神戸市/神戸医療産業都市

神戸から世界へ。最先端医療を発信する日本最大級の
バイオメディカルクラスター「神戸医療産業都市」の誕生

1995年の阪神・淡路大震災からの創造的復興として計画された神戸医療産業都市では先端医療技術の研究開発拠点を整備し、産・学・官の連携により、医療関連産業を集積。
地域に高度な医療をもたらすと共に、新たな医療の可能性を世界へ向けて発信している。

今西 正男
神戸市 理事/医療・新産業本部長

今西 正男氏

「命と医療の大切さ」を知る神戸で
産まれた神戸医療産業都市構想

2014年の世界初となる滲出型加齢黄斑変性の自家iPS細胞由来網膜色素上皮細胞移植手術、2017年のiPS細胞他家移植手術。日本の医療界から、新時代の幕開けを告げる希望に満ちたニュースが次々に発信されている。これらの最先端医療の舞台となっているのが、神戸市が開発を進める日本最大級のバイオメディカルクラスター“神戸医療産業都市”だ。神戸市の理事であり医療・新産業本部長である今西氏に、その誕生の経緯と現状・今後の展望について伺った。

「神戸市は阪神・淡路大震災で多大な被害を受けました。その創造的復興において産まれたのが、神戸医療産業都市構想です。目的は、新たな産業を興し神戸市の経済活性化を図ること。そして震災で命と医療の大切さを知った神戸市だからこそ、市民の命を守り福祉を向上すること、震災時に支援を受けた海外の国々への恩返しをすることを考えたのです」

震災後の1998年、神戸市立中央市民病院長であった井村裕夫氏(現・先端医療振興財団名誉理事長)を座長とし、京都大学、大阪大学、神戸大学の医学部長や国立循環器病センター(現・国立循環器病研究センター)総長、神戸市医師会、兵庫県が参画した神戸医療産業都市構想懇談会を設置。神戸医療産業都市構想の基本的な枠組みを検討するための会合を重ねた。そして、「人の命を救うために、優秀な日本の基礎研究を産業界と結びつけ、一環して実用化を促進する」ことへ向けて、大きく動き出したのだ。

そして、小渕内閣時のミレニアム・プロジェクトによる支援を受け、同地に理化学研究所多細胞システム形成研究センター、先端医療センターが設置された。これをきっかけに優秀な研究者が当地に集まり、この構想が加速した。

良好な立地のポートアイランドに
3つのクラスターを展開

神戸医療産業都市が位置するのは、神戸港に浮かぶ人工島・ポートアイランド南部のエリアだ。神戸の中心地である三宮と神戸新交通で直結し、神戸空港や関西国際空港にも近く、海外からのアクセスも良好。200の広大な敷地は神戸市の所有で、自由な発想での展開が可能となっている。今、都市部でこれだけの新たな街をつくることは難しいだろう。

神戸医療産業都市は、機能毎に3つのクラスターに分かれる。1つ目は病院機能を集積した“メディカル・クラスター”。2つ目は理化学研究所を始め再生医療を中心とする研究開発を行う“バイオ・クラスター”。3つ目はデータヘルス時代に対応し、抗がん剤などのゲノム解析にも必須となるスーパーコンピュータ「京」や産業界専用スパコンなどがあり、計算科学分野の研究機関や企業等が集まる“シミュレーション・クラスター”だ。このエリアには医療機器、医薬品、再生医療などに関連する344社(2017年11月末時点)が進出。10年後には500社の進出が見込まれている。

これら3つのクラスターは互いに結びつくことで大きな効果が期待できる。神戸市では、オプジーボ開発のきっかけとなるPD 1の発見者である京都大学の本庶佑氏を理事長に迎えた先端医療振興財団を中心に、企業向けの勉強会やマッチングなども開催。より大きな相乗効果が得られるよう、後押ししている。

市民病院と高度専門病院の連携で
市民に高度な医療を提供する

「国内の同様の構想では、病院機能が弱いケースが多いのです。しかし、市民の命を守ることを目指す当構想では、医療面に重点を置いています。神戸市立医療センター中央市民病院を中心に、周辺病院と協力・連携し、市民に高度な医療を提供しています」と今西氏。

