心の病気の相談とは? 患者の声「電話健康相談」特集

※「ジャミックジャーナル」は2011年10月号より「ドクターズキャリア マンスリー」にリニューアルされました。

もっと聞きたい!患者のホンネ 保険同人社・電話健康相談より

心の病気が引き金となって体に症状が出現

第2回

臨床心理士●平井大祐

 弊社の「心の相談室」には、心の病気が引き金となって体に症状が現れている方からのご相談も多く寄せられています(表)。
 Aさん(20代・男性)の場合もそうでした。Aさんは転職して1年、仕事はとても順調で、よい先輩にも恵まれ、充実感のある日々を過ごしていましたが、最近になって急にやる気が失せ、疲れがとれない状態になりました。病気かもしれないと思い、近所の内科で検査を受けてみたものの、「異常はありません。様子をみましょう」とのこと。転職したばかりなので、「もっと頑張りたい」「もっと仕事がしたい」と思っているのに頑張れない自分に腹が立つ、どうしたらいいでしょうかというご相談でした。
 お話を聞いていて、精神的なエネルギーが枯渇している状態なのに、気持ちだけが空回りして悪循環に陥っている様子がうかがえました。そこで、ストレスの背景を知るため、生活状況を確認しました。すると、転職してからずっと仕事が忙しくて睡眠を十分にとれていないこと、さらに慣れない職場環境で神経をすり減らし、食欲も落ちていることなどがわかりました。
 まずは、十分な睡眠で体の疲れをとり、意欲や食欲の回復を図ることが重要だとお伝えし、精神科の専門医に診てもらうようにお勧めしました。Aさんは納得して、その後、内科の主治医に紹介状を書いてもらって精神科を受診し、順調に回復されました。  一方、心因性の問題かとうすうす気づいていても、精神科の受診を躊躇し、内科へ通院されている方もいらっしゃいます。
 そのなかには、内科で向精神薬を処方されているケースもありますが、早期に適切な対応をして解決しないと、いったん症状がやわらいでも、再発、再々発する確率が高まります。根本から病気を解決するには、やはり「専門のドクターを受診することが大事ですよ」とアドバイスしています。

相談者が納得する「ゴール」を見つける

 電話でお話を聞くだけで心の問題かどうかを判断するのは難しいのも事実です。しかし、判断基準となる目安があります。
 まず、症状が出てきた時期をたずねて、その前後にプライベートや仕事で大きなストレスがかかるようなことはなかったかを問いかけます。すると、前記のAさんのような転職や、あるいは出産や結婚、身近な人の死といった人生の大きな出来事が重なっていることがよくあります。また、そこまで大きなストレスでなくても、毎日の生活のなかで少しずつ疲れが蓄積され、限界がきてダウンしてしまうようなことも起こります。
 もちろん、電話相談でできることは限られていて、魔法のように心の問題が解決されるわけではありません。とはいえ、相談者の方が納得する着地点は存在します。電話相談を受けるにあたっては、どこをゴールとするかを常に念頭に置いてお話を聞きます。
 「とにかく自分の話を聞いてほしかった」と言って満足して相談を終了される方もいますし、具体的な悩みごとに対して今できることをアドバイスすることがゴールになる場合もあります。
 いずれの場合でも、何が原因かを本人に自覚していただき、生活習慣などの改善できる点は変えていく努力を促したうえで、専門の医療機関への受診を勧めるようにしています。

「ストレスチェックの問診表」を提言

 心の相談室へ寄せられる声で最も多いのは「もっと話を聞いてもらいたい」「もっと説明してほしい」ということです。
 ドクターとしても、もう少し患者さんとコミュニケーションをとりたいと考えていらっしゃる方は多いと思います。しかし、大勢の患者さんに対応しなければならない状況ではなかなか難しいのが実状でしょう。そこで1つ提案があります。
 弊社では、ストレスの度合いをチェックする問診表をつくっています。これは電話相談ではなく、弊社へ直接ご相談に来られた方に自分でチェックしていただくためのものですが、定期的にやっていただくとストレスの度合いの変化がよくわかります。
 できれば、病院などでもこうした簡単な問診表を用意していただいて、診察を待つ間に患者さんが書き込むようにすると、短い診療時間で効率よく患者さんの内面を知ることができるのではないかと考えます。「夜は十分に眠れていますか?」「休みの日も仕事のことを考えていませんか?」「最近、転職や引っ越しなど、環境の変化はありましたか?」といった10項目程度の簡単な設問であれば、患者さんも気軽に書き込めますし、ドクターもさっと目を通すだけで患者さんの精神的な不安や、環境の変化などを把握できると思います。
 一般の内科でもそうしたストレスチェックをしていただくと、患者さんを専門科受診へ促すうえで重要な手がかりになるのではないでしょうか。
 問診表を用意するのが難しい場合は、診察の最後に「夜は十分に睡眠がとれていますか?」「休みの日も仕事のことを考えていませんか?」と聞いていただくだけでも、患者さんのストレスの度合いが推測できると思います。また、患者さん側も、それをきっかけに自分のストレスに気づくと同時に、ドクターとコミュニケーションをとれたことをとてもうれしく思うに違いありません。

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※当記事はジャミック・ジャーナル2009年5月号より転載されたものです
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