脂質代謝異常の相談とは? 患者の声「電話健康相談」特集

※「ジャミックジャーナル」は2011年10月号より「ドクターズキャリア マンスリー」にリニューアルされました。

医者に言えない 患者のホンネ 保険同人社・電話健康相談より

  • 第11回
  • 管理栄養士 伊藤てるよ

 2007年の春から、栄養相談に対するアセスメントの一つとして「病院で聞けなかったこと」という項目を設けました。そのなかの代表的なケースを2例紹介したいと思います。
 55歳の女性・Aさんは、脂質代謝異常で主治医から「卵や魚卵を控えるように」と言われました。すでに数年前から健診でLDLコレステロール値が高いと指摘されていたAさんは、食事にはかなり気をつけていたそうです。肉より魚を中心にして野菜を多く摂るようにし、主治医から指摘された卵や魚卵も、コレステロールを増やすと思ってここ何年も食べていないのでした。しかし、それを主治医に告げられず、他の対策を求めて弊社へお電話をくださいました。
 Aさんのように、脂質代謝異常の患者さんはたいてい主治医から卵を控えるように指導されます。そうした方に、今までどのくらい卵を食べていたのか尋ねると「週2〜3個」という回答が多く、食べるのを止めても結局LDLコレステロール値は高いままで、困惑しているケースがよくあります。
 これはつまり、脂質代謝異常の患者さんのすべてに卵が関係しているわけではないことを示しています。『動脈硬化性疾患予防ガイドライン』の脂質異常症における食事療法の基本項目を見ても、卵についての記述はいっさいありません。
 むしろ、卵は良質のたんぱく源であり、比較的日持ちがして安価であることから、年金生活をされている高齢者の重要な栄養源となっている場合もあります。卵の摂取については、食生活を詳しくうかがったうえで慎重に指導するようにしています。
 たとえば、卵より、間食を控える指導をしたほうが効果的な場合もあります。とくに、体重がそれほど多くない脂質代謝異常の方の場合、安易にケーキやアイスクリーム、クッキー、菓子パンなどを食べているケースが結構あり、その傾向は1人で食事をしている方に強くみられます。
 Aさんにもそうしたお話をしたところ、思い当たるふしがあったようで、納得されて電話相談を終了しました。

高血圧も「減塩」指導だけでは足りない

 69歳の女性・Bさんは、最近少し血圧が高め(上140、下70〜80)で、主治医から塩分を控えるように言われ、「そろそろ服薬をはじめましょうか」と勧められました。しかし、Bさんは薬を飲みたくない一心で以前から減塩を心がけていて、料理はすべて薄味。「これ以上どこに気をつけたらいいのでしょうか」というご相談でした。
 食事の内容を詳しくうかがっていくと、まず食事の全体量が多いことがわかりました。食事の量が多いと、一品一品は薄味でも、全体の塩分は多くなってしまいます。また、昼食は魚の干物が定番というお話でしたので、干物よりも、生魚に塩を振って焼いて食べたほうが塩分を抑えられるとお伝えしました。
 さらに、BさんはBMIが27と高く、主治医から体重を減らすよう、指示も出ていました。そこで「ダイエット相談(2週間で3回の栄養指導)」のプランを提案し、その後3回にわたって食事指導を行いました。具体的には、ご主人の晩酌のつまみを一緒に食べるのを止めていただき、大好きな煮豆もときどき食べる程度にし、食事の品数も見直すようお伝えしました。すると、自ら朝食を食べ過ぎたかなと思う日は昼食を減らすといった具合に、 自分の適量を調整していけるようになりました。
 その結果、Bさんは2週間で0.8?sの減量に成功。ご本人は喜んでいらっしゃいました。

患者さんにとって主治医の言葉は何より重い

弊社で相談を受けるとき、必ず「主治医の先生からどのような指示がありましたか」と確認するようにしています。そして、主治医の先生の指導内容に沿って、より具体的なアドバイスを行います。高血圧なら『高血圧治療ガイドライン』、脂質代謝異常なら『動脈硬化性疾患予防ガイドライン』をもとに、患者さんの状況を変えるための選択肢をいくつか提示するのです。
 たとえば、「血圧を抑えるにはカリウムの豊富な野菜を多めに摂ることが大切ですよ」「体重はこのくらいに保ったほうが体にいいですよ」などとお話しして、「当てはまるところはありますか?」と問いかけます。すると、相談者の方はご自身で問題点に気づき、それがやる気への動機づけになります。
 忙しいドクターが短い診療時間のなかで、個々の患者さんに応じた食事指導を行うのはなかなか難しいことだと思います。しかし、患者さんにとって主治医の言葉は非常に重みがあります。具体策でなくても、「あと3?s減量できれば数値がよくなりますよ」とか「体重が減ったら膝がラクになりますよ」といった言葉をかけてくださるだけで、患者さんは気持ちが明るくなり、前向きに生活習慣の改善に取り組んでいけると思うのです。
 可能であれば、前記のガイドラインをわかりやすく示したパンフレットなどを診察の際にご提示くださると、患者さんが思いきってドクターに質問するきっかけとなるのではないかと期待しています。

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※当記事はジャミック・ジャーナル2009年2月号より転載されたものです
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