その言葉通り、“メディカル・クラスター”には高度専門病院が集積、2017年12月には神戸アイセンター病院と神戸陽子線センターが開院した。現在では8つの病院がエリア内に建ち並び、病床数は総計約1500にも及ぶ。

これまでは三次救急と臨床に重点を置いていた神戸市立医療センター中央市民病院は、2017年11月1日に先端医療センター病院との統合により、研究開発から最先端の臨床応用までを担う中核病院という位置づけになる。研究指向の医師の採用も進める予定だ。これによって優秀な臨床医と企業の連携がスムーズとなり、よりスピーディに新時代の医療に資する製品を生み出すことも可能となる。

世界中の病に悩む人々に貢献する
神戸ブランドの技術や機器が誕生

現在、神戸医療産業都市では冒頭であげた事例以外にも、多くの研究が進み、実用化を目前とするものも少なくない。例えば、再生医療の分野では、体性幹細胞を用いた角膜、膝軟骨、下肢血管、骨、鼓膜、声帯等の分野で研究開発が進み、既に企業治験が始まっている。

医療機器の分野では、新たな手術支援ロボットを開発中だ。既存の海外製ロボットの部品の約7割は実は日本製、しかも、多くは神戸近郊の企業が製作している。そこで、純国産ロボットの製造を目指しているのだ。既存品に比べ低コストで、侵襲が小さく、触感を再現できるロボットの実用化が間近となっている。

再生医療のライフサイエンスへの技術転用も盛んで、認知症や老化の研究も進められている。身体に対する悩みを持った人々の、QOLの向上に役立つ成果が期待される。

最後に今西氏は、神戸医療産業都市の今後の展望を次のように語った。

「臨床・研究開発などの分野で、より多くの優秀な人材に集まっていただき、当構想を更に発展させていきたいと考えています。そうして、様々な疾患や身体の悩みなどを抱えている世界中の人々の治療に、神戸ブランドの技術や機器で貢献できる日が来ることを願っています。それは、そう遠いことではありません」

DATA

神戸市立医療センター中央市民病院

【神戸市立医療センター中央市民病院】

基幹病院として、救急医療・高度医療・急性期医療を重点に担い、神戸市民の生命と健康を守る拠点病院。(768床)

神戸市立医療センター中央市民病院・南館

【神戸市立医療センター中央市民病院・南館】

2017年11月先端医療センター病院が中央市民病院に統合。

神戸市立神戸アイセンター病院

【神戸市立神戸アイセンター病院】

標準医療から最新の医学研究成果や医療技術を取り入れた最先端の医療まで世界に先駆けて提供する、眼科の基幹病院。(30床)

神戸低侵襲がん医療センター

【神戸低侵襲がん医療センター】

放射線治療装置による低侵襲がん治療および抗がん剤による化学療法治療の併用を基本的機能とし、切らずに治すがん医療を提供する病院。(80床)

神戸大学医学部附属国際がん医療・研究センター

【神戸大学医学部附属国際がん医療・研究センター】

がんに対する先進的外科的治療の推進、次世代医療、新規医療機器の研究・開発、国際的な医療研究ならびに教育の拠点。(120床)

兵庫県立粒子線医療センター附属神戸陽子線センター

【兵庫県立粒子線医療センター附属神戸陽子線センター】

兵庫県立こども病院と一体となって、小児がん患者等に対してリスクが少なく治療効果の高い陽子線治療を提供する施設。

西記念 ポートアイランド リハビリテーション病院

【西記念 ポートアイランド リハビリテーション病院】

急性期医療を提供する医療機関と連携し、急性期を脱した早期回復期リハビリテーションを提供する病院。(150床)

チャイルド・ケモ・ハウス

【チャイルド・ケモ・ハウス】

小児がんなどの小児難病の子どもと家族が一緒に暮らしながら家のような環境で療養できる日本で初めての施設。(19床)

兵庫県立こども病院

【兵庫県立こども病院】

小児医療、周産期医療の全県拠点病院。厚生労働省指定の「小児がん拠点病院」。(290床)

TEL:
078-322-6373
HP:
http://www.kobe-bic.org/