患者さんの本当の思いとは? 患者の声「電話健康相談」特集

※「ジャミックジャーナル」は2011年10月号より「ドクターズキャリア マンスリー」にリニューアルされました。

医者に言えない 患者のホンネ 保険同人社・電話健康相談より

  • 第5回
  • 臨床心理士 奥田文

 前回は、メンタル系の診療科は、患者さんにとっていまだ敷居が高く、受診に至るまで多くの葛藤があることを、弊社「メンタルヘルスグループ」の電話相談に寄せられた声をもとに紹介しました。
 一方、受診を決意したあとも、患者さんの前にはたくさんの壁が立ちはだかっています。たとえば、勇気をふりしぼって病院に予約の電話を入れてみたものの、1ヵ月待たないと予約が取れないと言われて愕然とし、そこであきらめてしまう人もいます。また、あきらめずに、すぐに受診できる病院を探して行ってみたものの、ひどく混んでいて長時間待たされたあげく、「わずか数分の診察で、薬だけ出されて帰された」という声を聞くこともあります。
 最初の受診でそうした経験をした人は、病院に対して強い不信感を抱きがちです。一度芽生えた不信感を取り除くのは大変で、のちのちまで受診に否定的な印象を持つことになりかねません。
 メンタル系の疾患を抱える患者さんは、もともと話をするのが苦手だったり、疾患や症状のために思っていることや状況をうまく話せないことがあります。そのうえ、診察室で過度に緊張してしまうことも多く、結局思っていることの半分もドクターに伝えられない、という相談をよく受けます。言い換えると、患者さんの多くは、「お医者さんともっと話がしたい」と切望しているわけです。

不安を取り除いてくれる説明がほしい

 患者さんとドクターとのコミュニケーション不足は、相談者のさまざまな声から推測されます。薬に関するお問い合わせが多いのもその一つです。診察の際にドクターから、「これを飲めば少し落ち込みが楽になりますからね」「よく眠れるようになりますよ」と簡単な説明を受けて薬を処方されたものの、もっと詳しい情報を求めて電話をかけてこられる方が、けっこういらっしゃいます。
 先日も、男性の方から薬の副作用についてお問い合わせがありました。ここではAさんとお呼びします。Aさんは仕事が忙しくて、疲労からミスが増え、心配で夜も眠れなくなり、その結果さらにミスが増えるといった悪循環に陥っていました。そこで精神科を受診したところ、「軽いうつ」と診断されて薬を処方されました。ところが、1週間その薬を飲み続けても効果が感じられず、逆に便秘になり、口の渇きを覚えるようになったため、そのことを次の受診時に主治医に告げました。すると、「少し様子を見ましょう」のひと言で済まされてしまったといいます。
 Aさんのケースは、ドクターの説明が不足している印象がありました。メンタル系の診療科で処方される薬は、だいたい2週間から4週間のスパンで様子をみるのが通例です。ですから、1週間の服用では効き目は未知数で、「様子を見ましょう」というドクターの言葉は理解できます。しかし、Aさんにしてみると、効果が実感できない反面、不快な症状が続々と出てきたので、その不安を取り除いてくれる説明がほしかったわけです。
 電話相談では、Aさんに、薬の飲み始めに生じやすい副作用や薬の一般的な効き方を説明し、主治医に薬のことを相談するための具体的な伝え方について、話し合いました。

ドクターショッピングを繰り返す背景にあるもの

 患者さんがドクターショッピングをしてしまう背景にも、主治医にホンネを言えない状況があるように思います。
 Bさん(40歳、女性)の例を紹介しましょう。Bさんのご相談は、カウンセリング機関と病院を紹介してほしいという内容でした。ところが、お話をよく聞いてみますと、すでにカウンセリングも病院受診もされているとのこと。カウンセリングは、今まで2人のカウンセラーと話をしたものの、「カウンセラーはうなずくだけで何もアドバイスしてくれない」ということでした。
 カウンセリングは基本的に、患者さんに自由に話してもらうなかで少しずつ情報収集していきます。ですから、最初のうちは、患者さんの話を聴くことを大切にし、カウンセラーは何も言わないことも多い、というようなことを、Bさんにていねいに説明しました。そして、カウンセラーに対していろいろな印象を抱くのも治療の大事なプロセスなので、次に受診したときは「カウンセリングについて思ったことを伝えてみて、そこでじっくり話し合 ってみてはいかがでしょうか」とお伝えしました。
 Bさんは、カウンセリングの件については納得されたようでした。他方、今通院している病院は「曜日が合わない」ので、別のドクターを紹介してほしいとのこと。しかしこれまでのお話から、それ以外にも理由があることが推測されましたので、転院希望であれば、主治医に相談して、医療情報提供書を書いていただいてから、新しい病院を受診されることをお勧めしました。
 もちろん、ドクターとの相性がどうしても合わないことはあると思います。その場合、病院を変えることも一つの選択肢ですが、その前にまず思っていること、気になっていること、言いたいことをドクターに伝える努力をしましょう、と私たちは提案しています。
 治療の中心はあくまで主治医です。ですから、主治医に対して、患者さんが自分の思っていることをしっかり説明できるように支援するのが、私たちの役割と考えています。

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※当記事はジャミック・ジャーナル2008年8月号より転載されたものです
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