お子さんの薬の飲み方についてもさまざまなお問い合わせをいただいています。「小児科と耳鼻科の薬を併用してもいいですか?」「ステロイドや抗アレルギー剤を長期連用しても副作用の心配はないですか?」「タミフルを処方されたのですが、問題ないでしょうか?」「誤って多く飲ませてしまったのですが、病院へ行ったほうがいいでしょうか?」といった具合です。

基本的なことを知らない母親が増えている

 お母様たちから寄せられる声を聞いていますと、基本的なことを知らないケースが意外に多いことに驚きます。
 たとえば、お子さんに薬を飲ませると、即効で症状がよくなると思っているお母様が大勢いらっしゃいます。「解熱剤を使ったのに熱が全然下がらない」と訴えてくるケースはその代表です。こうしたときは、小児用の解熱剤はもともと1度くらいしか下げられないことをお伝えして、納得していただいています。
 同様に、薬を飲んだのに咳がすぐに止まらない、というご相談もよく受けます。小児の場合、成人向けの麻酔系統の薬ではなく、痰をさらさらにして、咳をだしやすくする薬が主に処方されますが、そうした説明を十分に受けていないお母様も多いようです。
 また、受診したときに「点滴をしてもらえなかったのですが、脱水の心配はないでしょうか?」という声もよく聞かれます。嘔吐や下痢のない発熱でお子さんが脱水になることはあまりありませんが、熱中症がマスコミで騒がれるようになってから、お子さんが熱をだすと、すぐに脱水を懸念して点滴を求めるケースが増えているのです。
 タミフルの服用についても、熱が下がると、お母様は治ったと勝手に判断して、お子さんに飲ませるのをやめてしまうこともよくあります。抗生物質も同様で、長期連用のリスクが気になるようです。
 いずれの場合も、電話相談を受けるときは、決してお母様を責めるような言葉は口にしないよう心がけています。なぜなら、お母様たちは、自分が“叱られた”という印象を持つと、二度と電話をかけてこなくなるからです。お母様の先にいるお子さんのことを考えると、次にかけてきてくださることを大切にしたいと思っています。

ドクターへお願いしたいこと

 ドクターに指示されたことでも、きちんと実行できていないお母様が結構いらっしゃいます。
 座薬を入れるとき、お子さんが泣いて嫌がるのでうまく入れられないとか、座薬を入れたあとに便がでてきて困ってしまい、弊社へ電話をかけてくるケースもしばしばです。
 また、ドクターから「お子さんに消化のいいものを食べさせてあげてくださいね」と指導されても、消化のいいものが何なのかを理解しているお母様が少ないのが現状です。消化のいいものを…と指導したあと、ドクターのほうからもうひと言「消化のいいものって何かわかりますか?」と尋ねていただけると、お母様もその場で質問したり、確認したりしやすくなると思います。座薬を処方していただく際も、座薬をうまく入れられないお母様がいらっしゃることを想定して、「座薬を入れたことありますか?」「座薬を入れるときに困ることはないですか?」といった言葉かけをしていただくと、夜間の救急に駆け込むケースが多少は減るのではないかと思われます。
 もう一つドクターにお願いしたいのは、お子さんの予防接種について、お母様たちに啓発していただきたいということです。お母様たちは、予防接種のリスクを心配されているケースが多く、弊社の電話相談にも多くのお問い合わせをいただいています。お母様たちは決して予防接種を受けるのを拒否しているわけではなく、ドクターから「お母様が決めてください」と言われて決断できずに困っている、というのが私どもの印象としてあります。  最終的にはお母様たちの判断にゆだねるとしても、もう少し詳しく予防接種のメリット・デメリットをドクターから説明していただき、さらにはドクターの個人的な見解をひと言お伝えいただけると、お母様たちも選択しやすいと思うのです。

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※当記事はジャミック・ジャーナル2009年8月号より転載されたものです
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