子どもの「発熱・高熱」の相談とは? 患者の声「電話健康相談」特集

※「ジャミックジャーナル」は2011年10月号より「ドクターズキャリア マンスリー」にリニューアルされました。

医者に言えない 患者のホンネ 保険同人社・電話健康相談より

  • 第2回
  • 保健師 鎌田博司

 保健同人社に寄せられる電話健康相談の約半分は、お子さんの症状に関するものです。なかでも「発熱・高熱」のご相談が多くて、全体のトップを占めています。そこで今回は、小児分野によく寄せられるご相談内容についてご紹介したいと思います。
 小児の場合、相談者がご本人ではなく、第三者であるというのが、他の科目と大きく異なる点です。自分の体調の変化であれば自己責任である程度対応できますが、お子さんの心身の異変に対して相談する相手もいないままに決断し、責任を負うというのは、親御さんにとって大変なストレスとなります。
 とくに家族の規模が縮小している現代では、身近に相談する人がいないうえ、お母さんがほとんど1人でお子さんの面倒をみているご家庭も少なくありません。そのため、お子さんのちょっとした変化に一喜一憂し、アドバイスを求めて電話をかけてこられる方が、たくさんいらっしゃいます。  受診前のご相談については、弊社独自のトリアージに基づいて緊急度を判定します。そして緊急度に応じて、病院のご案内やホームケアまで支援させていただきますが、緊急を要するケースはごく一部ですので、主に受診の必要性が低いお子さんの家庭看護をサポートすることが、私たちの重要な役割となっています。

ドクターの指示を「生活に生かせない」理由

 一方、受診後のご相談は、病気や治療のことより、生活の場で直面する素朴な疑問が大半です。先日も、中耳炎と診断された3歳のお子さんの洗髪の仕方について、お母さんからご相談がありました。診察の際、ドクターから「髪を洗っても大丈夫ですが、耳に水を入れないように注意してください」と指示され、そのときは納得して帰宅したそうです。ところが、いざ浴室で子どもの髪を洗おうとしたとき、「耳に水を入れないように洗うには、具体的にどうすればいいの?」と困ってしまったと言います。
 こうした生活に密着したご相談は非常に多く、ほかにも、風邪を引いているが「お風呂に入れて大丈夫か」、発熱時に「クーラーをつけて寝かせても問題ないか」といった相談もよく受けます。また、薬に関するお問い合わせも多いですね。たとえば「○○度以上の熱がでたときに使ってください」と座薬を処方されたものの、今は寝ているけれど使うべきなのかといった使用するタイミングや、座薬を入れたあとどのくらい押さえておけばよいかといった座薬の入れ方についてのご相談もしばしばです。
 さらに、小児でもう1つ多い質問が、再受診のタイミングです。
 お子さんの病気は変化が早いため、受診時にはみられなかった症状が、帰宅後に現れることも珍しくありません。そうした場合、次の受診日まで様子をみるべきか、あらためてすぐ受診したほうがいいのか、お母さんは大いに迷うわけです。
 もちろん、以上のような点については、診察時にドクターからきちんと説明を受けている場合が多いと思います。しかし、小児は急性疾患が多いため、お母さんの気持ちが動転していて、ドクターの言葉が耳に入らなかったり、記憶に残りにくかったりという場合があります。また、現場があわただしくて、ドクターの話を落ち着いて聞けなかった、という声もときどき耳にします。
 小児に関しては、口頭の説明だけでなく、帰宅して気持ちが落ち着いたときに、あらためて確認できるパンフレットなどがあると、ご家族の安心材料の一つになるのかもしれません。

お母さんがいちばん求めているのは「安心感」

 私は以前、看護師として小児救急の現場に身を置いた経験があります。当時も、救急のお問い合わせの電話を受けていましたが、保健同人社の電話健康相談とはかなり様子が違っていました。
 臨床の現場にいたときは、患者さんから何かを訴えられたときに、即時に検討に入って対応をしていました。たとえば患者さんが「子どもが熱を出して……」と言うと、次の言葉を待たずにすかさず「いつからですか?」と矢継ぎ早に質問していたのです。
 一方、保健同人社へ来てからは、傾聴スキルを駆使して、相手の話を十分に聞くことを学びました。まずは相談者の方に、今、抱えている思いをすべて吐き出していただき、そのあとでこちらが知りたいことを問いかけていくというスタイルです。臨床現場にいた頃のように、会話を始めてすぐに質問をしてしまうと、患者さんの症状を効率よく把握するうえではよいかもしれませんが、お母さんが本当に話したいと思っていることや、抱えている問題に対する不安や戸惑いを表出する機会を奪ってしまうことになりかねません。とにかく相談者の話にじっくり耳を傾ける、その重要性をここで学びました。お母さんたちがいちばん求めているのは「安心感」だと気づいたのです。
 とくに夜は、お母さんたちの不安が高まりやすいため、ご相談を終えて電話を切る際には「今晩一晩は私どもが支えますので、何かあればいつでもお電話くださいね」とお伝えします。そのひとことだけでも、お母さんの気持ちはだいぶ落ち着くようです。
 電話健康相談によって、1人でも多くのお母さんの不安をやわらげることができれば、今問題になっている夜間の小児救急の混雑解消にも役立つのではないかと考えています。

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※当記事はジャミック・ジャーナル2008年5月号より転載されたものです
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