心療内科や精神科についての相談とは? 患者の声「電話健康相談」特集

※「ジャミックジャーナル」は2011年10月号より「ドクターズキャリア マンスリー」にリニューアルされました。

医者に言えない 患者のホンネ 保険同人社・電話健康相談より

  • 第4回
  • 臨床心理士 奥田文

 弊社の「メンタルヘルスグループ」へ寄せられる電話相談は、ここ2〜3年、毎年1.5倍の勢いで増えています。昨年度の1年間の相談件数は2万件を超えました。最も多いのは、うつ・不安などの「メンタル症状が出ている」というご相談で、その他、対人関係や家族の問題、病気への不安などが続きます。
 このようなご相談では、病院を受診する前の段階で電話をかけてこられる方も多いのですが、そのなかで、専門医の診察が必要と思われるケースについては受診をお勧めしています。じつは、この受診を決意していただくまでの過程が、「メンタルヘルスグループ」のスタッフが最も苦労するところでもあります。
 これだけマスコミなどでメンタルヘルスやストレス疾患のことが取りあげられていても、神経科や精神科は、依然として敷居が高いのが現状です。過敏性腸症候群のような身体症状が出ている方では、プライマリとして内科を受診されるケースが少なくありません。それも1つの選択肢ですし、それで症状がコントロールできていれば問題ないのですが、日常生活に支障が出るほど症状が強く現れていたり、長い間治らないという方に対しては、「専門医にかかることが大事ですよ」とアドバイスしています。
 しかし、相談者のなかには、神経科や精神科は「病気の人」が行くところであって、自分の行くところではない、と頑なに拒否する方もいらっしゃいます。自分の症状はあくまで育った環境や性格に由来するものであって、「病気ではない」というわけです。

情報に振り回されている人も多い

 さらに最近の傾向として、インターネットなどの情報に振り回されている方が多い印象があります。確かにメンタル系の疾患や症状、病院に関して正しい知識を持つことは大切なことです。とはいえ、受診の必要性を感じながらも、不確かな情報を鵜呑みにして、受診を躊躇しているケースが少なくないのが問題です。
 たとえば、私たちが受診を勧めても、「病院は薬を出すだけで、根本的な解決にはつながらない」と言い張る方がいます。インターネットでそういう情報をたくさん見た、というのです。
 薬に対する過度の不信感や不安感は、メンタル系の疾患の方によく見られる現象でもあります。薬を飲みたくない理由はさまざまで、薬物依存への不安を口にしたり、あるいは「気持ちの問題が薬で治るとは思えない」「薬を飲むことで自分に負けた気がする」と言う方もいらっしゃいます。  その一方で、カウンセリングに対しては強い期待を抱いている方が多いのも印象的です。よく耳にする相談者の声は、「問題を解決するには、原因(性格や育ち方など)を明らかにすることが大事で、そのためにはカウンセリングが必要」というもの。情報源はインターネットだったり、知人の体験談だったりします。
 確かに、カウンセリングがメンタル系疾患の治療の一端を担うことはあるでしょう。しかし、優先順位として、特に症状が強く出ている場合は、まず薬物などで症状を和らげること、そして、カウンセリングが適切な時期であるかどうかを専門医に判断してもらうことが先決です。どうしても受診に納得されない場合は、すぐに病院へ行かないとしても、いざというときの手段として「受診」という選択肢を頭の片隅に置いておくようお話しします。
 カウンセリングを受けると、「あなたはこうだからこうしなさい」と具体的な解決策を教えてもらえ、すぐに自分が変われると勘違いしている人が散見されます。しかし、カウンセラーはあくまで患者さんの併走者であって、教育者やアドバイザーではありません。カウンセリングへの誤った期待を解き、一般的な治療のプロセスを説明することも、電話相談の重要な案件です。

「自分にとっていちばんいい病院」を見つけてもらう

 もちろん、受診前の相談のなかには、病院や専門医を紹介してほしいという声もあります。「いい先生の情報が知りたい」「いい病院を教えてほしい」と誰もが口をそろえておっしゃいます。しかし、「いい先生」「いい病院」というのはかなり主観的なもので、ここがまた、私たちスタッフが頭を悩ますところです。
 病院やドクターを紹介するにしても、ていねいに話を聞いてくれる先生がいいという方もいれば、悩みの原因を簡潔に指摘してくれる先生を希望するケースもあります。あるいは、すぐに自分のほしい薬をだしてくれる先生がいいという声もあります。  電話相談では、相談者の現況を十分考慮しながら、ご希望に沿った病院をいくつか紹介し、まずはそこへ行って、長いスパンで通えるかどうかをご自身で判断していただくようにしています。
 自ら受診した感触をもとに「自分にとっていちばんいい病院、いちばんいい先生」を見つけてもらうことが最大の狙いです。
 最初に受診する病院は、患者さんにとってきわめて重要です。スタートの段階でつまずくと、それがトラウマとなって病院やドクターに不信感を抱き続けることになりかねません。そうしたケースを含めて、受診後の、メンタル系疾患の患者さんの声については、次号であらためてご紹介します。

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※当記事はジャミック・ジャーナル2008年7月号より転載されたものです
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